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子供が欲しいとか欲しくないとか正直わからない【小説・じゃない側の女~Side2産んでない側の女 Vol.5】

【連載第5回】谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。(全15回)
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Graphs/PIXTA(ピクスタ)
だからねそれは。

あたしはこれまで着る服一つとっても、「どちらでもいい」はなく「こっちがいい」と自分の意志で必ず選択してきた。だけどこの子供についてだけは、欲しい、とか欲しくないとか、今の私にはわからないのだ。

子供はいたらいたで、今までとは明らかに違う世界が見えたり知らなかったことに出会う機会もぐんと増え、それはそれで楽しそうだなと思わないでもない。

でも子供がいないならいないなりの生き方や幸せがあるんじゃないか…つまり言葉にしてしまうと「どちらでも」いいような…。といってもそれは決して投げやりな「どっちでもいい」ではない。でもだからって「こっちがいい」と明確に言えないのだ。

そんな自分に戸惑っているし、選べない自分に誰より不安を感じているのはこのあたしなのだ。

明確な意志を持って妊活している人を間近に見て、このことについて能動的な意志がない自分っていいのかなと、この期に及んでやっと思った。

だけど、意志を持たない、いや持てないまま、気づいたらもう子供を持つ・持たないなんて考えること自体が出来る分岐点をとうに過ぎていたりしたら、その時あたし、大丈夫なんだろうか。ああ、もっと早くから何かしてたら!なんて思わないだろうかと、先々の自分に対して今更ながら心もとなく思ったりもして。

後輩女子に言われなくても40過ぎたらもう、できてもできなくてもなんて悠長なこと言ってる場合じゃないこと位、なんとなくは知っている。本気で子供が欲しいと思うなら、すぐさま不妊治療に入り、残り少ない卵子を1つでも無駄にしない努力を、今すぐ今日この時点この瞬間からするべきだ、タイミング法なんてまどろっこしい段階はすっとばして、いきなり1回ウン万の体外受精から、場合によっちゃ顕微授精へ一足飛びです!など迫力満点に説く本やらネットの情報があまたあることもちゃんと知っている。わかってる。欲しいなら、作るなら、そりゃ一刻も早い方がいいのだろうってことくらいわかってる。

それでも。何を言われても
あたしがどうしたいかわからないのだ。
子供が欲しいとか欲しくないとか。わからない。

結花の質問は続く。

「理沙は今、妊活に励んでるってこと?」

「えっと人間ドックで、一度甲状腺がらみの数値がちょっぴり正常範囲をオーバーしたのね。その時、もし将来、子供が欲しいなら数値を安定させるために、チラーヂン飲んでおきなさいって言われて、以来なんとなく飲み続けてる。あと、基礎体温計はたまにはかるでしょ。あと葉酸サプリ飲んでるでしょ、冷え取り靴下はきはじめたでしょ、あと……」

「男とセックスしてるのかってこと」

「ほどほどに」

「何そのほどほどにって。それは子作りセックスじゃないでしょ? 子供作るとしたら相手誰よ。今の彼氏?ってか彼氏いるんだっけ?」

「仕事じゃないんだから、そうわーわー詰めてこないでよ。さっきから言ってるように、自分でもわからないからこの検査受けてみたんだってば」

「わからないって何が?体の状態が?」

「あたし自身の気持ちが」

「なにそれ」

「ポンポン一発で考える間もなく子供が出来ちゃう結花にはわからないよ」
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    植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

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