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好きでもない仕事を20年続けて、気づけば30代も終わる寸前【小説・じゃない側の女~Side1結婚してない側の女 Vol.4】

【連載第4回】植田 真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。(全14回)
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に対し、私こと植田真木は小さな頃からずっと、自分には「これというもの」が本当に何ひとつない子だと思って生きてきた。人より秀でた能力、技術、知識、人と違う感性、個性、目的意識、目標、そういうのが何もない子だと。凡庸、まさにこの凡庸って漢字どおりの、ごくごく普通の、なんのへんてつもない子である自分。

「誰にもできない特別なこと」が何もできないから、「誰にでもできる当たり前のこと」を誰にもできないくらいやることで、なんとかするしかなかった。だからいつも必死で精一杯でムリに無理をかさねて、その時々の自分の限界以上の成果を血反吐はきながらなんとか出し続けてしまうという。

もちろんムリに無理を重ねる過程で、気づかぬうちに成長していたりもするのだけれど、無茶な成長痛を常時伴い続けるといいましょうか、なにしろいつも息切れして苦しい感じ。

なまじ昭和の親に育てられたためか変な責任感は強く、会社に入ってからも、まじめに給料分は働かなくちゃとか、課された期待に見合う成果は絶対出さなくちゃなんて、肩肘はって無理してムリしてがむしゃらに仕事して。
そんなふうに必死こいて成果を出し続けている間は、それこそ終電まで仕事して家帰ってお風呂入って寝てまたすぐ会社行ってという生活を延々繰り返すことになる。会社って、むごいことにやりきった人間へのご褒美は「次の仕事」「さらなる仕事」なのです。

だから、なんとか帳尻あわせてやりきるものの、実は自分のプライベートの時間をがんがんに持ち出して必死に対応している状況がずっと続くことになる。それで息絶え絶えになんとか乗り越えちゃうと、ただでさえムリして出した成果なのに、またまたご褒美としてさらに前回を上回る期待値や仕事がどーんと与えられちゃうという悪夢の繰り返し。地獄のエンドレス。

組織に勤める会社員の悲しいサガで、やれと言われたら出来ないなんて簡単には言えない。言える雰囲気などなかった。ぶっ倒れたら初めておおっぴらに言えるけれど、いつもぎりぎり倒れる寸前の瀕死状態で、かろうじて生きのびてしまう私には、白旗をあげる機会は来ないまま。

そんな日々を過ごしていると、一人でいることが寂しいなんて感じる暇も考える気力もほんとに全くなくなる。いつも疲れているし、仕事してない時は一人で寝たいし、休みたい。たまに時間があれば、その時を楽しく一緒に過ごせる恋人がいればもうそれで充分こと足りてしまうというか。それ以上考える時間と気力と体力がないというか。結婚はいつまでにして子供は何歳までに産んで自分の家族をこう作りたい!とか、そんな発想全く浮かばないくらい怒濤の毎日を、ただがむしゃらに生きてきちゃって。それってちょっと悲惨かな。

楽しくて楽しくてがむしゃらに生きてきちゃった、ならそれはそれで素晴らしく充実した時間を過ごせたように聞こえるけれど、私の場合、食べていかないといけないからってだけで、特に好きでも楽しくもない仕事をムリして自分に鞭打ち続けてたら20年近く消費しちゃって、気づけば30代も終わる寸前だったと。

そしてそこでやっと目が覚めたというか、気づいたわけです。あ、私一人で結構なところまで来ちゃったんだって。それでハタと思いたって、目の前に流れていた流木にしがみついた、というわけです。
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    植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

    ■Side1結婚してない側の女(全14回)を読む >

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    谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。

    ■Side2産んでない側の女(全15回)を読む >

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