料理人の家系に生まれ育ち、幼い頃から、魚のアラで出汁をとってみんなに振る舞い、喜ばせるのが好きだったという少年時代の水野さん。一刻も早く料理人になりたいと思い、中学を卒業すると、ご両親の反対を押し切り、こっそりとわずかな知人のつてを辿って、半ば力づくで(?)ホテルの門を叩いたそう。その後数店を経て、「Pinox」をオープンさせたのは10年前。地元の食材の食材がもつ特性をとことん「研究」して料理を「開発」、それらを元にコースを構築して「発表」するというスタイルは、マッドサイエンティストかアーティストといった風情。古代の文献に名前だけが残されながらその製法が明かされていない料理を想像から再現したり、一方で最新の真空技術や微細な温度管理などのもと、現代の技術でしか生み出せない科学的な調理法に取り組んだり。「究極的には、すべてのものを自分で作りたい。塩も、オイルも。少なくとも一度作ってみて、その上で理解して生かしたい」という徹底的なこだわりぶり。季節ごとに新たなメニューを開発していますが、毎回その開発にはおよそ2カ月ほどを費やすそう。