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40代で小さい子供2人を抱えて働くことに【小説・じゃない側の女~Side3あきらめない側の女 Vol.4】

【連載第4回】畠山結花(はたけやま ゆか)43歳 ゼネコン勤務の一級建築士。同業のハイスペック夫と2人の子供、瀟洒な一軒家。「すべてを手に入れて」順風満帆な人生を突き進んでいるように思われるが…。(全14回)
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あ然とした。とはこのことだ。

真木と理沙は大笑いしながら喜んでくれたけれど、「妊娠の経緯だけ聞くと、結花って賢いのか馬鹿なのかわからないねー」とごもっともな感想を述べられた。当時誰より一番、私自身が私に対してそう思った。

会社の上層部には「本気でちゃんと仕事に戻りたいならどんな手段を使ってでも、出来るだけ早く戻れ」とまで言われてしまった。私も勝手だけれど、会社も勝手なことを言う。だけど何を言われても、仕事は絶対にやめたくない。今回も極力最速で戻らねば…。前回は30代前半での妊娠出産。あれから7年以上経っている。前と同じは厳しかろう。体にどれほどのムチを打てば同じくらい短期間で戻れるものだろうか…産む前からあれこれ復帰のシミュレーションを続ける私に、「40代で0歳児を抱えて、なぜまだ頑張らないといけないのか理解に苦しむ」と旦那の両親にはそろって言われてしまった。

いけないのか、と言われればいけなくないとは思う。いけないから戻りたいんじゃない。やりたいから戻りたいのだ。

本音を言えばこの歳だから、体に打たなくていいムチは打ちたくない。無茶しなくても「ほどよく」働けるものならそうしたい。でも会社に、ほどよい選択肢なんてものはない。

子供はいないにしても、同じように体力気力的に20代30代よりは下降が否めない同じ年の真木だって理沙だって、できることなら「ほどよいポジション」で「ほどよく働きたい」と思っていることだろう。でもきっと彼女らだってそんな「ほどほどに、ほどよい」選択肢なんて与えられていないと思う。大体そんなことなら私たちは日々こんなに疲労したり消耗したり悩んだりしていない。「男はみんなそれが当たり前なんだ」と働く男性諸氏はいうかもしれない。でもあなた、毎日子供にご飯作らないでしょ? お風呂いれないでしょ? 寝かしつけたりもしないでしょ? たまに可愛がるのと毎日密着して育てるのでは全く次元が違うのよ。一緒にしないで。とにかく40過ぎて小学生と赤ちゃんの二人を抱えて働く母は、少なくとも私は本当に疲れていた。そしてそのストレス発散は、年々高まる疲労とイライラと共に徐々にエスカレートしつつあり、今や真木や結花も聞いたらひくレベルだと思う。

発散方法は主に買い物とお酒だ。お酒は毎日、帰ってコートを脱ぐ前に缶ビールを1本あけてしまうくらいで、半分依存症かもしれないと思う。今日だってこの店に到着してから、実はすでに相当飲んでいる。シャンパンがぶ飲みっていいんだろうか。買い物は最近だいぶ落ち着いたけれど、以前、旦那のカードまで使い込んだのがばれて「何かやばいことに手を出しているのでは?」と本気で疑われたことがある。言い訳ではないが、どれだけ疲れてもイライラしても、子供には当たらないと決めているだけに、お酒と買い物はとどまることを知らない。

人がうらやむほどに、一見ちゃんとして見えるらしい私にも、大きな声では言えない、子供には言えないような健全じゃない部分だってある。というか私は別に、「私は聖母です、聖人君子です」だなんて自己申告した覚えは一度もない。周りが勝手に、清く正しく美しい出来る女だと思い込んでいるだけなのだ。そんなの私の知ったことではない。

その健全じゃない部分っていうのは…と思った瞬間、プリっと“あれ”が“あそこ”から出るのを感じ、思わず「あ、出ちゃったかも」とつぶやいてしまった。
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    植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

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    谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。

    ■Side2産んでない側の女(全15回)を読む >

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