\今回のテーマは更年期からの性生活の変化について!/
|PROFILE|
医療法人 心鹿会 理事長 二宮 典子 医師
女性泌尿器科医。漢方医。2015年から女性医療に特化したクリニックの院長として泌尿器科・婦人科・性機能に関する専門的診療に従事。医療者向けの講演会や一般向けのYouTubeなど幅広い活動を行う。2021年にNINOMIYA LADIES CLINICを開院し院長に、2023年には医療法人 心鹿会の理事長に就任。自院では、医療者にしかできない誠実で安全な美容を提供するべく、アートメイクや女性器治療にも注力する。また、5万人以上の登録者数を持つ下ネタ医療系 YouTuberとしての顔も持ち、若い世代からシニアまで幅広い層のファンを持つ。
NINOMIYA LADIES CLINIC:https://ninomiya-lc.jp/
YouTube:ココシカ診療所 https://www.youtube.com/@user-xw1gq1lv9s
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「本題に入る前に、今の日本のセックスについてお話ししておきますと、世界基準で見た時、性機能がある、つまりセックスができるかたは、幸福度が高い。自己肯定感が高いというデータがあります。ですので、性機能を維持するということは十分価値があると言えます。
けれど、セックスをしたほうがいいのか、セックスをすることは機能的に体にいいのかという問題に対しては、私も今調査中です。ただ、実際、セックスができる人の、セックスの頻度がある程度維持できている女性のほうが排尿トラブルが少ないというデータは出てきています。でも、先ほどお伝えしたとおり、腟まわりの状態がいいからセックスもでき、排尿に関してもいいのか、セックスができるように努力をしている結果、排尿の状態もよくなっているのかという因果関係のデータまでには至っていないんです。
そこで、性生活と向き合う機会を増やすということを目的に、日本性機能学会は、今後、満足度の高い日本人女性の生活をきちんとサポートしていきましょう、というほうに向かっています」
|質問|20代、30代で、特にセックスに悩んだことはありませんでしたが、男性も女性も加齢によってセックスについての悩みが増えてくると聞きました。それって本当ですか?
「セックストラブルという点で女性に一番多いお悩みは、“妊娠・出産によるセックスレス”が圧倒的に多いですね。この時に性生活が維持できたという夫婦は、その後も性生活が維持できていることが多いです。
もうひとつは、更年期で女性ホルモンが減少することによって起こるトラブル。例えば、オーガズムの質が下がるとか、膀胱炎、頻尿といったトラブルが増えてきます。
男性は女性ほど年齢的な性生活のトラブルは顕著ではありませんが、男性性機能、男性ホルモンの分泌量は、やはり低下するかたが多いです。男性ホルモン以外にも、高血圧とか糖尿病、高脂血症といった病気が現れますね。生活習慣病とともに神経と血管が悪くなってくることでいわゆる勃起機能や射精機能に障害が出やすくなります。そのために自信がなくなり、セックスの方法自体が変わってくることもあります。射精をする目的のセックスから、パートナーとスキンシップを楽しむセックスに変わってくるというのが男性の変化になります。
|質問|更年期で性機能が衰えてきたと感じた時、私たちはセックスをあきらめなくてはいけないのでしょうか?
「なぜセックスをするかというところは非常に哲学的なんです。例えば、セックスによるオーガズムのような幸福感とか多幸感ってほかでは得ることができないんです。おいしい食事による感動とはまたちょっと違った幸福感で、そういう意味でやはりセックスの意義はあるだろうと思います。
それから、セックスは相手がいないともちろんできません。別にオーガズムを得たいだけならセルフプレジャーでもいいんですが、ふたりでするものと考えた時に、挿入、オーガズム、射精、エクスタシーみたいな安直なものではなくて、相手の反応もちゃんと気遣いながら行うというのがセックスなので、セックスのあり方というのを考えてもいいかもしれません。
年齢を重ねた時に、いわゆるセックスで深く感じるだけではなくて、肉体的な接触による安心感を得るという意味で、更年期が来たから、性機能が衰えてきたからとセックスをあきらめることは全然ないと思います。
ただ、性機能を維持したい、もしくは今までのような性生活を楽しみたいというかたは、ケアを行うのもいいですね」
|質問|性機能を維持するケアがあるのなら、知りたいです!
「ケアも大事ですが、私がおすすめしたいのは、ちょっと萌えってなるようなドラマや映画などを観ること。女性のセックスは基本的に脳なんです。だから、脳がこれってちょっとドキドキするよと感じるのがいいです。女性の脳は非常に共感性が高いので、ラブシーンでヒロインが男性からすごく優しく丁寧に触られているのを見ると、自分がそれを受けているかのように感じて、『なんかいい♡』となるんです。そして、そうなった時に自分も触れたい、触れられたいと思うんです。そうやってセックスへの気持ちを高めておくのもケアのひとつです。
直接的なケアで言うと、まず、いわゆるデリケートゾーンのうるおいを保つデイリーケアが大事。専用の保湿剤もいいですが、私はワセリンでケアしています。前回の「美女組も悩んだ!更年期のあれこれ」の企画で保湿の方法はお伝えしていますので、チェックしてみてください。
そして、セルフプレジャーによるケアもおすすめです。性による幸福感などがまだわからない、オーガズムなど体の変化をうまく感じることができないということがセックスから離れていく理由ですので、セルフプレジャーを少しずつ取り入れていくのはいいですね。
日本のメーカーで『iroha』というブランドがあるんですが、まず見た目が可愛い! 色も淡い色で女性好みですし、肌あたりがすごく柔らかく、防水機能付きで洗えるので清潔さも保てるところもおすすめできる理由。こういった親しみやすいアイテムを取り入れることでもセルフプレジャーへの抵抗感が薄れるのかなと思います」
irohaの挿入アイテムの中でも最もスリムなkoharu。花のつぼみをモチーフにしたヘッドはしなやかに曲がり、からだにフィット。圧迫感を感じにくいスリムなボディは、初めてでも安心して使えるサイズ感で、膣萎縮などのお悩みを抱えているかたにもおすすめ。イロハ コハル 各¥2,178(イロハ/Tel.0800-1000-168)
セルフプレジャーに一歩踏み出せないかたに試してほしい使い切りアイテムの「イロハ プチ」。つるんと新感触で、お手頃価格。捨てる時もポイっと簡単。98%が水分だから、冷蔵庫で冷やしたり、お風呂で温めたり、好きな温度で使えます。イロハ プチ各¥630(イロハ/Tel.0800-1000-168)
「いわゆるバイブ系もいいけれど、更年期を過ぎるとうるおいが減ってくるから、滑りが悪くて密着度も減ってきます。マッサージもしんどいかと思いますので、そんな時は、ゼリーのようなアイテムで乳首や外陰部を刺激してあげるのもいいですよ。パートナーに使ってあげるのもいいかと思います。
そしてあとはうるおいを与えるためのケアですね。ウォーターローションなどデリケートゾーン専用の保湿アイテムが多数出ているのでお好みでいいんですが、私のおすすめはTENGAヘルスケアの『モイストケアジェル』。個人的には一番安心かなと思うアイテムで、グリチルリチン酸ジカリウムが配合されているんです。これは甘草なので、口に入った時も薬品独特の嫌な感じがしないんです。香りもいいですし、医薬部外品でうるおいや炎症を抑える有効成分なので、トラブルを抱えているかたにもいいアイテムです」
|質問|年を重ねても、性生活が大切なのはなぜですか?
「更年期が過ぎても、老年期を迎えてもセックスは大事です。実は性生活を維持しようと努力することで、当たり前なんですが、セックスの時に体勢が維持できるとか、もっと相手を気遣うとか、ある程度の清潔さを維持するとか、日常の生活でも大切にしなくてはいけないことがセックスには詰まっています。
なので、今からしっかり意識しながらやることで、例えば、普通に歩いている時の歩幅が大きくなって、脚の筋肉の萎縮が防げたりだとか、腰痛が起こりにくくできたりだとか、猫背にならないようにするとか……。いろいろメリットが多いですね。お年寄りでも『きれいだな』と思うかたは、性生活を維持していることが多いです。
そう考えると、セックスは年を重ねても大切だなと思います」
更年期を迎えても、閉経してもセックスは可能。ただ、腟に変化が出てくるので、例えばスキンシップを増やすなどの変化がセックスにも必要です。必ずしもやらなくてはいけないことではないけれど、パートナーとの触れ合いが幸せを感じさせ、年を重ねてもイキイキと健康的に、そして美しくいるための秘訣になりそう。
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