坪田あさみ エディター・ライター
「推し」のスタイリストを見つけて
効率よくおしゃれ力を上げる
みなさんこんにちは、エディター坪田です。私の著書「大人のおしゃれはこなれがすべて」(PARCO出版)から3つのテーマを深掘りするスペシャル短期連載。最終回となる第3回では、SNS時代ならではのファッション誌の活用法についてご紹介します。
▲vol.03ではメソッド19にあたる「ファッション誌はぼんやり眺めず、使い倒す」という内容について深掘りします。
インスタやyoutubeなどSNSが全盛の今、着こなしの参考にする媒体はさま変わりしています。無料で見られるSNSをお手本にしてお買い物をする人も多いのではないでしょうか?
私は根っからの雑誌好きですし、ファッション誌で仕事をずっとしているので、雑誌愛は人よりも強いですが、それでも昨今の雑誌を買わない方たちの気持ちももちろん理解できます。私もSNSは日々利用しています。
私にとって雑誌は情報を得るためだけでなく、美しい写真を眺めたり、レイアウトやアートワークを見る楽しみもあるのですが、ここではファッション誌における「スタイリング力」や「効率よくお買い物をする」ことに関してのみフォーカスして取り上げたいと思います。
おしゃれ力を上げる、無駄なくお買い物する、という意味ではSNSよりも雑誌の方が優れているのではないかと私は常々思っています。ただそれは「ぼんやりと眺める」のではなく、意識して「雑誌を活用する」必要があります。
「スタッフクレジット」をチェックして
「推し」のスタイリストを見つける
雑誌を「パラパラと眺める」のではなく「意識的に活用する」とはどう違うのか? ポイントは「推しのスタイリストを見つける」ことにあります。
雑誌の企画の中には「スタッフクレジット」が印刷されているのですが、一般の読者にとっては特に意識したことのない部分かもしれません。素敵なモデルさんがいたら「なんという名前の人だろう?」と見ることはあるかもしれせんが、大抵はスルーしていると思います。
スタッフクレジットの中でも私が注目してほしいと思うのは「スタイリストの名前」です。
▲スタッフクレジットはたいてい企画の最初の見開きにあります。出版社によっては企画の最終ページにある場合もあります。(2023年1月号エクラより)
雑誌をパラパラと眺めていて「素敵だなー」と感じるコーディネートや好みのスタイリングを発見したら、誰が組んだのか「スタイリストの名前」をぜひチェックしてみてください。いくつかチェックした結果、もし同じスタイリストだった場合、その人はあなたの「推しスタイリスト」。ぜひこの「推し」を見つけ出してください。
▲「推し」スタイリストがわかったら、誌面の中でその方のスタイリングを追いかけて雑誌を見るように意識してみましょう。(2023年1月号エクラより)
次にその推しスタイリストが組んでいるコーディネートや、おすすめしているアイテムをチェックしてお買い物計画を立てたり、スタイリングを真似て毎日のコーディネートを組むようにします。これは手っ取り早くおしゃれ偏差値を上げる簡単な方法です。
雑誌の中にはたくさんのスタイリストが活躍していて、当たり前ですがどの方もとてもおしゃれなのですが、それぞれに得意なジャンルやテイストを持っています。どのスタイリストが組んだかわからないものを漠然と見るよりも、テイストや好きなものの方向性が似ている人を意識して追いかける方がぐっと効率がよくなります。
一部のおしゃれ上級者は
スタイリストの名前やテイストに詳しい
このことは雑誌の取材などでおしゃれ読者と呼ばれる方々を取材している時に気づきました。彼女たちは自分の「推しのスタイリスト」をはっきりと意識していたからです。「私は◯◯さんのスタイリングが好きでいつも参考にしている」「20代の頃からずっと◯◯さんの仕事を追いかけている」というのです。確かにそのスタイリストが提案している女性像に近い雰囲気が漂っていて、なるほどと思った記憶があります。その方も最初は単なる真似から始まったかもしれないけれど、いつの間にか自分らしい雰囲気になり、独自のスタイルに昇華されていました。
大人のおしゃれを更新するには、
改めて素直に真似てみることも大事
▲書籍の撮影風景。毎月の雑誌の企画でも、たくさんのプロフェッョナルが集結して誌面を作っています。
若い頃はファッション誌を穴があくほどしっかり読みこんでいて、雑誌のスタイリングを真似て服を購入していた人も、大人世代になると日々の仕事や家事で忙しかったり、ファッションに対する優先順位が低くなって、雑誌はパラパラと眺める程度に変わってしまった人も多いと思います。だからこそ、「効率よく」お買い物をしたり、おしゃれ力を上げるためにも推しのスタイリストを見つけて、雑誌の中で提案しているコーディネートを真似て取り入れるのは、面倒なことのようで実は効率のよい方法だと思うのです。
特に「好きな服が似合わなくなってきた」というおしゃれ迷子の大人こそ、推しのスタイリストを見つけて欲しいと思います。大人世代のスタイリストが、同じく大人世代の読者のために組んでいるスタイリングを真似ることが、おしゃれ力を短時間で引き上げる近道だと思うからです(おしゃれの知識や情報が若い頃で止まっている人は意外と多いのです)。
また、ファッション誌は単に服や小物を掲載するカタログとしての役割ではなく、なりたいと思う理想の女性像も提案しています。つまり「何を買おうかなー」とカタログ的に眺めるだけではなく、「どういう女性になりたいか」という女性像そのものを身につける媒体でもあるということ。さらにその中に推しのスタイリストがいれば、目指すべきおしゃれの方向性がはっきりし、無駄な買い物が減り、洗練度がアップしていくというわけなのです。
インスタなどSNSでそれができるかどうかというと、できないことはないと思いますが、スタイリストがインスタなどで投稿している着こなしは、基本的に自分が着用するためのものなので、本人が似合うものを選ぶのは当然で、チョイスに偏りが出るのも事実です。また雑誌の掲載品とは違い、すぐに真似て購入できるものばかりというわけではありません。
本の中にも書いているのですが、スタイリストが雑誌の中で表現しているスタイリングは、幅広いブランドやメーカーの中から独自の目線や今の時代性・トレンド・世代に合ったものをセレクトし、多くの人に似合うスタイリングとして組んでいます。当たり前ですが本人に似合うかどうかではなく、ニュートラルな視点で、それでいて本人のテイストも盛り込んだスタイリングなのです。
ちなみにもしあなたがもっとメイクのテクニックを上げたい、ビューティについてなんとかしたいと思っているなら、今度はスタッフクレジットの「ヘアメイク」の名前をチェックしてみてください。そして同じように「推し」を見つけください。ヘアメイクも人によってテイストが全然違います。推しのヘアメイクを追いかけて雑誌をチェックすることで、今後のメイクの方向性やなりたい女性像が少しずつ見えてくるかもしれません。それが「意識的に雑誌を活用する」ことに繋がるのです。
いかがでしたでしょうか? 短い間でしたが全3回のスペシャル短期連載は今回で終了です。一部の抜粋ではありましたが、少しでもエッセンスが伝わっていれば幸いです。もっと詳しく内容を知りたいという方は、ぜひ書籍「大人のおしゃれはこなれがすべて」(PARCO出版)を手に取っていただき、読んでいただければと思います。
今年もマリソルweb連載にお付き合いいただき本当にありがとうございました。また2023年も引き続きよろしくお願いいたします!
▼「大人のおしゃれはこなれがすべて」特別編
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ファッションセンスを「感覚」だけでとらえず、頭で理解する【「大人のおしゃれはこなれがすべて」特別編 vol.01】
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エディター坪田の著書『大人のおしゃれはこなれがすべて』(PARCO出版)では、ファッション以上に若い頃との違いに愕然とするアラフォー世代に向けて、ビューティに関する独自のメソッドを深掘りします。