人間の嫉妬において一番強烈なのは、 才能への嫉妬
人間の嫉妬において一番強烈なのは、才能への嫉妬に対するものだと言われる。男女関係にまつわる嫉妬は流動的で関係性が変われば収束するが、才能への嫉妬は宿命的なもので、自分が勝たない限り終わらない。ジョーンは、この映画で自分が勝てると思ったかもしれない。しかし結果は、精神のバランスを崩した妹役の鬼気迫る怪演でデイヴィスの方がオスカー候補となる。するとジョーンはオスカーが他の女優に行くよう画策し、偶然にも授賞式に出られなかった受賞女優の代わりにオスカー像を受け取ったりしている。何という激しいバトル。ここまで徹底してしまうのも、女優魂ゆえだろうが、ダブル主役だったはずの映画で甲乙がつくのは致命的だった。スポーツは点数がつくが、演技には明快な基準がないから、自分の方がうまいと思えばうまい。美貌もそう。自分の方が美人と思えば美人。そういう基準の曖昧なものを競う者同士は必ず苦しみ憎しみ合うのだ。それを露骨に人目に晒したのがこの2人だったというだけ。ちなみに才能への嫉妬は男同士の方が酷いと言われるが、そういうものをごまかすためにこそ、男たちは“女同士の確執”を喜ぶのではないか。つまり2大女優を競わせたのもむしろ周りの男たち。その方が話題になり映画も面白くなるから。更に女の嫉妬は、自分たち男の嫉妬より怖いと思わせられるから。そう仕向けるのはいつも男なのだ。