貫禄ある女より余裕のある女。そのほうが、だいぶ素敵【小説・じゃない側の女 番外編~溜めない側の女 Vol.3】

PR 2018年10月19日
【連載第3回】植田真木(うえだ まき)43歳。勤続20年の管理職ともなると、時には「貫禄ある姉さん」と呼ばれることもあるけれど……少なくとも顔に、貫禄はいらない。と思うのだ(全3回)

顔といえば……先日スタバで声をかけてくれたホイップクリームの似合う彼女は、近年流行りのぷっくり涙袋メイクをした、なんとも可愛らしい雰囲気の女子だった。

「理沙は自前の涙袋があっていいよね。みんなが欲しがるフェロモンタンクを、メイクで作る必要がない」

「何、褒めてくれるの?」

「ただ、そのセクシーぷっくらが、だるーんとたるんだ瞬間に、一気に老けた印象になるらしいよ」

「褒めてないね」

「いや、たまたまこの前ね、うるうるの涙袋が、齢とともにグングンたるんでいく経過写真を見たの。それ、なかなか……だったなーって、思い出して」

「なかなか何よ」

「えっと、悪役俳優さんだと、目の下にこうたるーんとたるみがあるほうが、凄みや迫力が出ていいらしい」

「あたしは悪役やらないし、これ以上顔に貫禄出してどうするよ」

「まあ、理沙がってことじゃなく、重力を感じさせる顔つきになると、誰でも自然とコワモテ寄りになっちゃうらしい」

「重力を感じさせるって、何? ほうれい線とか?」

「そうそう。あごの下のたるみとか、マリオネットラインとか。それがフルコースで揃うと、たしかにブルドッグ的な顔に近づくじゃない? 言われてみれば、ブルドッグは、一見コワモテ……」

「えー、見た目と違って、あの子達、本当は甘えん坊で、愛情深くて、癒されるんだからー!」

「ワンちゃんはね。でも私たちがパーフェクトなブルドッグ顔になって、周りが癒されるかというと……」

「うーん、まあその前に、不機嫌そうとか、意地悪そうとか、とっつきにくい印象を与えちゃう、か」

「見た目がすべてではないけれど、見た目が作る印象の影響は大きい。つまり、忙しさにかまけて、仕事中、笑顔の一つもない険しい顔の理沙がね」

「ちょっと! 真木はあたしが働いてるとこ、見たことないでしょ?」

「そんなの楽勝で想像できる。人を寄せ付けぬ勢いで、ブルドーザーばりに仕事する理沙の姿」

「ブルドーザー?! ジャングル状態の荒れ地に分け入って、力ずくで整地しまくるあれ? あたし、あんな感じなの?」

「そんなブルドーザー女史の顔が、この先“真のブルドッグ化”した暁には、ますます話しかけづらく、近寄りがたい上司になること間違いなし」

「だからそれ、困るって」

「ブルドッグっていうから怖いのかな、パグだったらどう?」

「そういう問題?」

「違うか」

「違うね」

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恋、仕事、結婚、家事、育児に介護etc。

誰でも日々を懸命に生きればこそ、徐々に積もる過労やストレス、責任、寂しさ、嫉妬に思い込み。

若い頃は、自分がどうしたいのか、何をやりたいのかもよくわからず、まだ何者でもない自分の中に、まずは可能な限り、どんな知識も経験も感情もすべて取り込んで、咀嚼しては学習し、溜め込んでは成長してきたように思う。

でも、世間様に“大人”と呼ばれる歳になった今。気づけば溜め込み過ぎたそれらの重みからこぼれる余分な一言や、重たい見た目の印象が、謎の“貫禄風なもの”を醸し出しているのだとしたら、それは全く本意じゃない。

老いは誰もが通る道、成長は選んだ人が通る道。

そんなことわざがあるけれど、人生100年時代の今、せっかくなら、まだまだ“新しい自分”に出会いたい。

だとしたら。

心身ともに重力にあらがえない齢になった今だからこそ、ここはひとつ、“今の自分”が本当に必要なものだけを丁寧に選びとり、それ以外は思い切って、パーッとすべて手放してみるのはどうだろう。

大丈夫。その「手放す潔さ」もまた、大人になった今の私たちはきっと、身につけているはずだから。

ずっしり背負って、貫禄ある厳しい姉さんより軽やかにひきしまった、精悍でしなやかな姉さんに。

ここから先はもう、溜め込まず、淀まず、濁らず。

常に新しい自分に出会い続けることを楽しむ余裕のある女に、なってみるのはどうだろう。

そう、“貫禄”ある女より、“余裕”のある女。

そっちのほうが、だいぶ素敵。


 

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