①食後もシャキっと動くために気をつけることは?
血糖値というと、糖尿病やダイエットをイメージするけれど、実は仕事のパフォーマンスを上げるのにも深い関係が。血糖値をうまくコントロールすれば、つらい昼間の眠気や倦怠感とサヨナラできる! 正しい方法を知って、早速取り入れて。
北里研究所病院 糖尿病センター長 山田 悟先生
糖質の多い食事は血糖値を乱高下させ眠気などのもとに
食後に強い眠気や倦怠感に襲われ、仕事が手につかない……。こんな症状に悩まされている人は、血糖値に問題がある可能性大。そもそも血糖値とは何かを、山田悟先生に改めて教えていただいた。
「血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の量のこと。食事で糖質をとると、血液中のブドウ糖が増え、多かれ少なかれ血糖値が上がります。すると膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、血糖値を下げようとします。健康な人なら、十分なインスリンが迅速に分泌され、食事の1時間後くらいに血糖値がピークになるものの、2〜3時間後には下がって元に戻ります。健康な人の空腹時の血糖値は70〜100㎎/㎗で、食後の血糖値は70〜140㎎/㎗に保たれているのが正常な状態です」
ところが、糖質が多いものを食べると、血糖値に乱れが……。
「糖質が多いものを食べると、急激に血糖値が上がり、しばらくするとその反動で血糖値が急激に下がります。このように血糖値の上下動が大きくなることを、“血糖値スパイク”と言います。食後血糖値が140㎎/㎗以上になったり、食前と食後の血糖値の差が40㎎/㎗以上になる食事は、血糖値スパイクを招きます」
そしてこの血糖値が急激に下がる時に不調が発生。
「血糖値が急上昇した後、急激に下がった時に起こるのが、強い眠気や全身倦怠感や、強い空腹感です。これでは仕事のパフォーマンスも落ちてしまいます。血糖値スパイクを起こす食べ方は、太りやすくもなるので要注意」
これを防ぐために大事なのは血糖値を急上昇させない食事。
「血糖値を上昇させるのは糖質だけなので、糖質の摂取量を減らすことです。ただし全部抜く必要はなく、とる量を減らし、糖質が多い食品を控えればOK。その代わり血糖値を上げないタンパク質や脂質をしっかりとりましょう」
また、自分で血糖値を測ってみるのもおすすめ。
「通常、健康診断で測るのは空腹時血糖値で、100㎎/㎗未満なら正常で、126㎎/㎗以上は糖尿病と診断されます。ただ、空腹時血糖値より先に異常が出るのが食後血糖値で、140㎎/㎗以上が続くなら糖尿病予備軍。健康診断では食後血糖値は測らないので、自分で食後に測ってみるのがおすすめ。最近、自分で手軽に血糖値を測れる器具も登場しています。何を食べると急激に上がるか認識できるので、測ってみてうまく血糖値コントロールをしてみて」
①究極の理想
食事してもほぼ血糖値は変わらない
②正常値
食後2時間で血糖値の上昇が 140㎎/㎗におさまる
③血糖値スパイク
食後に血糖値が140㎎/㎗以上に急上昇、その後急降下
食後も血糖値がほぼ変わらないのが◎。140㎎/㎗以上に上がるのはNG!
理想的な血糖値は上のグラフの①のように、食事をしても血糖値がほぼ変わらない状態。また、②のように食後2 時間で血糖値の上昇が140㎎/㎗におさまるなら正常。③のように食後に140㎎/㎗以上に急激に上がると、その後、急降下し、血糖値スパイクを起こす。
糖質を多くとり、血糖値が急激に上がると、その後に急降下する。この時に、強い眠気や倦怠感、強い空腹感などの症状が起きやすいため、仕事の集中力が落ち、パフォーマンスが下がってしまう。シャキシャキ動くためには、糖質の摂取量を抑えて、血糖値スパイクを起こさない食事を心がけることが大事。
②仕事がデキる人が実践する集中力を高める食事術
研究者 アントレプレナー 玉城絵美さん
血糖値を急上昇させない食事で、集中力が続くように
「血糖値を気にし始めたのは、ハードワークで空腹を感じにくくなったことや、食後に眠気を感じて仕事への集中力が落ちてしまったから。そんな時、血糖値が集中力に影響することを知り、自分で測ってみようと、アプリ『Libre Link』を使うことにしたんです。それでわかったのが、好きでよく食べていたカップ焼きそばを食べた時に血糖値が最も急激に上がり、その後、急降下した時にすごい眠気に襲われていたことです。ふだんから、カップ焼きそば以外にも糖質をとりすぎていたことに気づきました。それに対して、肉を最初に食べると血糖値が急上昇しないことがわかったので、最初に肉、次に野菜、最後に炭水化物(糖質)の順で食べるようにしました。私の場合、特に鶏肉が血糖値が上がりにくいようなので、長時間集中しないといけない仕事の前は、鶏肉のスープをとるようにしています。温かいものだと早食いして血糖値が上がるので、温かすぎない状態でゆっくりと食べます。長時間の講義や講演会の合間には、以前はチョコを食べていましたが、血糖値を急激に上げないナッツやプロテインバーに変えました。こんな食事にしてから、集中力が夜まで続いて、判断も迅速になり、まわりの人への配慮もできるようになりました」
1日の血糖値が安定した状態に
血糖値コントロールをするようになってからの玉城さんの1日の血糖値のグラフ。大きく上下することなく、平均値75と安定した状態。食後の眠気もなくなり集中力も持続。
■シャキシャキ動ける食事の基本3つ
血糖値スパイクを防ぐための食事の基本は、以下の3つ。これを実践するだけで、集中力が持続し、シャキシャキ動けるように!
「1 食の糖質量が40g以下なら血糖値の急上昇が抑えられます。ただし糖質を極端に減らすのもよくないので、1 食の糖質量を20〜40gに抑えましょう。ごはんなら茶碗半分で糖質量が約25gなので、まずは主食の量を半分にするのがおすすめ。間食も糖質量10gまでならとってOKなので、1 日の合計糖質量を70〜130gにするのを目標に」
※糖質とは炭水化物から食物繊維を除外したもののことです
【 ミルフィーユポイントはここ! 】
「糖質を減らすぶん、たっぷりとるべきなのが脂質とタンパク質。これらは血糖値を上げないのでたくさん食べてOK。肉などの動物性油脂を多くとると動脈硬化などを招くのでは? と心配かもしれませんが、これは近年、医学的に否定されています。タンパク質の理想の摂取量は1 日に自分の体重(㎏)×1.2g。これを目安にとって」
「単純に主食を半分に減らすだけだとおなかがすいてしまうので、おかずをおなかいっぱい食べるのが大事なポイント。いも類など糖質が多めのものに気をつければ、肉や魚や野菜などのおかずはたくさん食べてもまったく問題ありません。満腹中枢が刺激されれば、満腹感が長続きして、空腹感が起こりにくくなる効果もあります」
③血糖値を安定させる食生活の5つのポイント
POINT①
食べ順は「炭水化物ラスト」で
「血糖値の上昇を緩やかにするには炭水化物を最後に食べるのもポイント。肉や魚などのタンパク質や、野菜や海藻類などの食物繊維が多いものは血糖値の上昇を抑えるので、これらを最初に食べて」
POINT②
野菜も積極的にとって。ただし糖が多い野菜には注意
「野菜には、血糖値の上昇を緩やかにする食物繊維が多いので、積極的にとりましょう。ただし、野菜の中には糖質が多いものがあります。例えば、いも類、かぼちゃ、とうもろこし、れんこんなどは糖質が多いので、なるべく控えめに。野菜ジュースは、糖質が多い野菜や果物も多く含んでいることが多く、血糖値を急上昇させるので要注意です」
POINT③
おやつは「糖質10g」を目安に
「おやつは1 日に糖質量10gまでなら食べてOK。例えばハーゲンダッツのアイスは1個で糖質量20g前後のものが多いので半分なら食べてOKです。商品の袋などに記載された炭水化物や糖質の量をチェックして食べましょう。和菓子は材料がほぼ糖質で血糖値を急上昇させるので注意。卵や生クリームなどのタンパク質と脂質が多く、小麦粉が少なめのシュークリームなどは血糖値が急上昇しにくく◎」
POINT④
食後に軽く歩くだけでいいので、運動する
「運動をすると筋肉でインスリンのような作用が働き、血糖値が下がります。血糖値が上がるタイミングは食後なので、この時に15分ほど歩く程度でいいので運動をするのが効果的。筋肉が増えることで糖の取り込み口が増え、血糖値が急上昇しにくい体にもなります」
POINT⑤
お酒は意外とOK
「お酒は食後血糖値の上昇を緩やかにするので、飲みながら食事をすると血糖値の急上昇を抑えられます。お酒にも糖質が含まれるので、お酒と食事の糖質量を1 食20〜40gに抑えればどんなお酒でも飲んでOK。焼酎やウイスキーなどの蒸留酒は低糖質ですし、ワインなら辛口のものが◎。ビールやサワーは糖質ゼロのものを選ぶとよいでしょう。カクテルや梅酒など甘いお酒は飲みすぎに注意」
ついやりがち&食べがちだけど…
【要注意の食事&食品】
健康やダイエットにいいと思って積極的にとっているものや、ふだんの何げない食べ方が、実は血糖値を急激に上げている場合が! 左のような食事や食品は、血糖値を急上昇させ、血糖値スパイクを起こしやすいので、なるべく控えるのが正解。
「朝食を抜くと昼食をとった時、血糖値が急上昇。またスムージーだけの朝食、在宅時にとりがちな麺だけランチ、おにぎり&野菜ジュースだけのパパッとランチは血糖値を急上昇させるのでNG」
「ドライフルーツは生のフルーツよりさらに糖質が多め。また、健康によいイメージがあるグラノーラ、甘酒、オートミールや、カロリーの低いイメージがある春雨ヌードルや和菓子も高糖質です」
④賢く実践するために血糖値コントロールの疑問を解消
☆答えてくれたのは・・・
北里研究所病院 糖尿病センター長 山田 悟先生
Q.集中力維持を気にしなくてよい休日なら、甘いものを思いきり楽しんでもOK?
↓
A.むしろ、毎食楽しむ気持ちで調整を
「1食の糖質量を20〜40gに抑えていれば、おやつは糖質量10gまでならとってOKです。それ以上に甘いものが食べたい場合は、1食の糖質量の20〜40g内に甘いものを入れればよく、 主食を抜くなどして合計の糖質量を40g以内におさめればいいのです。休日にかぎらず、うまく糖質量を調整して楽しんで」
Q.集中力を維持するために、 おすすめの間食は?
↓
A.ナッツやチーズがおすすめ
「糖質が少なく、タンパク質もとれる、ナッツやチーズがいいです。また、ヨーグルトも高タンパクなので◎。ただし低脂肪のものより、脂肪が普通に入っているもののほうが血糖値が上がりにくいのでおすすめです」
イタリア産白トリュフオイルと、黒トリュフ入りゲランドの塩で味つけしたミックスナッツ。成城石井 ロカボナッツ2種のトリュフ香るミックスナッツ 230g¥1,394/成城石井
Q.よく嚙むと、血糖値は上がりにくいってほんと?
↓
A.本当です!
「よく嚙んで食べるほど血糖値が上がりにくくなります。例えばあまり嚙まずに食べてしまうお粥より、同じ量の普通のごはんのほうが、咀嚼回数が増えるため血糖値の上昇は緩やか。ひと口につき30回以上嚙むのが理想的」
Q.糖尿病になりやすい家系で、血糖値が高め。体質は変えられない?
↓
A.生活習慣で、「体質」は乗り越えられます!
「糖尿病になるのは遺伝も関係しますが、それだけでなく生活習慣も大きく関係しています。実は、食事に気をつけることで体質は乗り越えられます。血糖値を急上昇させない食事や運動を心がけて糖尿病を防ぎましょう」
Q.食べ物以外で、血糖値が上がることはある?
↓
A.ストレスを感じると上がります
「ストレスも血糖値を上げる要因です。ストレスがかかると食前の血糖値が110㎎/㎗以上に上がることもありますし、会議の前などに血糖値が上がることもあります。ストレスはうまく発散するようにしましょう」
Q.食後血糖値は、病院でしか測定できない?
↓
A.ドラッグストアや薬局でも測定可能
「最近、ドラッグストアや薬局で、500円程度で血糖値を測れるところがあるので、店頭で確認し、食後に測ってみるのがおすすめ。また、『LibreLink』のように、センサーとアプリを連動させて血糖値をいつでも手軽に測れるアイテムも登場しています」
LibreLink
約8,000円で購入できるセンサーを上腕に装着すると、この無料アプリでいつでも血糖値を測定可能。本来は糖尿病患者のかた向け。
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