☆お話をうかがったのは…
呼吸整体師 森田愛子先生
呼吸整体師として、体を育て直すことをコンセプトにしたK-Raku styleを運営。これまで4万人以上の施術、指導実績から、心と体、呼吸への意識を変えることで、さまざまな悩みを解消し、根本的な体質改善まで導く
【1】知っているようで知らない呼吸法Q&A
吐けない、浅い、止まる…… 呼吸のクセが不調を招く!
「私たちは一日に3万回もの呼吸を繰り返しています。このふだんの呼吸をどれだけ〝優しいもの〟にするかで、体の不調を根本から改善することができるんです」と呼吸整体師の森田愛子先生。
「呼吸は無意識に行っているものなので、自分では気づきにくいかもしれませんが、吸うことはできてもうまく吐けない、呼吸が浅い、呼吸が止まってしまうなど、呼吸のクセがある人が本当に多い。今こそ自分の呼吸に目を向けて、このクセを解消してみませんか? 深い呼吸を身につければ、体だけでなく、心も楽になる。そんな体に優しい呼吸をぜひ始めてみてください」
【呼吸法Q.1】そもそも呼吸って どうして大切なの?
A. 酸素や血液、体液を循環させ、全身のめぐりをよくして自然治癒力を高めてくれるから
「呼吸は、酸素を取り入れ二酸化炭素を出すだけのものではありません。私たちの体は呼吸によって、体の中心から末端へ、末端から中心へと血液や体液などを循環させています。この呼吸力、循環力こそ、人間が本来もっている"自然治癒力"を高め、痛みや不調のない体に導くカギなのです」
【呼吸法Q.2】よい呼吸ってつまりはどんなもの?
A. 深い呼吸で、体が膨らみ、しぼむ、という自然なリズムに従って全身の循環が行われていること
「よい呼吸とは、鼻から吸った息が体の中心を通過し、おなかの底にストンと収まっていく、深い呼吸のこと。たっぷり息を吸うと体が膨らみ、吐くとしぼんでいきますよね。この膨張と収縮の力がポンプのように働き、筋肉や関節をしなやかにし、自律神経や血流、胃腸などの働きを整えているのです」
【呼吸法Q.3】よくない呼吸にはどんなものがあるの?
A. 「呼吸が浅くなる」「呼吸が止まってしまう」などの偏った呼吸が体の滞りを生む
「多忙な日々を送っていると、無意識のうちに体が緊張し、呼吸が浅くなります。浅い呼吸は、呼吸循環の中枢にあたる体幹の表面部分に小さくとどまり、呼吸のエネルギーを全身に送り出すことができません。深い呼吸のように力強さがないので、体のどこかに滞りが生まれてしまいます」
【呼吸法Q.4】正しく呼吸ができないと、 どうなるの?
A.自然治癒力が正常に働かず、慢性的な不調が現れる
「浅い呼吸を繰り返していると、呼吸循環、体液循環が悪くなり、筋肉、自律神経、代謝、内臓の働きなど全身の機能が低下し、自然治癒力も正常に働かなくなってしまいます。そのため、肩こりや頭痛、冷え、イライラ、おなかの張りなど、慢性的な不調が続くように」
【呼吸法Q.5】自分がきちんと呼吸できてるかを知りたい!
A.吸う・止める・吐くを意識して自分の呼吸をチェック!
「鼻から吸う20秒+止める20秒+吐く20秒の" 1 分呼吸"で、自分の呼吸のクセを確認してみましょう。鼻呼吸はできていますか? きちんと吐ききることができましたか? 今はむずかしくても、体に優しい深い呼吸を意識すれば、心も体も楽に、元気にしてくれますよ」
■吸う息チェック
【息を吸う時に】
□あごが上向きになってしまう
□上半身が後ろにのけぞってしまう
□両腕が脇から離れてしまう
□胸やおなかが大きく前に膨らんでしまう
■吐く息チェック
【息を吐く時に】
□吸う息の倍の時間をかけて吐くことができない
□吐ききった後、その反動ですぐに息を吸ってしまう
□おへその下(下腹部)がへこまない
□胃の部分に力が入ってしまう
【2】基本の深呼吸
1.これが、深呼吸の基本姿勢!
肩の前面と骨盤の前側にある出っぱりが一直線になるように、リラックスした姿勢で椅子に座る。足は肩幅に開き、足裏は床にぴったりとつけて。手のひらを上に、太ももに優しくのせて。
2.鼻から引き込むように息を入れていく
おなかの奥に空気を引き込むように、鼻から息を吸っていく。坐骨から椅子の座面に、足裏から床に、それぞれ重みがかかっていると感じながら、深く息を吸っていこう。
3.口からゆっくりと息を吐く
無理なく息を入れたら吸う時の倍の時間をかけ、口からゆっくりと息を吐く。この時、頭と背骨の位置がずれないように。自分のペースで、この吸う、吐くを5〜10分くらい繰り返して。
【3】緊張をリリースする方法
<手の緊張を解く方法>
<肩の緊張を解く方法>
【4】朝・昼・晩それぞれ取り入れたい「呼吸ワーク」
<朝の丹田呼吸法>
丹田は、人間の体の中央にあたるところで、足の循環をはじめ、全身の血流を上げたり、精神的な安定をもたらす大切な場所。朝、丹田呼吸を行うと、内臓が活性化され、自然治癒力もぐんとアップ。疲れにくい体へと導いてくれる。
こんな時に・・・
□よく眠ったのに、疲れが取れていない
□胃腸の調子がよくない
□やる気が起きない
☆うまくできなかったら…
最初は、基本のあおむけ姿勢をとりにくいので、膝を曲げたポーズからスタート。
<昼のうずくまり呼吸法>
うずくまり呼吸は、呼吸の逃げ場をなくし、鼻から吸った息がおなかの奥にストンと収まるのが体感でき、しっかり吐ききることもできるようになるワーク。日中のストレスで縮こまった体は、この呼吸でリラックス。
こんな時に…
□長時間パソコンに向かっている時
□日中の眠気がピークに達した時
□重要なプレゼンの後、緊張をほぐしたい時
<夜の腹式呼吸法>
腹式呼吸は、緊張やストレスで力みがちなふだんの呼吸を、心と体に優しい呼吸に変えてくれる呼吸法。おなかが膨らむ、しぼむという呼吸を繰り返すことで循環が促され、副交感神経が優位になり、深い眠りに誘ってくれる。
こんな時に・・・
□体質を根本から改善したい
□いつも眠るまでに時間がかかる
□風邪をひきやすくいつも調子が悪い
【5】正しい呼吸のために日常生活で気をつけたいこと
<正しい立ち方>
【OK】
股関節の真下に足の裏が来るようなイメージで。こうすると膝やおしりに力が入らず、呼吸がぐんと楽に。肩はやや内側に入っていると、背中の緊張が起こりにくく、背骨も動きやすい。
【Point!】
股関節は、恥骨と骨盤の出っぱり約3 ㎝下を結んだ中心(★の位置)の奥にある
【NG】
背すじをピンと伸ばした立ち姿は美しいけれど、首や背中、肩甲骨がロックされてしまうため、胸の浅い部分でしか呼吸ができなくなる。さらに、おしりにむだな力が入り、股関節や骨盤を硬くしてしまう。逆に猫背で顔が前に出た姿勢は、口呼吸になりやすく、おなかの中央に息が入りにくい。
<正しい座り方>
【OK】
肩口と骨盤がほぼ一直線になる自然な座り方は、おなかによけいな緊張がかからないため、深い呼吸ができる。
【NG1】
背中を基準にした座り方は、背骨の自然な湾曲が消え、肩甲骨、首、肩、膝、股関節がロックされてしまう。
【NG2】
腰を基準にした座り方は、肩口、骨盤のラインがくずれ、胃の部分に力が入って下腹部が膨張しやすくなる。
<パソコンを打つ時の正しい姿勢>
【OK】
肩が上がらない位置にキーボードを置いて、肘を逃がしてあげると、指先や肩によけいな力が入らない。
【NG】
力をこめてキーボードを打ったり、よけいな力が入っている人は、肩が上がって眉間のシワも目立ってます。
<バッグを持つ時の正しい姿勢>
【OK】
ショルダーが気になるなら、片手でそっと押さえてあげて。これで肩が上がらず、首や背中の力みや緊張を回避できるはず。
【NG】
ショルダー部分が肩から落ちないように、片側だけぐっと力が入っていると、肩が上がり、首や背中に大きな負担がかかってしまう。
<シャンプーをする時の正しい姿勢>
【OK】
人さし指は力みの指!? シャンプーする時につい力が入ってしまう人は、人さし指をはずした4本の指を使って洗うと、驚くほど軽やかに。
【NG】
髪を洗う時、5本の指を使いゴシゴシシャンプーすると、指先、腕、肩によけいな力みが発生。気づけば呼吸が止まっているなんてことも……。