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中村綾子先生
40代に多い婦人科系の腹痛、原因となりやすい病気はこの4つ
腹痛の原因になる病気で、特にアラフォー女性に多いものにはどんなものがあるのでしょうか?
「アラフォー女性に特に多い婦人科系の病気は、子宮筋腫や子宮内膜症です。これらの病気は下腹部に痛みが起こることが多いのですが、加えて生理痛や過多月経など、生理にまつわる不調も起きることも多いのが特徴です。それ以外では、下腹部に急激な痛みが起きる場合は卵巣茎捻転などの病気の可能性があります。また、子宮頸がんは、初期には特に症状がないことが多いですが、進行すると下腹部に痛みが出ることがあります。初期の段階なら治療がしやすいですが、進行すると命に関わる病気。早期発見・早期治療が肝心なので、30歳を過ぎたら定期的に婦人科検診を受けることが大切です」(中村先生)
以下から、アラフォーに多い婦人科系の4つの病気についてさらに詳しく解説。
40代に多い婦人科系の「腹痛原因」はこの4つ
◆ 子宮筋腫
どんな病気?
「下腹部に痛みがある場合、原因のひとつとして考えられるのが子宮筋腫です。子宮筋腫は、子宮の壁にできる良性の腫瘍。20代頃から増え始め、30歳以上の女性の20〜30%にみられます。 子宮の内側にできる粘膜下筋腫、子宮の筋肉の中にできる筋層内筋腫、子宮の外側にできる漿膜下筋腫に分けられ、大きさや数はさまざまで、複数できることもあります。原因ははっきりとはわかっていませんが、女性ホルモンのエストロゲンによって成長することがわかっていて、エストロゲンが減る更年期以降になると自然に小さくなります」(中村先生) |
腹痛以外の症状は?
「子宮筋腫は特に症状がない場合もありますが、生理痛がひどくなったり、生理の経血量が増える過多月経になり、それによって貧血になることもあります。また、生理中以外にもお腹が張ったり、鈍痛があることもあります。特に子宮の内側にできる粘膜下筋腫の場合は、小さくても症状が強く、過多月経になりやすいです」(中村先生)
治療法は?
「小さくて、無症状の場合は特に治療はせず、経過観察をします。激しい生理痛や過多月経があったり、サイズが大きくなったりなど何らかの理由で生活に支障が出る場合は、低用量ピルや、女性ホルモンの分泌を抑えて生理を止める治療(偽閉経療法)などで筋腫が大きくなるのを抑えます。また、場合によっては手術で筋腫や子宮を取り除くこともあります」(中村先生)
ちなみに子宮筋腫は予防することはできるのでしょうか?
「残念ながら筋腫ができるのを防ぐ方法はありません。腹痛を少しでも緩和する方法としては、腹痛は冷えると悪化しやすいので冷やさないように気を付けることです。また、30代からはかかりつけの婦人科をもって、定期的に婦人科検診を受けるようにし、早期発見をして早めに治療をすることがおすすめです」(中村先生)
◆ 子宮内膜症
どんな病気?
「子宮内膜に似た組織が何らかの原因で子宮の内側以外の場所で発生して発育する病気が子宮内膜症です。 子宮内膜は経血として腟から体外に排出されますが、子宮以外の場所で増殖した子宮内膜組織は腹腔内にとどまり、炎症や痛み、癒着の原因になったり、不妊症の原因にもなります。子宮内膜症ができやすい場所は、卵巣、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)、仙骨子宮靭帯(子宮を後ろから支える靭帯)、卵管や膀胱子宮窩(子宮と膀胱の間のくぼみ)などです。また、稀に肺や腸にもできることもあります。20~30代で発症することが多く、アラフォーにもよく見られます。原因はわかっていませんが、エストロゲンの影響が関係していると言われています」(中村先生) |
腹痛以外の症状は?
「生理中に下腹部の痛みが強くなるほか、進行すると周囲の組織と癒着を引き起こし、生理痛がさらにひどくなったり、慢性的な腰痛や下腹部痛、排便時や性交時の痛みなどが現れるようになります」(中村先生)
治療法は?
「子宮内膜症の治療は、低用量ピルや黄体ホルモンの服用で子宮内膜の増殖を抑えるのが一般的です。悪性が疑われる場合や、病変部が大きい場合、不妊症の原因になりうる場合などは、病変部を切除する手術を行います。また、将来的な妊娠の希望がない場合は、病変部だけでなく子宮・卵巣・卵管なども摘出することがあります」(中村先生)
子宮内膜症も子宮筋腫と同じく、残念ながら自分で防ぐ方法はないそう。
「子宮筋腫と同じように、生理痛がひどい場合は、お腹周りが冷えると痛みがひどくなりやすいので、冷やさないように気を付けることは大事です」(中村先生)
◆ 卵巣茎捻転
どんな病気?
「卵巣嚢腫があると、卵巣と子宮のつながっている部分がねじれることがあり、これが卵巣茎捻転(卵巣嚢腫茎捻転)です。卵巣嚢腫が5~6cm近くになると茎捻転を起こす危険性があるとされていますが、これ以下の大きさでもねじれることがあります。おもな症状は、突然の激しい痛みです。10〜20代の若い年代に多いのですが、40代でも起きる場合があります」(中村先生) |
腹痛以外の症状は?
「痛みの度合いによっては、吐き気や嘔吐などが生じたり、ショック状態になることも。またねじれて血流が途絶えると、卵巣が壊死し、卵巣の機能を失う恐れもあります。発症から時間が経つと壊死するため、卵巣茎捻転が疑われる際は早急に医療機関へ」(中村先生)
治療法は?
「卵巣茎捻転になったら、手術で原因となった卵巣嚢腫を卵巣から取り除いてねじれを戻します。壊死していた場合は卵巣を摘出します。早期に手術を行えば、卵巣機能は手術前と同じ状態に戻ります」(中村先生)
◆ 子宮頸がん
どんな病気?
「子宮頸がんは、子宮の入り口の子宮頸部と呼ばれる部分にできるがん。性交渉によってヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスに感染することが原因であることがわかっています。最近は20~30歳代の若い女性に増えていて、30歳代後半がピークとなっています。HPVは性交渉経験のある女性の過半数は一生に一度は感染すると言われていますが、感染しても多くの場合は免疫力で自然に排除されます。ところが感染が長期間続くと、異形成と呼ぶ前がん病変を経て、数年以上かけて子宮頸がんに進行していきます」(中村先生) |
腹痛以外の症状は?
「子宮頸がんは、早期には自覚症状がないことがほとんどですが、進行するに従って、異常なおりもの、不正出血、性交渉の際の出血に伴う下腹部痛などの症状が出ることがあります。これらの症状があったら早めに婦人科を受診しましょう」(中村先生)
治療法は?
「子宮頸がんの治療方法は、手術療法、放射線療法、化学療法(抗がん剤)の3つを単独で、またはいくつかを組み合わせて行います。病気の進行期(ステージ)と、その方の年齢、治療後の妊娠希望の有無、基礎疾患の有無などにより、最適な治療法を選んで行います。初期の前がん病変の段階で、妊娠・出産の希望がある場合には、子宮の入り口付近のみを部分的に切除する子宮頸部円錐切除術を行います。また、異形成の場合はレーザーで病変部を焼くだけの治療も可能です。一方、子宮を残す希望がない患者さんには、子宮全摘術を行います。いずれにしろ、早期に治療すれば90%以上、命が助かりますが、進行すると命を失うこともあるので、定期的に子宮頸がん検診を受けることが重要です」(中村先生)
子宮頸がんにはワクチンもあるけれど、アラフォーで接種をしても意味はある?
「日本では子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)は広まっていないので、先進国の中でも日本は子宮頸がんの発症率が上位です。HPVワクチンは、性交渉開始前の若いうちに接種するのが望ましいですが、アラフォーでもHPVの中で子宮頸がんを起こしやすい種類にまだ感染していない場合もあるので、性交渉の機会が多い人、セックスパートナーが多い人などは接種することに意味はあり、予防ができます。かかりつけの婦人科医に相談してみましょう」(中村先生)
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