研究者?アーティスト?「Pinox」水野シェフの生み出す、愛のレシピ

2017年12月23日
花・音楽・空間・噐・料理が出逢い、一夜限りの幻想的な体験を生み出した「The DINING HACK ARITA」。その料理を手がけたのが、福岡県糸島市で一軒家のフレンチレストランを営む水野健児シェフです。
水野健児シェフ
水野さんは現在、地元糸島の食材だけで作るオリジナリティあふれる料理を提供するほか、ケータリングサービスや出張シェフ、コンセプチュアルなオーダーメイドウェディングのプロデュースなど、料理の域にとどまらず全体の企画構想ディレクションまでさまざまな取り組みを行っています。
 料理人の家系に生まれ育ち、幼い頃から、魚のアラで出汁をとってみんなに振る舞い、喜ばせるのが好きだったという少年時代の水野さん。一刻も早く料理人になりたいと思い、中学を卒業すると、ご両親の反対を押し切り、こっそりとわずかな知人のつてを辿って、半ば力づくで(?)ホテルの門を叩いたそう。その後数店を経て、「Pinox」をオープンさせたのは10年前。地元の食材の食材がもつ特性をとことん「研究」して料理を「開発」、それらを元にコースを構築して「発表」するというスタイルは、マッドサイエンティストかアーティストといった風情。古代の文献に名前だけが残されながらその製法が明かされていない料理を想像から再現したり、一方で最新の真空技術や微細な温度管理などのもと、現代の技術でしか生み出せない科学的な調理法に取り組んだり。「究極的には、すべてのものを自分で作りたい。塩も、オイルも。少なくとも一度作ってみて、その上で理解して生かしたい」という徹底的なこだわりぶり。季節ごとに新たなメニューを開発していますが、毎回その開発にはおよそ2カ月ほどを費やすそう。

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 今回「The DINING HACK ARITA」では、有田の食材で新たな料理の「発明」に取り組んだといいます。例えば画像1枚目は「蘇」と呼ばれる、古代のチーズを再現することに挑戦した一品。唐津の搾りたての牛乳を8時間煮込み、それを薄く延ばしてオーブンで4時間焼いたものに、3日間熟成させたババロアなど、ほかでは味わったことのないものばかり。今回提供された10品の料理は、開発期間2カ月の間に50回ほど試作を繰り返したそう!
 こんなふうに聞くと気難しいキャラクターを想像してしまうけれど、すべては料理への愛と、食べる人への愛から生まれたもの。イケメンで気さくな水野シェフのお話を伺っていると、ストイックというよりもむしろ、楽しいことに夢中になる少年のような熱を感じさせます。
ディナー提供後には、サプライズで水野シェフのギターを披露する時間もありゲストの皆様と共にとても楽しく過ごしていました。
 普段はランチ1日2組、ディナー1日1組限定のレストラン。「コース料理」のストーリーを楽しみながらも、食物の歴史、料理の歴史や未来にも思いを馳せてしまう、ドラマティックで唯一無二の料理たち。この味を知るためだけに糸島を訪れる価値は十分ありそうです。

Pinox 福岡県糸島市曽根691  tel 092-332-1006  http://pinoxpinox.com/

撮影/亀川涼、6photo、吉野ユリ子 取材・文/吉野ユリ子

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