可もなく不可もない男と39歳駆け込み婚【小説・じゃない側の女~Side1結婚してない側の女 Vol.1】

2017年5月12日
【連載第1回】植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。(全14回)

「ぽっくり死ねばいいのになぁって思ってた」
「誰が?」
「旦那」

いい歳の大人たちが知り合いを連れて集まるバーベキューでたまたま出会った旦那のA男は、もとい元旦那のA男は見た感じ可もなく不可もなくいわば無味無臭な人だった。ルックス、家族構成、実際の体臭、H、一事が万事まあそんなものかな的、可もなく不可もない人。ただくしゃくしゃに笑う「笑顔」だけは無邪気で思わずこっちもにっこりしてしまうような。30代も後半になると、疲れた体に鞭打って、どれだけ合コン連打しようが、この『可もなく不可もない男』に出会う確率自体が激減する。悲しいかなそれは自分自身が『可もなく不可もない女』ゾーンからはみで始めているせいだというのもよくわかっていた。だからこそ、普通の人に出会えただけで、そしてその相手が自分に関心を持ったというだけで、とてつもなく貴重だと思った。

30代のラストもラスト、39でぎりぎりウェディングドレスを着た。挙式と披露宴は39歳。1か月後の入籍はジャスト40歳の誕生日だった。文字通りの駆け込み婚。

手の乾燥で、スーパーの袋はなかなか開かない。
靴下ぬいだら、ゴムの跡が半日経っても消えやしない。
髪のボリュームどこいった、どれだけスプレーしても風が吹けばぺしゃんこ状態。まぶたは下がり、夜になっても寝起き顔。日に日に深くなる額の皺とほうれい線。少しずつ少しずつ体や肌に表れる老化の兆候。衰えの気配。危ない。ここから一気に加速する…。バナナも腐る寸前が最高においしいというが、そう、肉体的にも外見的にもひしひしと老いの気配を感じ始めていた矢先、ギリ40寸前のウェディングドレス姿は、我ながらその腐る寸前の輝きをヒトキワ発していたように思う。内側から放つ輝きを、おばちゃんになりきる寸前に放出しきった、やりきった感あふれるものとなった…気がする。

そしてそんな駆け込み結婚をしてみた結果、会社での毎日は気分的にとても楽になった…気がした。

幸せか幸せじゃないかなんてこと以前に、年相応にごく普通に左手の薬指に指輪をして出社して、パソコンに向かって仕事しているだけで、既婚者です。大勢の皆さんと同じようにごく普通に結婚しておりますと、自分が目立たない側、その他大勢の中にまぎれこめた気がして、それだけですごく気が楽になった。それは事実だ。

「ふーん。あたしにはよくわかんないけど、真木には結婚してよかったことが一つはあったわけだ。それはよかった。まずは結婚にカンパーイ」

黄金色のシャンパングラスを片手に、理沙がにっこり微笑んだ。

「うん……なんだろ、会社組織にいると独身アラフォーってだけでほんと無駄に疲労すること多かったから」

そう、会社組織で生きる“アラフォー独身女”は、実に疲労する。良くも悪くも、そもそも女であるというだけでネタ化率が高い。

男の場合、結婚しようがしまいが、離婚しようが再婚しようが、何をしてもしなくても正直「仕事以外のプライベート」に余計な関心なんて持たれない。結果さえきっちり出せば不倫しようが、人としてそれちょっとどうよと思うハラスメントライクな言動があからさまにあったって、よほどでない限りスルーされることが多い。

  • 植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

    ■Side1結婚してない側の女(全14回)を読む >
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