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長い期間、不妊治療を続けてきた友人の決断【小説・じゃない側の女~Side2産んでない側の女 Vol.13】

【連載第13回】谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。(全15回)
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「理沙としては、持ち球残り少ないとなれば、一足飛に体外受精とか顕微受精とか、悠長なこと言ってられないから費用がどれだけ高額でも全力で投資するとか、助成制度を速攻調べるとか、逆にもうすっぱりあきらめようとか、なにかしら前のめりで腹決めできるかもって見込みだったわけでしょ? っていうかそれ、相手いる前提だけどね」

「うん。だけど、いいか悪いか、とにかくこの検査結果はあたしを今すぐ子作りに突き動かすようなことはなかった」

「でもどう? ちょっとは自分の気持ち、整理できてきたんじゃない?いいお値段出して検査して結果見て、この子作りテーマ、理沙の中ではどう着地させるの? 中途半端は嫌いでしょ?」

口調は穏やかながら、結花の突込みは手厳しい。が、大事なことだ。確かにさっき散々真木に中途半端はよくないと偉そうに言ったあたしが、自分のことでは中途半端なままというのもよろしくない。

たまたま後輩に喝を入れられ、自分が考えたことすらなかった妊娠、出産についてはじめて考えてみた結果、衝動的に受けた15000円の検査。

女医先生に結果数値を見せられて「まだいけますよ」と言われた時、あたしは「わーいやったー!」とも「嬉しー!」とも思わなかった。ただ、そうですか…と思った。

「頑張って」と言われた時、

“いや、今あたしそこ頑張らなくていいかな”

と心の中で瞬時に思ったような…。

そうなの? それが今のあたしの答えってことなんだろうか。

そしてふと、あたしは仕事を通じて友達になったフランス人女性のマノンを思い出した。マノンは5歳年上の取引先の女性。パリの展示会で出会って意気投合し、珍しく仕事抜きで個人的な交流を続けている数少ない友人だ。彼女はずっと子供が欲しくて、もうかなり長い期間、不妊治療を続けていた。が、このたび旦那さんと相談してついに治療をやめることを決めたという。

ある日、甘い薫りのフレーバーティーをカップに注ぎながら彼女はあたしにこう言った。

「理沙、私たち夫婦は子供を持たない選択をしたんじゃないのよ」
「どういうこと?」

「子供を持てないという事実にとらわれずに生きる選択をしたの。子供を持てないことを嘆き悲しんで、子供のいる人や家族をうらやましく思いながら生きるより、与えられた現実の中で私たち二人の人生を味わう選択をしようって決めたの」と。

「そのフランス女性、素敵すぎるね。ましてやそれをフレーバーティー飲みながらフランス語で聞くと一層カッコよく聞こえそう」
「いや英語だけどね、マノンとあたしの会話は」

そんな返しに爆笑する結花と真木を見ながら、あたしもこのことについて、いつかマノンのように自分できちんと決める時が来るだろうか、決められる時が来るのだろうか…とぼんやり思った。

次の瞬間、そんな心の声が聞こえたかのように、真木がまっすぐあたしを見て言った。

「大丈夫だって」
「え?」
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    植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

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    谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。

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