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大人の女が、"美しく泣くこと"の難しさを考える

本誌で好評連載中の、美容ジャーナリスト・齋藤 薫さんから悩める40歳へおくる、美と人生への処方箋。今回は、"泣くこと"について

〝涙が女のもの〟と いうのは、もう昔の話

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 今どきの結婚式では、花嫁よりも花婿の方がよく泣くと言う。それはオフィスでも同様で、上司に叱られてメソメソ泣くのは女子社員よりむしろ男子社員らしい。「涙は、女の武器」と言われたのが懐かしいほど、女は泣かなくなり、男は泣き虫になった。つい先日も、夜の街角で泣いている男性を女性がなだめていて、昔は逆の光景をよく見たことを思い出した。別れ話で泣くのは、100%女の方だったから。ひょっとして、これもホルモンバランスの変化なのか。
 ご存知のように、日本人のホルモンバランスは時代とともに明らかに変わり、仕事が忙しい女性は男性ホルモンが増えるせいか、声が太くなり、ヒゲが濃くなるとされるし、気弱な男性は女性ホルモンが増えたせいか、体毛が減って肌がツルツル、的な変化が起きている。泣き虫になるのも、それが原因だろうか。一方に、こんな見方も。歳をとるにつれ、おばさんは泣かなくなり、おじさんは泣き虫になる……これまたホルモンのなせる業?
 いずれにしても、〝涙が女のもの〟というのは、もう昔の話。だからこそ、女が美しく泣くこと自体が難しくなったのだ。例えば源氏物語の女たちは着物の袖で目元まで隠して、さめざめと〝うち泣き〟、戦争中の女たちは愛する人の安否を憂いて、暗い家の中で嗚咽した。
 仕事場でメソメソ泣いたのは男女雇用機会均等法施行前の〝腰掛け就職〟の女たちまで。巧みに涙を武器にしたのは、80年代から90年代、アッシーメッシーを従え、男を手玉に取った女たち。しかし、ミレニアム世代の女たちはめったやたらに泣かなくなった。武器にするのはもちろん、自分のためにはあまり泣かなくなったと言ってもいい。まさに精神的には昔の男のように男らしくなったから。

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