女っぷり上々。ご機嫌に転がります③【小説・じゃない側の女ーエピローグー】

2017年8月26日
結婚していない女、選ばれない女、子供を産んでいない女、育てていない女、もらえない女…。好む好まざるにかかわらず、「じゃない側」からそう簡単に抜け出せない。全4章を締めくくる最終回をお届け。
長い時間をかけて、散々転がって捻挫して骨折して、たまに失神して、そしてその大けがから回復するたびに、薄皮をはがすように少しずつ少しずつ私たちは、しなやかさとも呼べるたくましさを身に着けてきた…ように思う。

もちろん幾つになっても転べば痛いし激突すればこぶも出来る。さすがにどれだけ歳をとっても、痛みを感じなくなる日は来ないだろう。

ただ、どれほど時間がかかっても必ず立ち上がれること、そしてなんとか立ち上がれた時にはそれまでの自分では気づかなかった自分が見えてくる楽しみすらあることをも知った今は、もう転ぶことを過度に恐れる必要はない。

だとしたら、ここからは。

好んで転ぶこともないけれど、転んじゃう時はもうご機嫌に心地よく転がって、いけるだけいきたい。

どうあるべきかを頭で考えて、悲壮感漂う転がり方じゃなく、心のままに直感で行き当たりばったりを楽しみながら、せっかくなら嘘のない笑顔でうひゃひゃと笑いながら転がりまわりたい。

不安やプレッシャーなどヒリヒリする現実の中をこそ、感じるまま、思うままに、気持ちいいと思うことを、自分が心地よくなることを、素直に選んで動いてみたい。

限りある時間を生きる、たった一度の人生。

40年もの間、泣いて怒って傷ついて笑って立ち上がってきた今だからこそ、“不惑”の今だからこそ、人生を賭けて本当に欲しいと思うもの、やりたいと思うことを惑わずに求めてみたい。

べき、で生きるのをやめて
したい、で生きてみたい。

べき、で歯を食いしばるのをやめて、
したい、に夢中で没頭したい。

そんなこというと「何を甘いこといってるんだか」と、眉間にしわ寄せて即つっこみをいれそうな地に足ついた私が、私の中には確実にいる。

でもそんな私がいる今だからこそ、ここから先は「それでいいのだ、これでいいのだ」と、その時々の自分も丸ごと肯定し、いつだって楽しく笑ってご機嫌に転がりまわれる私でもありたいと思う。

そしていつかまた、新しい季節を誰かと二人で歩ける時が来たら、その時は一人とひとりが寄り添いあって、一層ご機嫌に二人並んで歩けるように。そんな私になっていたい。
 
「じゃない側の女」である私史上、きっと今が最高の“女っぷり”。そしてこれからもっともっとあげていく。

女っぷり上々。大丈夫。

だってそう決めるのもまた、誰でもない。

私なのだから。

(小説・じゃない側の女 完)
  • 植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

    ■Side1結婚してない側の女(全14回)を読む >
  • 谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。

    ■Side2産んでない側の女(全15回)を読む >

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