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麗しの美貌を持ち、なんでも持ってる40代女【小説・じゃない側の女~Side3あきらめない側の女 Vol.2】

【連載第2回】畠山結花(はたけやま ゆか)43歳 ゼネコン勤務の一級建築士。同業のハイスペック夫と2人の子供、瀟洒な一軒家。「すべてを手に入れて」順風満帆な人生を突き進んでいるように思われるが…。(全14回)
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「畠山結花は中高6年間、成績は常に学年トップ5以内をキープ。石田ゆり子似の美貌を持ち、建築学科の最高峰と言われる某大学に一発合格。卒業後は日本のトップゼネコン大手にストレートで入社。海の近くの一等地に大学時代の同級生である旦那と共に設計した家を建て、子供二人。現在も一級建築士として活躍中、ってこれだけ聞くと、なんでも持ってるまさにパーフェクトヒューマンにしか聞こえないよね?」

正直、理沙のその説明のどこかが間違っているとは思わない。けれど、私だって日々ここに至るまでに私なりの努力はかなりしてきた。そして今も。

外人ばりにコミュニケーション全般激しめの理沙や、情に厚く喜怒哀楽がきちんと伝わる真木と違って、私は思っていることがたまたま顔に出ないから、無機質だのクールな天才肌だの言われてしまうだけ。汗や涙、苦労や努力が、なぜか全く顔に出ないだけなのだ。隠しているわけじゃなくて単に出ないだけ。そういえば中高時代、ミスポーカーフェイスとか菩薩さまとか、なんだそれというあだ名をつけられることも多かった。

とにかくこの顔つきのせいか、昔から嫌われるようなことなんて全くした覚えがないのに、地味な嫌がらせや、意味不明のやっかみも受けてきたようにも思う。     

中学高校でいえば、連日教科書やノートが隠されたり、捨てられることが続いた時期があった。幸か不幸か周りからは明らかに一目置かれていたはずなのに、実は教科書が連日行方不明になるんです…なんて事実を、当時誰にも言えなかった。なぜか真木や理沙にすら言えなかった。言えば理沙はなんとかして犯人を見つけボコボコにつるし上げただろうし、真木もきっと理沙以上にそんな卑怯な輩を許しはしなかっただろう。それでも私は言えなかった。なんだかんだで人気者だった二人には、言いたくなかったのかもしれない。

嫌がらせはあの頃だけでなく今だってある。先日も買ったばかりの車のドアに、いつの間にかクギか何かで彫られたような派手な傷をつけられてしまった。私、誰かに恨まれるようなことしただろうか。してるんだろうか。

「結花の暮らしぶりを見るとね、あーいいなーって思ってやっかんじゃう人がどれだけいても驚かないけど」

真木が言う。

「大体、ゆり子に似てるっていう時点でやっかまれても仕方ないよね。あたしなんてアンジェリーナ・ジョリーって言われるんだから、それどうよ?」

「うわ似てる! 無駄に濃いとことか、過度にテラテラさせてる唇とかまさにジョリー」

「殺すよ、真木」

首を絞めようとする理沙と真木の二人がケラケラと笑いながらじゃれあう姿を見て、私とこの二人の違いってなんなんだろう、と素朴に思う。
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    植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

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    谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。

    ■Side2産んでない側の女(全15回)を読む >

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