もし真木を一言で表すとしたら、外見、内面ともに“媚びないエロナチュラル”だ。バーバリーのトレンチに白シャツとデニム。襟元からは素肌と鎖骨がほどよく見えて、すそが切りっぱなしになったストレートデニムともども、ほどよいこなれ感。何気ないのにいつもどこか新鮮で、スタンダードなコーディネートは男社会に媚びずに品よく色っぽく、ネイビーとシルバーが基調のメイクも清潔感あるエロイ感じと、知的で凛とした色気を醸し出す。なんとも“ほどよいナチュラルなたたずまい”の真木は、女の私でも隣にいてうっとりしてしまうのだから、男ならなおのことだろう。
そして内面は常にニュートラル。自分と異質の者に対してもあたしのようにファイティングポーズをとらず、間もなくここにやってくる結花のように拒否もせず、かといって迎合もせず、あなたと私は違うけれどまあそれはそれですねというスタンスを自然と維持できる、絶妙にバランスのいい女。あたしから見れば、それは真木の最大の魅力だと思う。が、43歳にもなってあの人は多分それに気づいていない。から面白い。
自分以外の人を否定しない力は抜群にあるのに、自分を肯定する力がないのが惜しいとずっと思ってきたのだけれど、結婚と離婚を経て、やっと「あんたもやるだけはやったよ。だからまあ、もうそれでいいんじゃない?」と初めて真木が自分で自分に言ってあげられたのだとしたら、離婚も、最高に意味がある出来事だったと思う。
人生に起きることで意味がないことなんて絶対ない。それにどんな時も、必要に応じて必要な時に必要な縁は作られるとあたしは信じてる。離婚した彼女に、結婚すらしたことのないあたしがあえて言うことではないから言わなかったけど、おそらく元ダンとの出会いも、その時の真木には必要な縁だったのだとあたしは思う。
「これが私なんです」とありのままをさらけ出せるようになった真木は、一層魅力的になると思う。今までも十分モテてきた女だけど、これからもっといい女になる。ま、本人には言ってやらないけどね。
-
植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。
■Side1結婚してない側の女(全14回)を読む > -
谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。
■Side2産んでない側の女(全15回)を読む >
-
畠山結花(はたけやま ゆか)43歳 ゼネコン勤務の一級建築士。同業のハイスペック夫と2人の子供、瀟洒な一軒家。「すべてを手に入れて」順風満帆な人生を突き進んでいるように思われるが…。
■Side3あきらめない側の女(全14回)を読む > -