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働くママである以上、母なくして生活は成り立たない【小説・じゃない側の女~Side3あきらめない側の女 Vol.1】

【連載第1回】畠山結花(はたけやま ゆか)43歳 ゼネコン勤務の一級建築士。同業のハイスペック夫と2人の子供、瀟洒な一軒家。「すべてを手に入れて」順風満帆な人生を突き進んでいるように思われるが…。(全14回)
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物理的に肉体のリミットがある妊娠・出産、つまり子供を持つことについては、既婚だろうが未婚だろうが、ある歳になれば誰だって思いをはせて不思議ではない。そんな当たり前のことにいまさらながら気づかされた。独身の理沙がAMH検査を受けたと聞いて「何故その必要があるの?」とすぐに聞いてしまった私の発言は、今から思えばイケてなかった。それを子を持つ女の無神経と言われたら、ごめんなさいと思う。

子供が出来てからというもの、理沙と真木と会えるのも年に数回。生まれたての頃は家に遊びに来てもらい、リビングに寝かせた子を目で追いながらの食事がほとんどだった。かたや二人は時に舞台を観たり、ライブに行ったり、たまの週末には箱根や軽井沢など緑きらめく心地よさそうなホテルで充電していることは、SNSで知るともなく知っている。

隣の芝生は幾つになっても、どこまでいっても青いのだろう。あたしの足元は人工芝か?と思うくらいその二人の時間を、自由を、猛烈にうらやましいと思うこともあった。いつ会っても100%美しく整えている理沙のネイルひとつみてもそうだ。彼女はこれも仕事のうちだというが、ジェルでもサロンに行けば2時間かかる。スカルプならもっとだ。そんな時間ひとつ、私にはなかなか作れなかったこの数年。本音を言えばシミ取りとかレーシックだってしたいけど全くもって余裕がない。とにかく時間がない。せっせと積み上げる時短のひとつは昼休みの有効利用。歯医者、眼医者、美容院。月2回の白髪染めは絶対に外せない。移動時間だって節約対象。駐車場代がかかっても、駅まで車を飛ばして作るその5分10分が、今の私にはこの上なく貴重なのだ。

「結花は何でも持っている」という彼女たちこそ、今の私にはどうあがいてもなかなか作り出せない「時間」という宝物を持っている。それが眩しい。

“真木が離婚した。出来たら顔だけ見せてハグしてくれるとありがたい”

滅多に頼みごとをしない理沙から、電報みたいなLINEが来て、今日は子供たちを母に預けて飛んで来た。もとい今日「は」じゃなく今日「も」が正しいか。実際母なくして私の生活は成り立たない。上の子が学童に行かない日は、母が習い事に送り迎えしてくれる。下の子の保育園のお迎えは自分で極力頑張るものの、そのままうちから3分の実家に出向いて、みんなそろって晩御飯をご馳走になり、お風呂まで入らせてもらうという日が週5日程。事実上実家に寄生して生活しているといっても過言ではない。ほんと母さん様様…。
 
長女がだいぶ大きくなって「やっとババもお役御免」と思った矢先に下の子が生まれたので、孫が増える喜びよりも先に、思わず「ゲーッ」と声が出たという。40過ぎて体力の衰えを感じる私の何倍も、70過ぎた母の体に孫の世話は重くのしかかる。たまの世話なら喜びでも、毎日となるとただの試練。お気持ちよくわかりつつ…「働く女」である以上、この寄生生活はやめられない。
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    植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

    ■Side1結婚してない側の女(全14回)を読む >

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    谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。

    ■Side2産んでない側の女(全15回)を読む >

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