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まだ若いから…とは言ってられない! 今から遺言書を作っておくべき理由【アラフォーのためのマネーのお話 #5】

アラフォーの関心事「マネー」について、初心者にわかりやすく女性税理士が解説!第5回は、40代から考えておくべき相続のお話。後編は自分の相続対策についてです。
まだ若いから…とは言ってられない! 今から遺言書を作っておくべき理由【アラフォーのためのマネーのお話 #5】_1_1
版権:Burdun Iliya/Shutterstock.com

「相続対策なんて年配の人がすること。自分たちにはまだ必要ない」そう思っているアラフォー女性は多いと思いますが、実はそうとも言い切れないのです。

人は年齢の順に亡くなるとは限りません。働き盛りの40代や50代の人が突如亡くなってしまう、ということだってあるのです。働き盛りの夫(妻)を失った家族は大変です。一家の大黒柱を失うことになれば、金銭的に困ることはもちろんですが、それ以外にもアラフォー世代の相続にはあっと驚く落とし穴があるのです。

あっと驚く落とし穴が待っているのはこんな人

・未成年の子供がいるご夫婦

・子供がいないご夫婦

未成年の子供がいる人は要注意!?

未成年の子供がいる家庭の相続は大変です。もちろん、これからお金のかかる未成年の子が残されるだけでも大変なことです。でも、大変なのはそれでだけではありません。未成年の子がいる場合の相続の思わぬ落とし穴は2つです。

1. 夫(妻)の遺産の分け方を自由に決められない!

2. 払わなくてもよい相続税を払うことになるかも!

職場で倒れて帰らぬ人となってしまったAさん(男性・48歳)。Aさんは、会社員の奥様(45歳)と中学3年生(15歳)の息子さんの3人家族でした。Aさんは大企業勤務で年収もそれなりに高かったため、自宅マンションと金融資産、退職金や生命保険など、全部合わせると1億円程度の財産を持っていました。

相続人が2人いる場合、4200万円以上の財産があると相続税の対象となります(以下表参照)。

■相続税の課税ライン

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※法定相続人が1人増えるごとに600万円ずつ増えます

Aさんも相続税の課税対象者です。いくら1億円もの財産があるといっても、この先の生活を思うと余計な相続税なんて払いたくはありません。でも、若くして亡くなったAさんは相続税対策もしていませんでした。「いったいいくらの相続税がかかるのかしら・・・・・・」Aさんの奥さんは途方に暮れてしまいました。

でも実は、相続税を払わなくていい方法はあるのです。Aさんの財産をすべて奥様が相続すれば、相続税はかかりません。奥様が相続した場合、1億6000万円まで(それを超えても法定相続分まで)は相続税がかからないのです。でも、残念ことに未成年の子供がいる場合、そう簡単にはいかないのです。

未成年の相続人がいる場合、家族だけで勝手に財産の分け方を決めること(遺産分割協議といいます)ができません。未成年者は遺産分割協議ができないと、法律で決められているのです。未成年者が遺産分割協議をするためには、代わりに協議をしてくれる「特別代理人」が必要になるのですが、これがなかなかヤッカイなのです。

まず誰に「特別代理人」を頼むのか、という問題。「特別代理人」は、遺産分割協議の相手となる親や兄弟はなれません。財産の話を聞かせてもいい誰かを、探して頼まなければならないのです。しかも「特別代理人」になるためには、家庭裁判所に認めてもらわなければなりません。この時、家庭裁判所は遺産の分け方もチェックするのですが、「妻に全部相続させる」という内容では、OKを出してくれないのです。

ちょっとムズカシイ話になりますが、「特別代理人」を立てるのは子供の権利を守るためです。「妻が全部相続」すると、子供が何ももらえないことになります。もし、鬼のような母親で、財産を独り占めして子供が路頭に迷ったら……子供の権利は守れませんよね。というわけで、裁判所としては原則「法定相続分通り分ける」ことを要求してくるのです。

Aさんの場合、奥様が全財産を相続すれば相続税はかかりませんが、家庭裁判所の要求通り、法定相続分(妻と子で2分の1ずつ)で分けると、約335万円(※)もの相続税がかかってしまいます(※配偶者控除と未成年者控除を勘案後)。

普通の感覚だと「相続税がかからないほうが家族の財産が減らないのだから、子供を守ることになるのでは?」とも思うのですが、その主張が認められる可能性は少ないのです。もし、相続税がかからなかったとしても、家族の話し合いに「特別代理人」なる人を参加させる、しかもそれを「家庭裁判所」に申請するなどという仰々しいことをするなんて、愉快なものではありませんよね。

では、こんな事態を避けるためにはどうしたらいいのか。解決策は、遺言書です。遺言書で財産の分け方を決めておけば、遺産分割協議は必要ありませんから、「特別代理人」もいりません。かく言う私もAさんと同様中学3年生の息子がいますので、夫とそれぞれ遺言書を書いています。

遺言書といっても、難しく考える必要はありません。少なくとも子供が未成年のうちは、夫婦でそれぞれ「自分の全財産は妻(夫)○○に相続させる」と書き残しておけばいいのです(日付と印鑑を忘れずに!)。未成年のお子さんのいる方はぜひ、遺言書を書いておいていただきたいと思います。

子供のいない人も要注意!?

ここまで読んで「うちは子供がいないから大丈夫」と思った方、ちょっと待ってください。子供のいないご夫婦の相続も要注意です。「夫が死んだら財産は全部妻のものになるんでしょ」などと思ってはいませんよね。

「夫が亡くなったので、銀行に手続きに行ったら、夫の兄弟と財産の分け方について決めないと預金が動かせないと言われました。夫の兄弟とは何年も会ってなかったのに、どうすればいいんでしょう」。Bさん(女性47歳)は困っています。

子どもがいないご夫婦の場合、夫が亡くなると妻だけでなく、夫の親もしくは兄弟姉妹も法定相続人になります。Bさんの夫の両親は他界していますが、兄と弟がいるとのこと。このように、相続人が複数いる場合、誰がもらうかはっきりしていない預金口座は凍結されて動かせなくなってしまいます。Bさんは夫の兄弟と遺産をどう分けるかを話し合わなくては、お金を引き出すこともできないというわけです。「これから夫の兄弟に電話をして、遺産分けの話をしましょうと言い出さなければならないなんて、気が重いです。もし、夫の財産をよこせなんて言われたらどうしよう」

ご主人の財産をめぐって、その両親や兄弟姉妹と遺産争いになることも決して珍しくありません。夫の兄弟の弁護士から「財産を相続する権利がある」と連絡を受けたというのもよく聞く話です。

こんな時も、遺言書が有効です。「妻に全財産を相続させる」という遺言書があれば、B子さんは、単独で銀行からお金を引き出すこともできたし、義理の兄弟と遺産分割の話し合いなんて恐ろしいことをする必要もなかったのです。AさんもBさんの夫も、自分がこんなに早く亡くなるなんて思ってもいなかったかもしれません。でも、相続はいつ誰に起こるかわからないのです。

「まだ若いからいいよ!」などと言わず、転ばぬ先の杖と思って、遺言書作りにチャレンジしていただきたいと思います。

▶︎次回は1月23日(水)更新予定
  • 板倉 京(いたくら みやこ)
  • 株式会社WTパートナーズ http://wt-partners.jp/
    代表取締役 税理士 IFA

    成城大学卒業。保険会社・コンサルティング会社、税理士法人等で個人の資産や相続の業務に携わる。資産運用コンサルティングを行う(株)WTパートナーズ代表。NHK『あさイチ』などのテレビ出演や全国での講演、書籍の執筆などの活動も多数。著書に『相続はつらいよ「モメるケース」から考える相続対策』(知恵の森文庫)、『夫に読ませたくない相続の教科書』(文春新書)がある。

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