最後のLINEは「それでは今から搭乗です」で途切れている。それから数日。無事帰国したのかなんなのか、こちらからも特に連絡をしないでいた。
帰国してお互いの時差がない環境に戻ると、途端にこれまでの密なやりとりを気恥ずかしく思うものだ。しばらく放っておこう。
ああ、そう思うとやはり似た環境にいる人というのは理解が早い。問題はないのだ。
もうすぐ私の誕生日。待ち合わせの連絡さえ来ればそれでいいのだ。連絡が来なかったら出るところに出て、LINEの画面を見せて契約不履行と精神的苦痛による慰謝料と涙を拭くハンカチを要求しよう。それでいい。
パンダさんは女性に極端に慣れた男。「あ~あ、あ~あのあ~だ!結局なし崩しで連絡ないのか~!」と不貞腐れて寝っ転がっていたら、ティロティロリン♪とLINEが来た。
ほら見たことか。そしてパンダさんはこう聞いてきた。
「KB子さんはタイ料理はお好きですか?誕生日はタイ料理かイタリアンで迷っています」と。
こんなこと聞いてくれる人、いたんだ。
今まで男性に飲食に関する気遣いをされたことなんて、「俺、財布ないけど、支払任せて大丈夫だよな?ごっそさん」くらいのもの。→婚活メモリーグラス「ごっそさん男」参照
タイ料理かイタリアンかぁ。両方大好物だが、どっちがより満腹になるだろうか。え!イタリアンも大好きだがありきたりっちゃありきたりか。いや、過去にイタリアンで誕生日なんて実はあったのか?いつもの誕生日はフレンチだから、いやいやそれは脳内での出来事でリアルではなかったはずだ。リアル誕生日は駅ビルで焼き鳥(レバーとつくねと皮)を買って自宅でハッピーバースデートゥーミーが関の山。
「タイ料理、大好きですよ!イタリアンもいいですね」とタイ料理に優先順位を置いた書き方をしてみた。パンダさんはアジア圏の生活が長い。よってこれはタイ料理を選ぶことでより相手を知るきっかけになるかも、と踏んだのだ。
こうして誕生日はタイ料理となった。待合せは東京駅。
43歳で(やっと)結婚。
仕事で培ったフットワークと屁理屈と知恵をフル活用してゴールイン。奴さん(夫)は夢見る世話焼きロマンチスト。Instagram(@kbandkbandkb)