究極の選択のような放射線治療の病院選びで迷いに迷って決めたのは設備が最新の病院。結局の決め手は通院の利便性だったのだが。乳がん・ニューライフ (第20回はこちらから)
第21回は放射線治療の話。治療自体は数分で終わるのだが、毎日通うのは想像以上に大変であった。
貧乏イケメンと金持ちフツメンどちらが良いか、のような二択を迫られ放射線治療をする病院を決めた。
結局は毎日通うのに不慣れな車の運転を考慮したのが一番の決め手となり、担当医師曰く設備は最新だが先生は老人というA病院に決めた。
「顔合わせ」という初回の診察で通院は何が何でも月またぎにならないようにと高額医療費を意識して我ながら工夫をして日程を決めたのに混雑を理由に結果として月またぎの通院が確定した。
放射線治療は病院の設備や患者の程度によるのだろうが、基本コースは25回と聞いていた。平日25日、同じ時間に通うのだと。
ということは、約1か月と少し、毎日同じ時間に通院となり体への負担も気持ちの負担もとても大きな治療となる。
A病院は設備が最新とは聞いていたのだが、そのおかげなのか私の放射線治療は15回通院となった。15回で一般的な25回分相当との説明を受けた。
放射線担当医師(見た目は同世代)から、患者の体の負担軽減で15回の治療をしたいと思うが保険によっては回数で支払い基準が決まっているところもあるので、15回とするか、25回とするか保険会社の契約内容を確認してみて決めても良いと言う。
へ~!保険というのはそういうことまで書いているのか。しかし、25回行かないと保険金が出ないので15回で済むところ25回にしますというのはナンセンスではないか?と思い直し、15回でお願いした。
最近は保険も回数ではなく放射線の量で決めているところが多いようだが、こういうことも誰も教えてくれないので、手探り状態は続く。(ケビ子の保険は照射量で給付が決まるものであり、給付金支給となった。ホッ)
しかし、25回から15回と想定よりもかなり短く済むのは大変な朗報で、治療予定表をもらってみても気が軽い。だからこそなぜ月またぎなのか、という残念さは強まるのだが。
他の病院は知らないのだが、治療室は映画「スタートレック」やディズニーランドの「スターツアーズ」を思い出させる世界観の廊下を通って入る。
「未来に来たみたい」と技師に伝えたら笑っていた。
一回の放射線治療は治療室に入ってから出るまでで5分かかるかどうかという短時間のものであるが、15回とは言え毎日決まった時間に通うのはやはり大変であった。
慣れない運転に加え、朝一番8時半からの治療をお願いしてしまい、早起きと緊張と運転の恐怖でとにかく毎日疲れていた。今思えば仕事を休めば良いものの、なんとなく外見に現れない治療というのは休みを申し出にくいことから、無理を重ねてしまっていた。
放射線治療は名前のイメージからとても怖い気持ちで臨んだが、担当医師や放射線担当医師、技師の方々がとても親切で緊張もほぐれていき、また慣れていくに比例して放射線を当てた左胸は黒く焼けていった。治療室のBGMがカーペンターズの「Only Yesterday」なのもいけている。
放射線治療を始める前の「顔合わせ」の際、高額医療申請を事前にしてきてくださいと言われたのですぐに申請をして、ものの数日で認定証を送ってもらい治療に間に合った。
おかげで、清算は限度額のみの支払いとなったものの支払い金額はやはり高額であった。車で通院していたため、ガソリン代など高額医療費の対象とならないものは医療費控除の対象になるようなのでレシートは保管していた。
緊張をほぐすために食べたシュークリームは控除の対象になるのか、わからないまま今に至る。
毎日同じ時間の通院となると顔見知りができる。言葉は交わさずとも明らかに仲間である。おしゃべりはコロナ禍でできないが、できるだけ優しいまなざしを意識して会釈をする。ともに頑張ろうね!のエールとともに。
放射線治療中はシャワーだけと言われた。放射線を照射する胸は手でなでる程度に洗うことと言われた。秋口となっており、体を温めたい思いもあって湯舟に入れないというのは残念。
台風など災害時のインタビューなどでも「お風呂に入れないのがつらい」「お風呂に入りたい」といったコメントが多いのが日本人だなあと思って観ている一方で海外でハリケーンにより家が飛ばされた人のインタビューで「お風呂に入りたい」と回答しているのを見たことはない。やはりついお風呂を気にするというのは日本人のDNAなのだろうか。
そうこうして15回の通院が終わる。
15回と短くても最終日は通いきった達成感があった。いつもどおり5分程度の照射が終わり着替えてお礼を言って出ようとしたら技師から「卒業のセレモニーがあります」と言われた。病院で「セレモニー」と言われると何やら怖いのだが。
治療室から控室に向かって宇宙ムード漂う廊下を歩いていくと、入口に先生と看護師、技師の皆様が勢ぞろいで拍手で迎えてくれた。
廊下のはじに設置してあった金の鐘を鳴らしてピンクのゴールテープを切った。
担当医師から「よくがんばりました」とねぎらっていただき、自分でもびっくりするくらいの涙が出た。
やり終えたのだ。
つづく
※次回【Vol.22】は10/28公開予定です。
治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありません
43歳で結婚、47歳で乳がん。
心配性の夫、奴さん(やっこさん)はなぜか嬉しそうに妻の世話を焼いている。Instagram(@kbandkbandkb)ピンクリボンアドバイザー(初級)資格保有