坪田あさみ エディター・ライター
「家具選び」は「ライフスタイル」そのもの。
どんな人生を送りたいかを考えるきっかけに
みなさんこんにちは、エディター坪田です。普段はファッションページを担当している坪田ですが、プライベートでは大のインテリア好き。ニューオープンがあると聞けば見に行き、空き時間があればショップに立ち寄るのが日常。店員さんとの情報交換も大好き。我が家のインテリアはあえて統一したテイストでまとめないMIXスタイルが信条なので、いろいろなショップを見て回っています。むしろファッションよりも情熱があるのでは?と思うほど(笑)。
本業ではインテリア専門ではありませんがインテリアをこよなく愛する坪田が、新たに全3回の短期連載をさせていただくことになりました。短い間ですが皆様どうぞお付き合いください。
コロナ禍を経てインテリアに
こだわりたい人が増えています
さて、季節はちょうど新生活がスタートする春。引っ越しなども多い時期ですし、コロナをきっかけにお家時間を充実させたいと考えている人も多いのではないでしょうか?
「どこで家具を買いますか?」「お気に入りのショップを教えてください」とリアルでもSNSでもよく質問されるので、今回は私が足しげく通う「リアルに買っているお気に入りの店」という軸でご紹介したいと思います。もちろん素敵な家具を眺めるために行く店もありますが、今回そちらはあえて省略。リアルに買っている9店舗のみを厳選。好みが偏ったチョイスとなっていますが、そこは雑誌ではないのでお許しくださいませ(笑)。
連載第一回でご紹介する3店舗は、デザイン、製作、販売、メンテナンスに至るまでワンストップで行っている2店と、そんな家具に似合うライフスタイルショップ1店です。
ワンストップ店の場合、どういうメリットがあるかというと、サイズのオーダーやファブリックが自由に選べたり、年月を経て家具が傷んでしまってもメンテナンスやパーツの交換をしていただけるなど、相談できるスタッフや職人さんがいるので長く面倒を見てもらうことができます。一生使う可能性のある家具だからこそとても重要な部分でもあります。
さっそくご案内していきましょう!
File.01「スタンダードトレード」@横浜
まず、最初にご紹介するのは横浜にある「スタンダードトレード」です。
▲ファサードからもう「好き♡」が詰まっています。元町・中華街駅から徒歩3分。元町の落ち着いた住宅街を横目に坂を登った場所にあるガラス張りの店舗。外観からテンションが上がる素敵な店です。
▲カラフルなレザー張りのスツールがお出迎え。スツールは個人的に好きなアイテムで、座るのはもちろん、物を置いて飾ったり、踏み台にしたりとコンパクトながらいく通りにも使えて便利です。我が家にはいろいろなスツールがありますが、こんな風に色を並べても可愛いですね。
2003年に学芸大学にオープンした最初の五本木店からちょいちょいのぞいていたスタンダードトレード。二子玉川に移転して広くなった玉川店も(私は実家が二子玉川なので帰る度に立ち寄り)、さらに2018年に移転した横浜の山手ショップまで追いかけ続けている店です。最初の五本木店を彷彿とさせる内観は落ち着いたムードが漂っています。
▲広すぎたり物が多すぎる店舗は疲れてしまうので、私はこのぐらいの広さが好き。一日中ここで過ごしたいほど! 家具の置き方、アートの飾り方、照明、自然光とのバランス、ファブリックの色使いなどまさに理想のインテリア!
▲創業時から人気家具のひとつがナラの無垢材を使用したダイニングテーブル。脚が少しテーパードした洗練されたたたずまい。その美しさにうっとりです。
▲スリスリしちゃうほど好きな木の感触。スタンダードトレードの家具はラッカー塗装が施されているので、耐久性と美しい艶が特徴です。水拭きOKなので、輪じみなども気にすることなくガンガン日常使いできるのがいいですね。
▲基本受注生産なのでサイズオーダーが可能。部屋が広ければこんな長いテーブルを置きたいなぁ、と妄想が広がります。
食事をするのはもちろん、ちょっとした書き物やリモートワークもダイニングで、という人は多いのではないでしょうか? そんな人におすすめなのが、スタンダードトレードのダイニングテーブル。シンプルゆえに木目の美しさが際立っています。天板の角のなめらかさや、絶妙に細くテーパードされた脚など、いたるところを撫で回したくなります! シンプルで温かみがありながら凛としたムードが漂うデザインも魅力です。
さらにお皿やお料理を置くと美味しそうに引き立てくれるのも好きな理由。お料理がとても映えるのです。コーヒーカップをちょっと置いただけでも絵になると思いませんか?
▲カフェと間違えて入ってくる人もいるそう。こちらの店舗にはそんな心地の良い時間が流れています。
本物の木の家具は、乾燥で反ったり湿度で膨張したりするので、季節が変わる前にお手入れをするのがおすすめです。こちらではそうしたお手入れグッズも販売されています。
▲(左)オレンジオイルから生まれたクリーナー。乾燥を防ぎながら汚れを落としてくれます。(右)蜜蝋を使った高品質のワックス。家具の自然な光沢を保ってくれます。
▲ワックスの塗り方をスタッフの方が丁寧に教えてくださりました。私もさっそくこちらを購入。
この連載でご紹介するどの店もそうなのですが、素敵なインテリアショップのよいところは、レイアウトの仕方やバランスが素晴らしくとても勉強になるということ。これはリアルでないと体感できない部分。店を訪問する楽しみのひとつでもあります。
▲窓辺にしつらえたワークスペース。こんなお部屋だったら朝起きてすぐにパソコンを開く気になりそうですね。
▲ダイニングテーブルの横に小さめの棚を置くのも素敵。食器や料理本を並べたりと実用性も備えられます。
▲ソファも充実しています。実際に座ってリビング気分を満喫。2〜3人がけのソファよりも、1人がけの方が日本の住環境で使いやすいと、先日インテリアスタイリストさんと対談させていただいた時に教えていただいたのですが、それ以降ずっと探しています。この包まれるような感触が最高にくつろげます。リラックス度は高いけどだらしなく見えないのが、一人がけソファのよいところ。
私が家具選びで大事にしているのは、「木そのものの上質さ」、「時間がたっても飽きのこない普遍的なデザイン」、そして「品質に合ったバランスのよいお値段」の3つが揃っていること。スタンダードトレードはまさにこのトライアングルが完璧。いつ行っても落ち着いた雰囲気で欲しいものがいっぱい。リアルで目にすると、すべての家具を揃えたくなる魅力にあふれています。
File.01
SHOP DATA
スタンダードトレード
住所/神奈川県横浜市中区山手町100
電話/045-263-6555
営業時間/9:00〜18:00(営業時間変更中)
定休日/水曜
File.02 「パシフィックファニチャーサービス」@恵比寿
続いて2店舗目は恵比寿に20年以上も店を構える名店「パシフィックファニチャーサービス」へ。
▲外観から圧倒的にしゃれているこちらの店舗。以前はよくファッションシューティングのモデル撮影でも使わせていただきました。
恵比寿駅から歩いて5分という立地の良さもあり、一度は立ち寄ったことがあるという人も多いのではないでしょうか? 自社デザイン・生産によるオリジナル家具の草分け的存在です。素敵なお宅を訪問するとかなりの高確率でこちらの家具と出会えます。つまりおしゃれな人たちの間違いない定番だということ。上質さも同時に手に入ります。気づけば私も15年以上通う店です。
店内に一歩足を踏み入れると、まるで外国映画の中に迷い込んだような気分になれます。
▲ゆったり眺められる2フロアに分かれた店内。温かみのある木製家具と、冷たい質感のインダストリアルなセレクトアイテムのミックス感が大好き。決めすぎない力の抜けたムードがこちらの店舗の最大の魅力です。有機的なグリーンの組み合わせや配置の仕方も参考になります。
パシフィックファニチャーのすごいところは、創業した34年前からほとんど家具のデザインが変わっていないこと。つまり新作がほとんど出ておらず、1989年当時からこのスタイルがほぼ完成されていたということです。
今でこそしゃれた家具屋はたくさんありますが、30年以上前から木の質感にこだわり、しゃれたオリジナル家具を販売し続ける会社はなかなかないのでは?(婚礼家具を一式買うなんてことがまだまだあった時代です)
そのため30年以上前に買った人がお直しやファブリックの交換にいらっしゃることも多いそうで、そうした長いお付き合いができる店を持っていること自体素敵なことですし、またインテリアを楽しむひとつの方法だと思います。自分の趣味を理解してもらえると、次に買う家具や雑貨についてもよりよいアドバイスを得られます。
▲パシフィックファニチャーを代表する名作「オペレーションテーブル」。異なるデザインの椅子を組み合わせることで、こなれた雰囲気を演出。ダイニングテーブルとしてはもちろん、仕事デスクや作業テーブルなど、ライフスタイルや用途に合わせて好きなように使うことができます。私はこうした「使い回し力」(服で言うと着回し力)のあるシンプルな家具がとても好きです。引越をしたりインテリアの気分が変わっても、ずっと使い続けることができます。
創業当初から変わらず販売され続けている家具の中でも特に知られているのが、天板と脚の取り外しができる「オペレーションテーブル」。小学校などの教室の床材として使われていたパーケット材をテーブルとして使用した画期的なデザイン。「床材をテーブルに使用するなんて!」と発売当初は世間から相当驚かれたのではないかと想像します。
今も変わず販売されているこのテーブルをおしゃれなお宅でよく目にしますが、どんなインテリアや家族構成であっても自然と馴染んでいて、それでいて独特の存在感を放っています。まさに名作ですね。
▲部屋の片隅に置いてもさりげなくよいムード。小さめサイズも使い勝手がよさそう。
▲デスクランプやフロアライトなど種類がいくつかあるジェルデランプも、パシフィックファニチャーで昔から販売している定番商品。オペレーションテーブルとも相性がよく、我が家にもこちらで買ったランプがあります。
単に家具を売るだけではなく、ライフスタイルの質を豊かにすること提案してきたパシフィックファニチャー。こちらの店舗ではコロナ禍以前は、映画の上映会やトークイベント、写真展なども行ってきました。今は時節柄そうしたイベントはしていませんが、それでも店内には素敵なライフスタイルへの提案がさりげなく演出されています。
どうですか? この家具たちに囲まれて生活している人は、普段どんな映画を見て、どんな服を着て、どんな音楽を聴いて、どんな仕事をしているのか。そんな妄想が広がりませんか?
私にとって“よい家具屋”とは物を売るだけでなく、その先の生活を感じさせてくれる店。そして店を巡った後は、「自分はどんなライフスタイルを送りたいだろうか?」と考えさせてくれます。すると自分にとって必要な家具が自然と見えてくるのです。
家具はリアルな生活に密着しているからこそ、知らず知らずのうちに人生に大きく影響を与えるものだと思います。ライフスタイルに合わせた家具を選ぶのもいいですし、逆に「こんな人生を送りたいからこの家具を選ぶ」と言う方向性もありではないでしょうか?
そんなことを最初に教えてくれたのはパシフィックファニチャーだったな、と今回の取材で改めて思い出しました。
File.02
SHOP DATA
パシフィックファニチャーサービス
住所/ 渋谷区恵比寿南1-20-4
電話/03-3710-9865
営業時間/(平日)12:00〜19:00(土日)11:00〜19:00
定休日/火曜
File.03「LOST AND FOUND TOKYO STORE」@代々木上原
家具屋を2軒巡った後は、そんな家具と相性のよい雑貨探しに出かけましょう。まさに家具と雑貨は切っても切れない関係ですから、素敵な家具を購入したら、次はライフスタイルショップが定番の流れになります。
▲昨年11月にオープンしたLOST AND FOUND TOKYO STOREは、創業113年の老舗洋食器メーカー・NIKKOが運営するライフスタイルショップ。代々木公園から徒歩圏内の奥渋エリアに位置するので、休日のお散歩コースにも最適です。
▲「Roundabout」「OUTBOUND」の店主である小林和人さんがセレクターと聞くと、それだけで一見の価値ありです。国内はもとより世界中から集めた800点もの日用品が並びます。NIKKOの食器類を一堂に見られるのは東京ではここだけ。
私は普段から生活感が出るもの(例えば掃除道具や洗剤、生活雑貨など細々したもの)こそ意識して物選びをしないと、すぐに生活臭が漂ってしまうから、安いからといって適当なものを買わないように注意しています。
どんなに上質でおしゃれな家具を揃えても、生活していればこの生活臭というのは払拭できず、生活空間は残念なものになってしまうからです。
例えばわかりやすく言うと100均で買った雑貨があふれかえった部屋にいくら素敵な家具を置いたところで、しゃれたインテリアを作ることはできないと言うこと(あくまで我が家の場合です。丁寧な暮らしをされている方なら大丈夫かもしれませんが)。
とはいえ日用品ですからあまりに高額なものやタフに扱えないものは苦手。だから私は質実剛健な機能と美しさを備えた逸品が欲しいのです。
そんな私にとってLOST AND FOUND TOKYO STOREはまさに生活雑貨パラダイス! テンションが上がる空間です。
▲気を抜くと生活感たっぷりになってしまいかねない日用品も、ひとつひとつこだわったセレクトで生活空間を素敵に変えてくれます。
▲やかんなどのステンレス製品は新潟県燕市で作られているものを数多くラインナップ。
▲アウトドアで人気のステンレスケトルはベルモントというブランドのもの。様々な機能ゆえにこの形状。とても便利で室内で使う人にも大人気なのだそう。
▲理科の実験室にありそうなビーカーや試験管なども充実。お花を生けたりペンを立てたり、使い方は自由自在。
▲ブラシ類は100アイテムも揃っているという圧巻のラインナップ。初めて見るブラシもたくさん。 様々な用途のブラシは見ているだけでも楽しい!
▲フライパンやカッティングボード、亀の子束子さえもおしゃれに見せる店内。並べ方や組み合わせ方でも見慣れた日用品が違って見えてきます。ここに来ると「編集力」ってすごいなあと圧倒されます。
店内にはキッチン雑貨やテーブルウエア、バスグッズなど、あらゆるものが並んでいて見応え十分。
例えば収納棚に隠してしまいそうな布団(ラグ?)叩きやお掃除ブラシなども、機能とデザイン性が両立していれば、思わず見える場所にディスプレイしたくなります。職人さんが丁寧に手がけた日用品は、決して使い捨てではなく、長く大切に使いたいという気持ちになりますし、見た目も機能美というにふさわしいものばかり。
▲NIKKOの定番の食器が400点ほど並ぶショールーム兼ストアが店内奥のスペースに。こちらも圧巻の品揃え。
こちらの店舗を運営するNIKKOは、ホテルやレストラン向けの食器を作っている老舗メーカー。これまでトップシェフたちが愛用してきた「NIKKO FINE BONE CHINA」の中から家庭でも使いやすいデザインなどに再編集した21種類の新コレクション「REMASTERED」も新たにラインナップ。ちょっとした縁の幅や深さ、サイズ感など、料理が映えてお手入れしやすいシンプルなデザインは、家庭でも使いやすく私も大のお気に入りです。
最近は作家性の強い食器が人気ですが、私は普段使いするなら業務用的なアノニマスなデザインが好み(我が家のキッチンも飲食店の厨房を意識しているので)。タフに扱っても丈夫で、和洋中どんな料理にも合い、長く使って飽きないこと。そして壊れたら同じものをまた買い足すことができる、そんな考え方の人にぴったりなラインナップとなっています。
▲人気アートディレクター平林奈緒美さんがNIKKOのアーカイブから再編集した「REMASTERED」シリーズ。オーバル皿は大人気で常に品薄だとか。ちょっとしたサラダや前菜がしゃれたビストロメニューに見えそうです。
話は変わりますが、人にプレゼントをする時どんなものを買いますか? 自分用には買わないような特別感のあるものをプレゼントするという人が多いのではないでしょうか。 でも私はそうではなく、普段から自分ががっつり使っている“激推し”なものこそ人にあげたいタイプ。こちらのお店ではそうしたプレゼントにもちょうどいいグッズが充実しています。オリジナルの布袋もとても可愛いので、これに入れてプレゼントしたい。自分もこれでもらったら絶対うれしいなあ!
▲平林奈緒美さんがロゴなどデザインを手がけるオリジナルの布袋。袋だけでも購入することができます。
▲ハンドソープと爪ブラシセットもプレゼントによいですね。いくつあっても困らない今の時代ならでは。
▲ちょっとしたおもてなし料理などにも映えるカッティングボード。我が家では普段ワインを飲む時のつまみをちょこちょこ乗せています。スーパーで買ったチーズやお惣菜みたいなものでも美味しそうに見えます。
▲小さなビーカー類はいくつあっても困りません。価格も安いのでなんでもない日のプチプレゼントに。我が家では玄関に置いて、荷物受け取り時の印鑑を入れたりしています。
File.03
SHOP DATA
LOST AND FOUND TOKYO STORE
住所/渋谷区富ヶ谷1-15-12
電話/03-5454-8925
営業時間/11:00〜19:00
定休日/火曜
いかがでしたでしょうか? 3店舗を一気にご紹介いたしました。気になる物があれば、ぜひお店へ足を運んでみてくださいね。
今はネットでも購入できるものが多いですが、まずはお店の雰囲気が自分に合うか、また家具については木などの質感を知るためにも、実際にお店に行って触ってみるのがおすすめです。たくさん見て触るほど値段と品質、デザインのバランスが肌感覚でわかるようになってきます。
第2回では一期一会の出会いが重要なヴィンテージショップ3店舗をご紹介します。どうぞお楽しみに!
次回更新は3月23日(水)です。
EDIT&TEXT/ASAMI TSUBOTA
【編集部注】
掲載されたアイテムはすべて取材時のものです。商品へのお問い合わせは各店舗までお願いいたします。
▼Vol.2はこちら
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インテリアを格上げするヴィンテージ家具【エディター坪田あさみが案内する 大人のための おしゃれインテリアショップ巡り vol.02】
エディター坪田がお気に入りのインテリアショップを案内する大好評短期連載第2回は、ヴィンテージ家具を扱う3店舗をご紹介。個性豊かな店主が営むセレクトの数々は、インテリアを格上げしてくれる力があります。