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「着る人本来の美しさがきわ立つ服作りを続けたい」 ロエフ 前編【私のおしゃれフィロソフィVol.10】

多くの人たちに支持されるブランドには理由がある。それはデザインだけにとどまらず、作り手の思いがしっかりと息づいているかどうか。ブランドを牽引するデザイナーやディレクターにその思いをインタビュー。今回は「ロエフ」のデザイナー鈴木里香さんに話を伺った。
ロエフのデザイナー、鈴木里香さん
マリソル世代に絶大なる人気を誇るセレクトショップ、ユナイテッドアローズで、選び抜かれたセレクトと肩を並べるオリジナルブランドのデザイナーを歴任してきた鈴木里香さん。“大人の女性が着たいと思える服を、今まで関わってきた工場と作りたい”と会社に起案し、2019年に「ロエフ」が誕生した。鈴木さんの物静かな佇まいをいい意味で裏切る、熱い思いを取材した。
______ブランドを作りたいと会社に掛け合ったきっかけは?
ビューティ&ユース ユナイテッドアローズのデザイナーを務めると同時に、スティーブン・アランやエイチ ビューティ&ユースの立ち上げにも関わり、3つのブランドを並行して10年が経った頃。40歳になり自分の仕事をこれからどう詰めて行こうかと考え始めた時に、私自身が着たいと思える服がないことに気づかされました。当時はフェミニンな服が主流で、そうでないものはデザイン色が強かったり、甘さのある服が多くて。その頃は「美魔女」と呼ばれる人たちに注目が集まっていましたが、大人には大人にしか醸し出せないカッコよさがあるのでは…と思ったこともきっかけでした。また長い間、日本の工場の後継問題にも直面していたので、今までおつきあいのあった工場とこれからも一緒に物つくりをして行きたい気持ちも一緒に伝えました。
______そして誕生した「ロエフ」。ブランドに込めたものは?
「ロエフ」というブランド名はラテン語の造語で、“老いても美しく”という意味が込められています。コンセプトは、“年齢を重ねても大切にしたい日常着”。マスキュリンな着こなしの中に感じられる女性らしさを大切にしています。そして着る人本来の美しさが出る服作りが目標。実は私自身、仕事の日は動きやすさを最優先するため毎日おしゃれができないタイプ(笑)。デザイナーとしてどうなのかなと思っていましたが、同じ悩みを持つ人が大勢いることを知って、着るだけでさまになるコーディネート要らずの服というものを心がけるようにしています。
______メンズやワークウェアへの造詣が深いことも服作りに影響している?
もともとメンズの服が好きでよく着ていましたし、デザイナーとしてスタートした会社ではメンズの企画を手がけていました。実家が鉄工所だったため作業着が身近な存在だったことも大きいですね。職人さんってカッコいいな、作業着は人の動きに適したデザインなんだな、と子どもの頃から時間があれば働く職人さんの姿を眺めていました。「ロエフ」にはメンズや作業着からヒントをもらったアイテムをモディファイした服がありますが、見た目はきちんとしていながら着心地はラクでありたいというところにこだわっています。
______おしゃれプロにもファンの多い“ボンタンパンツ”。誕生の経緯は?
純粋にパンツが好きで、学生時代の制服以外はずっとパンツで生きてきました(笑)。いろいろなパンツを穿いてきて思うのは、パンツは他のアイテムと比較しても特にパターンの精度が求められるということ。カッコよく見えるパンツを…と試行錯誤する中でみつけたのがボンタンパンツでした。このパンツの由来には諸説あるようですが、もともとは応援団の人たちの激しい動きに合わせて、通常の制服のパンツでは足りない部分を出していったそう。作業着やスポーツウェアと同様、もっとこうだったらいいのに、という声からできたものは長く残ると感じています。ブランドデビュー当時から作り続けている、今後も大事にしたいアイテムのひとつです。
(後編へ続く)

▼後編では、鈴木さんの「推しアイテム」も紹介!

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