連絡が頻繁にある。誕生日のお祝いを強要したが断らない。素敵なお店を予約してくれた。バラの花束はブルガリアの土産じゃなく誕生日プレゼント。どう考えても私に好意を持ってるはずだ。
しかし煮え切らない。とどめを刺されていない。ファイナルアンサーがない。不安だ、不安だ、気合いだ、気合いだ、気合いだ―――!おいおいおいっ京子―!
「竹取物語」ではこういうやり取りがある。かぐや姫が男どもの求愛に関心を示さないでいるのを、じいさんが心配する。「じいさんが生きてるうちは面倒見っけどよ、おいらが死んだらおめえどうすんだべ、わりぃ男じゃねえべ」父の出身地、千葉県北東部の言葉で訳してみました。
「てか、ウチもわかってるっつーの。あいつらみーんなチョベリグみたいな?誰がグッドルッキングガイとかバッドボーイってんじゃなくてウチのお願いを聞いてくれたらオッケーっつうことでいいんじゃね?」少し前のギャル語で訳してみました。
三島由紀夫の「潮騒」ではこういうやり取りがある。18歳の漁師新治は初江と恋仲になり、抱き合ったりするものの、一線は越えない。雨で漁が休みの日に陸軍施設跡地で初江と会う約束をしていた新治は早く着いたので焚火をし、その暖気で居眠り。気がつくと目に映るのは濡れた肌着を脱いで乾かす初江。 裸を見られた初江は、新治にも裸になるように言い、新治が従うと今度は「その火を飛び越して来い。その火を飛び越して来たら」と要求。初江、悪質な要求じゃな!火を飛び越して来たら肝心な所がヤケドしてしまうじゃないか!え!
要するに女ってのは男が本気がどうかを試す通過儀礼が必要な生き物なのである。多分。
それが酔った女の説教に耐えうるのか
ウチのお願いを聞いてくれたらなのか
その火を飛び越して来いなのか
の違いである。名作と並べて偉そうに書いてしまった私の酔狂伝。
おかしなことに、パンダさんはこの説教めいた私の「バーカバーカ」発言が大変気に入ったようで、口調も含め一気に自分を出し始めた。
この日を境にパンダさんのクールでできる男キャラは崩壊していったのである。
43歳で(やっと)結婚。
仕事で培ったフットワークと屁理屈と知恵をフル活用してゴールイン。奴さん(夫)は夢見る世話焼きロマンチスト。Instagram(@kbandkbandkb)