ビストロバーで待ち合わせして夫と深夜のデート?【小説・じゃない側の女~Side4満足させてもらえない側の女 Vol.1】

2017年8月18日
【連載第1回】須藤慶子(すどう けいこ)43歳 結婚14年目の専業主婦。夫が出張のたびに「とあるサービス」を利用していると知り、ショックを受ける。(全8回)
植田真木ちゃんの言葉はなぜか素直に聞ける。噛みつきたくもならずスっと入ってくるのは彼女の話し方なのか、選ぶ言葉のせいなのか、声質によるものなのか。

いや違う。多分彼女は、こちらを説得しようとか論破しようとしてこないからだ。どう思ってもいいけど私はこう思うんだよねと伝えてくるだけ。もしくは問いかけたのちは、こちらの話を打ち消さずに黙って聞いてくれるというか。彼女、離婚したって聞こえたような。なんでだろう。昔より素敵度一層増している気がするのに…なんて私に言われても嬉しくないだろうか。

谷原理沙さんは顔も発言も昔からだいぶ濃くて強烈で、いちいち噛みついて来られると正直うるさいなとは思う。けれど多分裏表はなくて、ただただ思っていることをオブラートに包むことなくスパーンスパーンと気持ちいいくらいにぶつけて来る人で、こちらも同じようにまっすぐ返せば、きちんと話が出来る女性だという気はする。ただ何を言われても喧嘩売られてるのか?とこちらが思ってしまうほどに表現が強烈なところは、正直なんとかしてほしい。喧嘩する必要がないところでも戦ってしまいそうだから。

でも。でもどうしても。畠山結花ちゃんだけはどうも好きになれなかった。だってこの人、経済力も旦那も子供もキャリアも豪邸も何でも持ってるくせに、さらに既婚の男性に手を出してナニをしたとかって聞こえた。「クロマイ! クロマイ!」と馬鹿みたいに大きな声を出す谷原さんのせいで、つい聞いてしまったわけだけどそんなの最低。最低過ぎる。

なのになんで谷原さんや真木ちゃんはさっきの話の流れでクロマイやゼリーに食いつくの? 違うでしょう。既婚者といたしたってとこで何故突っ込まないわけ? どういうことなのか詳しく追及して、綺麗な顔して不健全なことやっているこの人にダメ出ししたりしないのはなぜ? それおかしいよね? おかしいでしょ。

私の中に湧き出し続ける疑問や怒りを察知したのか、真木ちゃんが急に言った。

「そういえば須藤さんの旦那さん遅いね。ま、夜は長いしなんでもぶちまけちゃって」

ああ、本当だ。もう24時を回っている。そういえば夫はまだ来ない。終電の時間も過ぎてるなんて…まさか来ない気だろうか。いや、タクシーでだって彼はきっと来る。だって私、真剣にメールしたもの。ちゃんと話し合いたいことがある、と。

こんなビストロバーで待ち合わせして深夜のデートなんてイケテル旦那さんだよね素敵、と彼女達にはそろって言われたが、実態は違う。実はデートなんかじゃない。全然違う。何を隠そう、今日は離婚話をしようと思っての待ち合わせなのだ。
  • 植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

    ■Side1結婚してない側の女(全14回)を読む >
  • 谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。

    ■Side2産んでない側の女(全15回)を読む >

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