時に自分を責めたり自問自答する"子供がいない側の女"【小説・じゃない側の女~Side2産んでない側の女 Vol.11】

2017年6月19日
【連載第11回】谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。(全15回)
でもここで間違わないでほしい。

子供のいない女に過度に配慮した気遣いや言動をしてほしいと言っているんじゃない。

そうじゃない。そうじゃない。全然そうではない。

「子供を持つことが幸せの形として正解」と疑いなく信じる人達の「その定義でいうと不正解・幸せじゃない側」にいる女への一方的な干渉をただ、やめてほしいだけだ。要らぬさざ波をあえて立てにこなくてもいいでしょうと言っている。

ただそれだけ。

「帰ってきたら私の居場所ありますかね? せっかく役に立てるようになってきたのに。私がお休みしちゃうといろいろ不具合とか差しさわりがありませんかね」

あたしは心の中にジンジンするささくれの痛みと小さな苛立ちのさざなみを懸命に抑えながら、ここでもプロフェッショナルなアルカイックスマイルを崩さずに出来る限りの言葉を返す。

「余計な心配しなくても大丈夫。会社なんていうのは、誰か一人が抜けてもびくともせずにちゃんと回るようになってるの。誰が抜けてもそう。だから気にせず堂々とお休みを満喫してきて」

「ありがとうございます! また戻ってきますから、その時はよろしくお願いしまーす!」

そんな何もかもを手にした勝者のように笑う妊婦に、心の底から1点の曇りなくおめでとうの気持ちを持つことができづらい時も、正直ある。

と同時に、手放しでおめでとうの気持ちをもてない自分が卑小な存在に思えて少し悲しくもなる。

笑顔の妊婦女子が発する言葉に、ちょいちょい心がささくれだってしまうのは、無意識のうちに子供を持つことが女性の一番の幸せ、王道だと、どこかであたし自身もそう思い、その王道を歩めない、歩んでいない今の自分をどこかで恥ずかしく卑屈に思ったりしているせいなのだろうか。その王道とやらの先が、必ずしも素晴らしい道とは限らず、どこかで舗装が途切れ砂利道になったり、予期せぬ分岐があったり、行き止まりになったり、場合によっては道自体が消失することもあるかもしれないのに、今この時点では多くの人が「王道」とみなすその道を、あっという間に高速スピードでかけぬけていく女子の後姿を、やはりあたしはどこかで、やっかんでいるということなのだろうか…。

そんな人間って、あたしってどうなの?

人の幸せを心地よく受け取れない人間なのか、喜びだけをピュアにわかちあえないようなヨコシマな女なのか。
だとしたらそれは悲しい、悲しすぎる…なんて、時に自分を責めたり自問自答するアラフォー「子供がいない側の女」のあたし。
  • 植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

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  • 谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。

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