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39歳でやっと手に入れた結婚。「40代独身女」に戻ろうと決めたのは自分自身だった【小説・じゃない側の女~Side1結婚してない側の女 Vol.10】

【連載第10回】植田 真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。(全14回)
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決めるまでの時間はもうかなりの勢いでぐずぐず悩んだ。だって、やっとのことで「結婚してない側の女、できない側の女」から、ようやく脱却したというのに、また戻るのか!って自分をなじる自分もかなりいたので。

表向きどんな円満な離婚であっても、成功か失敗かと言えば失敗。結婚とは続けることが成功であり、正解である。続けられない、続けないという選択を選ぶことは、失敗であり、不正解であり、人として未熟なダメ人間である。

個々の事情や理由や経緯がどうあれ、昭和に生まれて平成を生きている今のアラフォー周辺では(特にその親や親族近辺では)、およそそんな反応がまだ常であり、おおかたの見解ではないか、という恐れ。

オリンピック周期より短い期間での離婚。頭の悪い我慢の足りない残念な女だと周囲から見られる恐怖。

結婚したのに、結婚前も後もずっと一貫して結局ひとりだった自分。結婚したからって、入籍したからって、それで誰かとつながったわけでもなんでもなくて、結局必要とされず、誰ともつながれず、誰の特別にもなれないまま、なお一人なんだという、どうしようもない絶望的な孤独感と強烈な寂しさが腹の底からこみあげるような日々。

離婚してしまったら、再び「イケてない独り身の40女」枠に足を踏み入れることになるのではないか。それは嫌だ。あれだけ面倒くさかった周囲の雑音に、再びさらされるのはいやだ。いやを超えてもはや恐怖だ。そんなネガティブ思考にとらわれている頃は、つい思った。

ああ、あの人ぽっくり死んでくれればいいのに、と。

社会的にも、夫に先立たれた未亡人、というのは、離婚と違って失敗した女という印象を与えない。それはとっても魅力的。いいな未亡人枠……なんてこと、望まずして心から愛する人を失った方を思えばこの上なく身勝手で罰当たりな考えだと、今の私なら思う。

でも寂しくて悲しくて腹立たしくてやりきれなくて情けなくて相手を責めては自分を責める「悶々悶々エンドレス悶々の日々」にあっては、そんな恐れ多いことをふとした瞬間に思ってしまう位、メンタルはボロボロにやられ、腹決めするまでの間は、毒という毒が体中を巡りお肌もぶっつぶつに荒れ放題、まさにマスターの言う毒ブス毒デブ化一直線だった。

「その過酷なトンネルをめでたく抜けた真木に。はい、これ飲んでみて」

マスターがテーブルの上のグラスを持たせてくれる。一口こくりと飲むとふわっと爽やかな香りが広がった。 

「おいし!」

「だろ? だってこれ、真木が昔から好きなメキシカンライムとオレンジ両方絞って、マヌカハニー溶かしてあるんだから。ただの水じゃないからな。真木のために作りましたよ」

「ありがとう、マスター」

真木のため。ああ、今それ、弱いなぁ。
じわっとおなかのそこに染みわたる。
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    植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

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    谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。

    ■Side2産んでない側の女(全15回)を読む >

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