気付けば部下が増え、悩ましいことも増えてきた【小説・じゃない側の女~Side2産んでない側の女 Vol.7】

2017年6月15日
【連載第7回】谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。(全15回)

歩く道はそれぞれに違うのに、結花と真木とあたしが、こんなに長いこと友達でいられるのは、根底に流れる考え方とスタンスが同じだからだと思っている。それは実にシンプルで。

「あなたはあなたのことを、あたしはあたしの人生を誰の責任にもしないで生きていく努力をするから、お互いそれでいいんじゃない?」

いつも何に対しても誰に対してもあたし達は過干渉せず、そう思ってきたし思っている女同士だと思う。だから幾つになっても、どんな立場になっても共にいることができるし居心地がいい。誤解されたくないのだが、これはお互いに対して無関心というのとは全く違う。

たしかにあたしは決して優しい女ではない。だから小さな子供に親があれこれ世話をやくように、親友だからといって真木や結花になんでもかんでもしてあげようなんて思わない。

ただ。こうも思っている。

もし彼女たちが何かにつまずくことがあれば、その問題や困難から彼女達それぞれが何かを学んでいく姿をじっと見守って、自力で立ち上がろうとする親友達に、少し離れた場所から必要な時にすぐに手を差し伸べられる女でありたい。そしてそれはお互いに自立していればこそできるはずだと、そうあたしは思っている。

大学を出て20年。最初に入社した会社から数えて今のブランドで5社目。「理沙ちゃん」と呼ばれ自分が一番若手だと思っていたのに、転職するたび、いつの間にか「谷原さん」「谷原先輩」、飲みの場では「姉さん」と呼ばれる立場になり、気が付けば後輩が増え、気が付けば部下が出来、部下が増え、立ち居振る舞いが悩ましいことも少しずつ増えてきた。

切実に子供が欲しいと願い、妊娠しやすいカラダづくりにいいと聞けば、アーモンド、いちじく、アボカド、うなぎ、ルイボスティーにタンポポ茶…なんでも試し、女性が妊娠しやすくなる食べ物、男性が妊娠しやすくなる食べ物、逆に食べてはいけないもの、ありとあらゆる雑誌、メルマガ、ネットの記事、ブログを読み漁り、情報を収集し出来る限りのことをすべて実践し、人工授精、体外受精、経済的に耐えうる限り何度も試みる女性がいる。

その一方で、予定外ですーと言いながらあっという間に妊娠し、さらりと産休に入っていくおめでた女子も、それなりの数いたって普通に現れる。

  • 植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

    ■Side1結婚してない側の女(全14回)を読む >
  • 谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。

    ■Side2産んでない側の女(全15回)を読む >
  • 畠山結花(はたけやま ゆか)43歳 ゼネコン勤務の一級建築士。同業のハイスペック夫と2人の子供、瀟洒な一軒家。「すべてを手に入れて」順風満帆な人生を突き進んでいるように思われるが…。

    ■Side3あきらめない側の女(全14回)を読む >
  • 須藤慶子(すどう けいこ)43歳 結婚14年目の専業主婦。夫が出張のたびに「デリヘル」を利用していると知り、ショックを受ける。

    ■Side4満足させてもらえない側の女 8月中旬リリース予定

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