【1】アラフォーからデリケートゾーンケアをはじめるメリットって?
☆お話をうかがったのは…
助産師・鍼灸師・看護師 たつのゆりこ先生
「Be born」助産院・産後養生院院長。東洋医学と世界三大伝統医学のひとつであるアーユルヴェーダにも精通。指導・監修を務めた『ちつのトリセツ 劣化はとまる』(径書房)も話題。
女性ホルモンの低下に伴う異変を防げ!
まず知っておきたいのは、デリケートゾーンの中核・膣の現状。
「子宮とつながっている膣の状態に、関連するのが女性ホルモンです。35歳前後に減り始める女性ホルモンの影響を受けて、膣の粘膜が薄くなって粘液の分泌も減少。どんどん乾いてきます。放っておくと、干からびてカチカチになり、だんだん萎縮してしまうことに。更年期前後に膣にかゆみ、痛みなどの“違和感”を感じる人が多いのはそのせいです」
膣の乾燥による“違和感”は不快だし、萎縮が進んで性行為も楽しめなくなれば、パートナーとの関係にも支障が。でも問題はそれだけじゃない。そんな膣の変化は、なんと頭痛や肩こり、腰痛、便秘といったさまざまな体調不良までを誘発してしまう可能性があるそう。
「膣のうるおいが減少し始めるのと同じくして、体の血流も悪化し始めますが、膣にも毛細血管が多く通っているので、血流が鈍ると冷えて代謝が低下します。川の流れをイメージしてください。勢いのある川は澄んでいますが、どこかが滞っている川はヌルヌルと濁っていますよね? 人の体も一緒。どこかのめぐりが悪いと血液が滞って体に不具合が出るものです。そしてリンパ系の滞りもあると、汗や体液など体から出る分泌物のニオイも変わるもの。デリケートゾーンのニオイの変化を感じたら、“滞り”のサインだと思って」
乾燥やニオイといった膣の変化のサインを放置すると脳にも影響が。
「膣にも末梢神経が届いていて迷走神経系を経由して脳とつながっているとされています。なので記憶力が衰えるほか、精神的にも不安定になってイライラしやすくなるので、今後くる更年期の症状が強く感じる人も。ですからアラフォーのうちからデリケートゾーンをケアし、自らうるおい、代謝できる膣に整えることが重要です」
■デリケートゾーンケアはこんなところに効く!
■デリケートゾーンは 全身とつながっている という事実!
【2】デリケートゾーンケアの4つの基本
1. 清潔にする
弱酸性の専用ソープで素手洗いし、ニオイやかゆみのもとを優しく断つ!
清潔のためとはいえ、洗い方を間違うと逆効果。「デリケートゾーンには乳酸菌などの良性の細菌が存在し、バリアとなって雑菌の繁殖を防いでいます。それらの細菌を洗い流してしまうと、炎症やニオイなどのトラブルのリスクになりますので、洗浄時は弱酸性の専用ソープを使用。刺激を防ぐためによく泡立て、こすらず素手でなで洗いを。また、繊細な膣の中は絶対に洗わないこと。膣には自浄作用があるので、お湯で流すだけで十分です」(たつの先生)
■おすすめのデリケートゾーン専用ソープ
2. 代謝を上げる
アーユルヴェーダの治療法をもとにしたオイル入浴となで洗いで血流促進
「温かくしたお風呂場でデリケートゾーンにオイルを塗って、そのまま湯船へ。5分ほどつかりながら、膣のまわりを優しくマッサージ。直接でもいいですが、薄手のタオルをその部分に当てた上から行うほうがマッサージ感もあり、気持ちよく行えます」(たつの先生)。血流の滞りにより、不純物がたまっていると一時的におりものが増えることもあるが、「お手入れを続けて代謝が上がればそれも解消され、デリケートゾーンも肌もうるおってふっくら。ハリが生まれてツヤも出て、肌色も明るくなります」
外陰部を優しくもむと、より効果的
なで洗いをする際、できれば陰部を優しくもんで。ただし、絶対に強くこすらないこと。ちなみに「オイルを塗って入浴しているのにお湯が汚れない人はストレスが強く代謝が悪い証拠」とたつの先生。代謝が上がるにつれて、濁った泡が浮くほど汚れるようになるとか。
■オイルケアをする時の注意点
★ 妊娠している人は助産師や医師などの専門家と相談のうえ、行うこと
★ 妊娠を希望している場合、排卵日前後にはオイルの使用を避けること
★ 月経が始まってからの3日間、体調が思わしくない時や、食後すぐに行うことは避けること
★ デリケートゾーンを傷つけないために、爪は切り、清潔な手で行うこと
★ オイルにアレルギー反応が出ないかどうか、腕の内側につけてみてパッチテストを行ってからケアすること
★ 石油由来のグリセリンやベビーオイルは絶対に使用しないこと
■おすすめのデリケートゾーン専用オイル
3. 保湿する
入浴後に行う"オイル湿布"で細胞から若返らせる!
外からの保湿目的ではなく、膣の働きをよくして中からうるおうようにするために、清潔な外陰部にオイルをたっぷりしみ込ませたコットンを“湿布”をする感覚で当てる。細胞が柔軟になり、血流が促されて老廃物の排出力も上がるこのケアは「続けるうちに粘液がしっかり分泌されるようになり、免疫力が高くなって細胞から若返ることができます。おへそから下は感情がたまりやすい部分でもあるので、一日の疲れやストレス解消にも有効」(たつの先生)
オイル湿布は"会陰"を中心に10分程度!
精油専門店などで購入できる肌用セサミオイルを、4~5枚重ねたコットンに50㏄以上しみ込ませて使用。湯せんをしておくとふわーっと温まって心地いい。
■おすすめの肌専用セサミオイル
食用のゴマ油を使う場合は必ず加熱処理してから使用!
生のゴマ油を搾った食用油をステンレスボールなどで湯せん。100℃に達したら火を止め、冷めたら保存容器に移して、光の当たらない場所で保存を。
4. 骨盤底筋を鍛える
ヨガの"橋のポーズ"で、骨盤のインナーマッスルをトレーニング
骨盤の一番下で子宮や膀胱、小腸、大腸などを支えている骨盤底筋。「ここを鍛えることで、膣の柔軟性や伸縮性がアップします。膝から首までがまっすぐに伸びるくらいまで持ち上げられる人は、そけい部がストレッチできている証拠。骨盤も動いているので若々しく健康的で、出産もスムーズ」(たつの先生)。おしりが持ち上がらない人は凝り固まっていることになるが、少し上げるだけでもめぐりがよくなるので繰り返しトライ。スクワットも同様の効果が。
■骨盤底筋エクササイズ
①あおむけになって両膝を立てて、足は腰幅に開く
②息を吸いながら、おしりの筋肉を引き締めるようにして、ゆっくりとおしりを上げる
③おしりを上げた状態で10秒ほどキープした後、背骨の上のほうから体をゆっくり下ろす
④一連の動きを5回繰り返す
【3】デリケートゾーンケアを効果的にするためのちょっとした生活習慣
★旬のものを食べる
温かくて消化のよいものをとり、冷たいものや生ものは控えるように。特に旬のものを意識し、体を冷やす夏野菜は、加熱するなどの工夫を。
★質のよい油をとる
食事でとる油は、エゴマ油やオリーブ油などオメガ3やオメガ9脂肪酸のような質のよい油を。粘膜がうるおい、お通じがよくなり便秘が解消。
★目の酷使に気をつける
目の奥にはホルモン分泌や制御を行う視床下部があり、目を酷使すると子宮や卵巣に影響が。PCやスマホの使用は意識的にセーブすること。
★夜更かしをしない
東洋医学では、"陰"の臓器とされる腎や肝が弱ると、膣の乾燥などにもつながる。夜しっかりと眠って、「陰の気」を養うことが重要。
★砂糖のとりすぎに注意する
東洋医学では、砂糖の過剰摂取は胃腸機能を低下させ、血流を悪くするとされている。甘いものを欲したら、栄養価の高いハチミツを。
★骨盤を動かす運動の習慣をつける
おしりの下にテニスボールなどを置いて、コロコロ転がす習慣を。骨盤の下部である座骨結節がほぐれ、骨盤まわりの血流が促進される。
★フットケアの習慣をつける