経済力がない女は、あてつけに悪さをする資格がない?【小説・じゃない側の女~Side4満足させてもらえない側の女 Vol.7】

2017年8月24日
【連載第7回】須藤慶子(すどう けいこ)43歳 結婚14年目の専業主婦。夫が出張のたびに「とあるサービス」を利用していると知り、ショックを受ける。(全8回)
「いやちょっと真面目に言っちゃうけど、やっかいなことになって地獄みた時に自分でお尻ふいて自分で立ち上がって自分で始末できないようなら、何も悪さする資格はないと思うんだよね、あたし」

何それ? 夫に養ってもらってる専業主婦はただただ我慢するしかなくて、何をどう反撃することも許されないって言ってるの?そんなのって…。あ、まずい。こんなところで涙を流す女は最悪だといつも思ってきた。なのに。なんだかいろんな衝撃にクラクラしているのもあって、おなかの底からいろんな思いがこみあげてきた。

旦那のデリヘル好きを知ってしまったその日からずっと一人悩んできたのに、彼女たちにそろいもそろって、そんな騒ぐほどのことじゃないと言われ、ほっとしたような馬鹿にされたような混乱を起こしている中、今度は旦那が何しても私には離婚することも、あてつけに不倫することすら許されないみたいに言われた気がして、悲しいやら悔しいやら情けないやら、たまっていた寂しさや悔しさや嫉妬やいろんな思いがこらえていた分、ぶわっとこみあげて両目から噴き出した。

「もーーーーーーーっ‼! またかよ。今度は誰が泣いてんだよ。ほんとにいい歳してお前らなんなんだ。理沙、またお前が泣かせたのか?」

「今回は間違いなく理沙ですー、泣かせたのは理沙でーす、マスター」

真木ちゃんと結花ちゃんが谷原さんを指さして笑っている。そして二人に指さされた谷原さん本人まで「あたしでーす」といってげらげら笑っている。みんな、なんで笑ってるの、私泣いてるのに。悔しい。なんだかよくわからないけどすごい悔しい。

「だってなんかこの人、今日この席についてから終始被害者モード全開だったから、言うだけ言っとかないと気づかないんだなと思って。だって被害者なんかじゃないんだから、十分幸せな人なんだから」

え。谷原さん今なんて言った? 今度はなんだろう、急にそんなことを言われたことが嬉しいのか、わけがわからないまた違う涙が湧いてうえーんという声とともに流れ出て来る。鼻水まで流れ出てきた。もう忙しい。どうしよう何を言われても涙も鼻水も止まらない。

「あれ? 須藤さん、入り口にたってこっち見てる人、旦那さんじゃない? この時間からこんなマニアックな店に来る人いないと思うから」

ひっくひっく嗚咽する私に、ティッシュペーパーを差し出しながら真木ちゃんが指さす方をふり向くと、こっちに向かって遠くでぺこっと頭を下げる旦那が立っていた。 ああ、来てくれたんだ…。さらに何かがこみあげる。
  • 植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

    ■Side1結婚してない側の女(全14回)を読む >
  • 谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。

    ■Side2産んでない側の女(全15回)を読む >

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