夫が出張のたびに「あれ」を利用していることを知ってしまった【小説・じゃない側の女~Side4満足させてもらえない側の女 Vol.2】

2017年8月19日
【連載第2回】須藤慶子(すどう けいこ)43歳 結婚14年目の専業主婦。夫が出張のたびに「とあるサービス」を利用していると知り、ショックを受ける。(全8回)
感情的になって泣いたり怒ったり震えたりしちゃうかもしれないから、家より周りに人がいる場所の方がいいと思って、さんざん悩んでやっとのことで彼にメールを送り、この店で待ち合わせして「よしっ!」と奮い立たせて足を踏み入れたら、どこかで見たような楽し気な女3人がケラケラケラケラ笑っていたというわけだ。

この人達があまりに楽しそうだったから、思わず最初の挨拶で「幸せいっぱいの専業主婦」風を装ってしまった。「主人と待ち合わせなの」なんて聞かれてもないのに。しかも焦ってとりつくろったから、普段言わない「主人」なんて言っちゃって馬鹿みたい。待ち合わせどころか私が呼び出しただけなのに、あたかもデートかのようなふりをしてしまった。こっぱずかしいことこの上ない。

店で一番楽し気な3人衆が「あの3人」だとわかるのに時間はかからなかった。なんとなく遠くにつながっているSNS上で彼女らの活躍や素敵ライフはうっすら知っていた。でもよもやリアルの場で会うことになろうとは。最初は「げ」と思ったが、今となってはこの人たちがいてくれて、よかったのかもしれない。だってもうこの店に来て3時間。つまり待ち合わせの時間を3時間も過ぎているということだ。ぽつんと一人で座っていたら、私耐えられただろうか。

実は。

結婚して14年になる。14年間、変わらず大好きで自慢で最愛の夫が「デリヘル」というものを利用していることを、先日ひょんなことから知ってしまった。そんな日本語があることも、この年になって初めて知った。彼は出張のたびに漏れなくその…デリヘルというものを楽しむのだという。その「漏れなく度」たるやすさまじく、例えば、取引先への接待がスナックやキャバクラ、カラオケ…と深夜まで続き、どろどろに疲れ果てて部屋に戻った日はさすがに元気がないので素直に寝るが、翌朝起きるやチェックアウトをちょっと延長してでも「モーニングデリ」と称して満喫してから帰ると聞いた。なんとも驚愕の事実。

数か月前、夫の事業部長昇格を祝って、部下の皆さんが飲み会を企画してくれた。よほど嬉しかったのだろう、相当飲んでべろべろに酔いつぶれた夫を、元気な部下の男子2名が彼の両肩を支えながら家まで送ってきてくれたことがあった。手ぶらで返すのも申し訳なく、家にあげて、一休みがてらもう少し飲んでもらってタクシーで帰らせよう、などと思ったのが失敗だった。イマドキの若者は遠慮と言う言葉を知らないのか、家にある夫の高級ワインを片っ端からあけていった。はじめこそ会社での夫の活躍ぶりを称えてくれていたのに、お酒が進むにつれ聞いてないこんなことまでべらべらべらべらと話し始めたのだ。そこで聞かされたのが衝撃の「モーニングデリ」だった。

何それ。そもそもそれは合法なの?違法じゃないの?ちなみに具体的には何するの?どこまでするの?私では満足できないってことなのだろうか。それともあの人、実は異常な性癖とかあるんだろうか。

その話を聞いて以来、数か月夫とはいたすことができない。このままそれが続くなら離婚した方がいいのか。でも私には離婚して一人で生活していく経済力などない。子供だってまだあきらめたくない。もうどうしたらいいのかわからない…と、悶々としているところに、この3人と遭遇し、あいもかわらず麗しくお金もキャリアも子供も家もなんでも持っている畠山結花が、この上既婚男性とそういう行為までしているなんて話がたまたま聞こえて来たから、猛烈にむかついた。

彼女が私の夫に手を出したわけではないけれど、とにかくどこまでもこの上なく幸せそうな畠山結花が今の私には気に入らなかった。この人、何でも持ってるのにまだ欲しがるのか! 他人の夫まで欲するなんて、石田ゆり子似だからって何やっていいと思ってんのか! どこまで強欲なんだ!と、猛烈に腹がたつのを止められなかった。
  • 植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

    ■Side1結婚してない側の女(全14回)を読む >
  • 谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。

    ■Side2産んでない側の女(全15回)を読む >

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