よしの女性診療所院長 吉野一枝先生
そもそも更年期とはいつの時期をさすの?
閉経をはさむ10年間のことで、さまざまな不調が出る時期のことです。
「更年期は閉経をはさんだ10年間をさします。閉経とは1年間、月経が来ないことです。個人差はありますが閉経は平均50〜52歳。50歳で閉経を迎えた人なら、45〜55歳の10年間を更年期と呼びます」
この更年期には、体や心にさまざまな不調が発生。
「女性ホルモンの分泌量は加齢とともに減少し、特に40代からは激減し、更年期にはかなり少ない状態に。この影響で、のぼせや発汗、頭痛、肩こり、めまい、耳鳴り、便秘、皮膚の乾燥やかゆみ、性交痛、不安感など心身にさまざまな不調が生じます。これを医学的に更年期症候群と呼びます。以前は更年期障害と呼んでいましたが障害ではないので症候群という呼び方に統一されました」
アラフォーのマリソル世代は、まだ更年期には早い気がするけれど、不調が出やすくなるのはどうして?
「女性ホルモンの分泌量は35歳からゆっくりと低下し、卵巣機能も低下していきます。その一方でアラフォーは、仕事で責任のある役職についたり、子供や夫婦間の問題、親の介護などさまざまな問題からストレスを抱えやすい時期でもあります。この女性ホルモンの減少と、ストレスの影響で自律神経のバランスが乱れ、アラフォーでも更年期のような症状が出る場合があり、これは〝プレ更年期〟などと呼ばれます」
そうなると〝じゃあ更年期になるといったいどうなっちゃうの?〟と不安でいっぱいになりがちだけれど……。
「更年期は誰にでも訪れるものですし、治療法もHRT(ホルモン補充療法)や漢方薬などさまざまなものがあり、症状の改善や軽減は可能です。現代は人生100年時代と言われ、更年期はちょうど折り返し地点。今後の長い人生を健康で元気に暮らすには生活習慣の見直しが必要な時期でもあります。ですから自分の体に向き合うよい機会だととらえ、前向きに乗りきりましょう」
女性ホルモンの分泌量が減ると、 なぜ心身にトラブルが起きるの?
エストロゲンには生殖に関する機能だけでなく、心臓や血管をしなやかに保ったり、骨を丈夫に保ったり、悪玉コレステロールを減らしたりと多くの働きがあるので、減少することで体に起きるトラブルは多数。
「女性ホルモンの分泌が減ってくると、まず生理に現れます。生理の出血量が減ってきたり、周期が乱れてきたり、期間が短くなってきたりしたら女性ホルモン低下のサイン。無理なダイエットや、不規則な生活、喫煙、ストレスなどが原因で閉経が早くなることもあり、その場合は更年期症状も早く出やすくなります」
そのほか、女性ホルモンが低下してくると、健康診断の結果にも以下で示したような変化が出やすくなるので覚えておこう。
女性ホルモン分泌量の変化
更年期に自律神経が乱れる仕組み
女性ホルモン低下のサインは?
1.悪玉コレステロール値が上がってきた
コレステロールには悪玉(LDL)と善玉(HDL)があるが、エストロゲンにはLDLを減らし、HDLを増やす作用が。女性ホルモンが減るとLDL値が高くなりやすくなる。
2.中性脂肪値が上がってきた
エストロゲンは脂質代謝全体にかかわり、分泌量が減ると中性脂肪値が上がりやすくなる。ただし中性脂肪値はエストロゲンよりも食事や運動など生活習慣の影響のほうが強い。
3.血糖値が上がってきた
エストロゲンには血糖値を下げるインスリンを効きやすくする作用があり、分泌量が減ると血糖値が上がりやすくなる。家系に糖尿病の人がいる場合は特に要注意。
4.血圧が上がってきた
エストロゲンには血管をしなやかに保つ働きがある。エストロゲンの分泌が減ると、この働きは徐々に低下し、血管が硬くなって柔軟性も低下。そのため血圧が上がりやすく
5.体重が増えてきた
エストロゲンが低下すると代謝が落ちるので、太りやすくやせにくい体に。それにもかかわらず、若いころと同じように食べていると、太って元に戻しにくくなるので注意。
簡略更年期指数
中:毎週みられる
弱:症状として強くないがある
更年期かもと思ったらまずは婦人科へ!
「ここから約10年にわたる更年期ではのぼせやほてり、発汗など更年期特有の症状が現れやすくなります。人によって感じる症状や重さは本当にさまざまですが、治療が必要な“更年期障害”のケースは、3人に1人程度です」(よしの女性診療所・吉野一枝院長)
案外、少ないかも? と思った人も多いのではないだろうか。
「ところが、更年期にぐっと減ってしまう女性ホルモン・エストロゲンは、目には見えないところで体のさまざまな働きをサポートしている大事な潤滑油。それだけに、閉経へ向かって量が減ると、今までは抑えられていた病気のリスクも一気に高まることになります」(吉野先生)
例えば、糖尿病や高血圧などがそう。また中性脂肪の値が上がったり、体重が増えるのも、エストロゲンが減って代謝が落ちることが理由のひとつ。
「エストロゲンの働きは、脳や心臓、血管、骨、筋肉、皮膚にいたるまで全身に及ぶため、分泌量が低下すれば、その影響も全身に。これによる更年期症状は、ホルモン補充療法や漢方薬などでツラさを緩和できます。閉経後は急激に骨密度が落ちることによる骨粗しょう症や、動脈硬化などリスクが出てくることを考えると、今の自分の体の状態を知るためにも、早めの受診が得策です」(吉野先生)
何はなくともまずやるべきは、現在の自分のホルモン数値を知ること。
「そしてあなたの体のニュートラルを知るかかりつけ医をもつこと。病院は病気の時だけに行く場所ではありません。更年期に備え、なんでも相談できる環境づくりから始めてみて」(吉野先生)
【婦人科でできること①】今の体の状態をチェック
「クリニックで行う血液検査では、ひととおりの体のチェックに加え、希望すればホルモン値を測ることもできます。更年期かも? とクリニックに訪れる患者さんの場合、そのきっかけの多くは月経の変化。まず周期が早まって量が減ってくるのがホルモン低下のサインなので、ホルモン検査で今の状況をチェックしてみるといいでしょう。ただし、ホルモン値が悪くても症状がない人、逆に数値がいいのにひどい症状の人もいるので、検査の結果だけにこだわらず、気になる症状があれば、詳しく医師に相談してください」(吉野先生)
■ホルモン値の検査について
【婦人科でできること②】ホルモン治療
■婦人科の選び方
先輩に聞きました!「私の更年期、これで乗りきりました!」
①コミュニティ活動
こんなユニークな対策も、更年期ならでは! 「ときめきが大事と聞いて、無理矢理職場の人に片思いの妄想、実生活ではアイドルを応援」(43歳・会社員)。また危うきに近づかないのも策のうち。「イヤな人とは付き合わずストレスを減らす」(44歳・派遣社員)
②スポーツ
スポーツ部門では、ホットヨガ体験者が圧倒的多数。「不眠症状がつらくてホットヨガを始めたら、よく眠れるように」(43歳・会社員)。また習慣的に運動する派は無敵の様相。「ジョギングを日課にしているせいか、まだ不調はない」(45歳・公務員)
③ホルモン治療
やはり信頼度が高い婦人科の治療。「婦人科のホルモン補充療法テープを下腹部に貼ったら、劇的に汗やめまいが改善」(52歳・パート)。こちらもあっぱれな活用法。「薄毛が心配でホルモン剤入りの高価な育毛剤を定期購入。効いてます」(47歳・自営)
④食生活改善
「更年期にはイソフラボン! 大豆製品を積極的に摂取していたら、ダラダラ生理はなくなった」(43歳・アルバイト)。こちらは、生薬で日々改善派。「ホルモンが分泌されやすくなる薬膳を日々の食事に取り入れたら、頭痛などが軽く」(40歳・自営)