欠点ばかりが目についたり、エイジングが気になったりして、自分の顔に不満をもっている人は多いもの。そんな人にトライしてほしいのが、一人ひとりの顔立ちやパーツをきわだたせ、魅力を引き出す"ディファインメイク"。このメイクを始めたメイクアップアーティストの水野未和子さんと、長年、水野さんの仕事にかかわってきたビューティエディターの松本千登世さんが語る、メイクを通した自分、そして人生の見つめ方って?
(右)まつもと・ちとせ●ビューティエディター。端正で説得力のある文章にファンが多い。著書に『「ファンデーション」より「口紅」を先に塗ると誰でも美人になれる「いい加減」美容のすすめ』(講談社)など
(左)みずの・みわこ●メイクアップアーティスト。一人ひとりの魅力をディファインするメイクで知られ、多くの女優も信頼を寄せる。著書に『ディファインメイクで自分の顔を好きになる』(講談社)
若さにすがりつくのはやめて、自分の“好き” “心地よさ”を大切に(ビューティエディター松本千登世)
松本 私たちが出会ったのは15年くらい前、ある雑誌の撮影だったよね。それから一緒に仕事をするようになって、メイクしている時、未和子が何度も「ディファイン」って言っていてそれがとてもい い言葉だなと思って。
水野 ディファインっていうのは、明確にするという意味。その人本来の顔の形や立体感、目、唇といったパーツをきわだたせるメイクが、ディファインメイクです。
松本 ほかの人に変身させるのではなく、その人の延長線上にある最大限の魅力を引き出すメイクね。ある女優さんが「最小にして最大のメイク」と言っていたそう。
水野 テクニックは普遍的で誰にでも当てはまるけど、できる顔は100人いれば100通り。同じ方法でも骨格などの違いによって、見えてくるものが違ってくるんです。
松本 そしてメイクをすると、自分自身がパッと出てくる! 実際にメイクでディファインするのは、「輪郭」=顔やパーツの輪郭、「凹凸」=顔全体の立体感やメリハリ、「いきいき感」=温度、湿度、血色よね。
水野 そう、目立たせたくないものを影を強めて削ぎ落とし、きわだたせたいものを掘り起こして光を集め、その人自身のフレームをはっきりさせて、いきいきとした印象を吹き込むんです。
松本 私自身、ディファインメイクを知る前、自分の顔の凹凸を意識したことはありませんでした。メイクを平面でとらえていたのね。でも、人は平面では生きていない。光と影、凹凸でとらえると自分の思っている顔と違ってくる。その感覚を体感してみてほしい。
水野 ディファインメイクの考え方の根本にあるのは、カバーする、隠すのではなく、もともともっているプラスの部分をもっとプラスにしようとすること。ここが好き、ここは好きじゃないという部分は誰にでもあります。とはいえ、今はみんな、好きじゃないほうばかりフォーカスする傾向にありますよね。「あの女優さんみたいに色が白くないから、私にはムリ……」とか。けれど、ないものを求めて苦しむより、いいところを伸ばすほうが絶対簡単。このメイクで自分の顔の好きなところにさらに自信をもてたり、短所と思っているところだって、意外に好きと思えたら、すごく意味があることだなと考えているんです。
魅力>美人。美人を目ざすのではなく、その人だけの魅力を磨いて(メイクアップアーティスト水野未和子)
松本 未和子はよく、「魅力≫美人」って言っているよね。
水野 大人は「魅力をもっていること」に勝るものはないと思う。誰かとの比較ではない、その人にしかない魅力をね。でも、日本人は「美人」に憧れる。また、若く見えることにもこだわりをもっている人も多いよう。
松本 みんな何かに縛られているし、縛られている気持ちも私はよくわかる。特にマリソル世代はまだ“若さ”を覚えていて、ホカホカ温かいから、若さにとらわれがち。けれど、一度若さというベクトルを捨ててみるといいかも。若さにすがりつくのは苦しいこと。それより大人は「あの人素敵」と言われるのが一番。
水野 年齢を重ねるほど、容姿は自分でつくるものだし。
松本 あと最近、私、思うんだけど、大人になるにつれて、本当に大切にしたほうがいいのは「似合う」より「好き」。好きで自分が心地よいというのが大事。ディファインは自分の「好き」のディファインでもあると思う。
水野 自分が何を取り入れ、何を捨てるべきかをもっている人は素敵! メイクでもそれができる人がいいし、そういうメイクのあり方がいいなあ。
松本 私、ディファインメイクをすると、人の目をまっすぐ見て笑えるし、気持ちが自由でいられる。シワがあっても、「この目が好き」と思えるの。昔、一緒にごはんに行った時、未和子が口紅を塗ってくれたことがあるでしょ。そうしたら口紅ひとつで立ち方が変わって、堂々とした自分になれた。そんなふうに違う自分が見えるメイクでもありますね。
水野 皆さんもどうぞメイクを楽しんで、唯一無二の〝一番キレイ〟な自分を見つけてくださいね
〝一番キレイなわたし〞 になる「ディファインメイク」ここからはじめよう!
①「自分の顔と向き合う」
自分の顔を知ることから、ディファインメイクは始まる。どこが魅力的? どこをきわだたせればいい? 冷静に観察して、とことん向き合って。
顔の削ぎ落とす部分と浮き立たせる部分を知る
イクを始める前に大切なのが、 自分の顔と向かい合うこと。「というのも自分の顔の実際をわかっている人は少ないから。例えば『目が小さい』と思っている人が、実は目の幅が長く、小さい目ではなかったということがあります。縦幅のある丸い目でないので、『小さい』と思い込んでいたんですね」と水野さん。では、顔を客観視するには? 「モノクロの顔写真を用意して、じっくり観察して。色の要素がないと、輪郭や骨格が見えやすく、削ぎ落としたい部分、浮き立たせたい部分がわかりやすいんです。また、パーツの配置や比率も見えてきて、きわだたせたいポイントが把握できます」。最後に写真の上にメイクをして、ディファインの方向性を確認して。
STEP 1
自分の顔写真をモノクロにしてみる
モノクロ写真を撮って観察すると、カラーではわかりづらいディファインの方向性が明快に。自然光のもと、ノーメイクかナチュラルメイクで、表情をつくらずに真正面から撮影。できるだけ実物大に近い大きさにプリントして。
<みんな意外に本当の顔は知らないもの。モノクロ写真なら、"色"という情報に惑わされず客観視できます(松本千登世さん)>
STEP 2
モノクロ写真を見て、自分の顔の特徴を客観的にチェック
撮影した写真で顔を観察し、分析。モノクロだと、顔を先入観なく、またシミやシワなどのノイズにとらわれずに見ることができ、シェイディングで削ぎ落としたいところやハイライトで浮き立たせたいところ、眉や目などきわだたせたいラインがわかってくる。
STEP 3
モノクロの写真にメイクをしてみる
手持ちのコスメで、引っ込ませたい箇所、浮き立たせたい箇所、きわだたせたい箇所を考えながらメイク。そしてメイクした写真をさらにモノクロにコピー。すると色や質感が実際どのように出るかが見えて、ディファインの方針がよりクリアに。
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