第1回は、今やアラフォーにもスタンダードになりつつある、マッチングアプリを使ってパートナーに出会った女性のトライアル記です。
(取材・文/芳麗)
「まさか、私がマッチングアプリ? 怪しいし……いい出会いなんてあるわけないよね……。最初はそう勝手に思い込んでいましたが、それは私の知識不足でした」
都内でフリーランスのデザイナーとして働く橋本恵美子さん(40歳/仮名)は、明るく笑う。モードな白シャツをさらりと着こなす美人ながら、表情豊かで親しみやすい雰囲気が漂っている。
橋本さんが彼と出会ったのは約2年前、マッチングアプリ上だった。
「正直なところ35歳過ぎるまで、結婚については考えていませんでした。忙しく仕事して、たまには恋愛もして。パートナーは欲しいけど、結婚って生きていれば自然にできるものだと思っていたのに。年齢を重ねるにつれ、そうではない現実に薄々気づき始めて」
思いきってマッチングアプリに登録したのは、36歳の時。きっかけは15歳も年下の仕事のアシスタントにすすめられたことだった。
「アプリって、私たちの世代にとっては、まだまだハードルの高い選択肢でした。でも、年下の子たちは『みんな登録してますよ』って言うし。『そろそろ、なんとかしたほうがいいよ』っていう仕事仲間のツッコミもあって、勢いで登録。
当時は、弟との同居を解消して、恵比寿に引っ越したばかり。パートナーを求める思いが、急速に高まっていました。恵比寿って、毎日、幸せそうなカップルが歩いているんですよ。私だけ1人な気がして、寂しさが身にしみたんです」
すすめられるがまま、3つの有名なマッチングアプリに登録した。
「1つ目はアプリAです。これは比較的、本気で結婚相手を探す人向けかな。プロフィール欄に細かく条件を入力して、身元確認もきちんとしていました。2つ目のアプリBは、アプリAとは真逆で、ほぼ顔写真だけで判断するようなライトなシステム。そのせいか恋活の人メインで、妻帯者も多そうでした。3つ目のアプリCは、この2つの中間という感じ……あくまで私の主観ですが。使っているうちに、アプリによってそこにいる人たちの属性が違うことが分かってきて、そこが使いこなしのポイントかなと感じるようになりました」
最初は3つを同時進行で使っていたが、しだいにアプリBしか使わなくなっていったという。
「各アプリを使ううちに気づいたんです。アプリAでは、私好みの人や気の合う人にはなかなか出会えなさそうだなと。真剣に結婚をかなえたい人向けのアプリだからか、伝統的で堅い考えの人も多いように感じました。『子供は絶対』『女性は家を守る』とか。それこそ、デザイナーという私の仕事も『何それ?』と眉をひそめる人が多い印象。私には、何かが違うみたい……。アプリAは細かく出会う相手への希望や条件を入れられるのですが、今思えば、最初から『長男はNG』『子供が欲しいか』といった言語化できることだけを決めていくことに、私はうまく対応できなかったんですね」
もちろん、各アプリを使っている人の属性は一概にはカテゴライズできないし、たまたまの出会いかも、と橋本さんはつけ加える。そしてどのアプリにもそれぞれ特性があり、どれが合うかは人それぞれ、とも。
誰でもいいわけじゃない。効率が一番いい出会いは意外にも……?
結婚を願っている独身のアラフォーも、実はいろいろだ。婚活現場では焦りながら頑張っている人も多い。
一方、橋本さんのように“結婚ファースト”ではなく、これまでの自分や人生を尊重し合い、寄り添えるパートナーを探している人もいる。
40歳近くにもなれば、自立して独身生活を楽しんできた自負もあるからこそ、結婚だけを目的には動けない。でも、そろそろなんでも話し合えて支え合えるような、生涯のパートナーに出会いたいと願っている。
「将来の不安もあるけど、これまでに自分が頑張ってきた人生を変に曲げるような妥協はしたくない。でもいざ婚活を始めてみると、そんな簡単にピンと来る人に出会えるわけじゃないこともよくわかりました。40歳までには私のパートナーを見つけよう、と心に決めて淡々とアプリを使い続けていました」
誰でもいいわけじゃない、一緒にいて心地のいいパートナーが欲しい。それなら、「合コンや結婚相談所や婚活パーティよりも、私にはアプリが一番効率がいいと思えました」と橋本さん。
それはどうして?
「出会いの数をこなしたほうが、確率が上がるかなって。実はたった一度だけ、婚活パーティは経験ありなんですけど、全然ダメでした。限られた時間の中で、1人2~3分ずつ話して人柄を判断するのは私にはむずかしいな……と感じたので、行くのをやめました。そのパーティがたまたまそういうものだっただけかもしれませんが、私には難易度が高かったです!」
一方アプリは、自分のペースで会いたい人と会って、じっくり話すことができるのが良かったという。
「とにかくどのアプリも人数が多くてまるで海の中にいるみたいだし、遊び目的な人もいて玉石混交。それでも、まだ効率がいいような気がしたんです」
アプリを使いこなして、自分にとってのいい出会いを見つけるためにはいろいろとコツがあることがわかってきた、と橋本さん。
「私の場合、近距離にいる男性とだけマッチングするように設定しました。近所に住む人なら、価値観も生活スタイルも近いかなと。お相手の収入は同じくらいかそれ以上……という希望はありましたが、自分と近い暮らしができることが大切だと感じました。ギャップがありすぎると、時がたつにつれてさまざまなズレが出てくると思ったからです。お金をどこにかけるかという部分で、価値観の近い人を探していました。実は一番よく使っていたアプリBには収入を書く欄はなくて、私もお相手に収入を確認したことはないんです。お会いして雑談からライフスタイルを想像してみて、一緒にいて楽しくいられるかなあ……という自分の感覚を大事にしていました」