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離婚を考え始めた矢先に1人目を妊娠【小説・じゃない側の女~Side3あきらめない側の女 Vol.3】

【連載第3回】畠山結花(はたけやま ゆか)43歳 ゼネコン勤務の一級建築士。同業のハイスペック夫と2人の子供、瀟洒な一軒家。「すべてを手に入れて」順風満帆な人生を突き進んでいるように思われるが…。(全14回)
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大学時代から付き合っていた同級生の彼と28歳で結婚した。特に問題はなかったけれどこれといった情熱的な盛り上がりもなく、結婚から6年位して、同じ会社の既婚の「出来る男」と燃え上がり、ああやっぱり本気で惚れた男と居る方が断然楽しい。離婚しようかなあ、特別いいも悪いもないけれどこの人と一緒に生きていく意味もないかも…なんて思い始めた矢先に一人目が出来た。

それも祖父の葬式の夜に、大好きだった祖父が居なくなりなんとなく寂しくて人肌恋しくなり、宿泊先のホテルで何年かぶりにいたしてしまったら一発で。スピ系への傾倒はない私でも、さすがにお葬式後の一発で出来た子だと思うと、祖父が「別れるな」と言っているような気がして迷わず産むことを決意し、旦那とも別れないことを決めた。

理沙や真木には「こんなとこでも、結花は効率的に無駄のない仕込みするんだね」と笑われたほど、あまりに予想外・予定外過ぎるあっという間の妊娠で、5カ月になるまで全く気付かなかった。

生理のサイクルは昔から理沙に「犬か」と言われるくらい半年に一度何てザラだったし、おなかが張るのも長めの便秘かと思う程度だったわけで、気づかなかったからガンガン飲んだしガンガン仕事してガンガン徹夜もしてしまった。そんな私でも、勝手なもので、出て来たらやっぱり可愛くてかわいくて、顔を見るたび毎日、こんな私から無事に生まれてきてくれたことに、ただただ感謝してしまう日々。可愛い。本当に可愛い。とてつもなく可愛い。ずっとそばで眺めていられる。

…けれどその一方で、やっぱり会社には、仕事には、速攻戻りたかった。だって34歳、一番仕事が乗っていた時だったから。

高校時代から建築の道に進むと決めて、大学も第一志望の建築学科に入り、希望どおり今の会社に入った私としては、結婚しようが出産しようが、好きな仕事を辞める気などさらさらなかった。どんな時もこの仕事が好きだった。建築費の高騰がひどい時は、値段を下げるべく設計を見直したり、見積もりを1から取り直したり、微に入り細に入りものすごい労力が必要で、それでもなお純粋にいい建物を提案できない歯がゆい状況になることだってあるけれど、どんな時もやりがいは減ることなく、この仕事を辞めようと思ったことは一度もない。

だから上の子を産んだ後の復帰は、旦那や親のサポートをもらって自分なりの最速最短で復帰した。それでも配属先は休み前にいた第一線的なハードな部署からは外されてしまった。どこかでホッとしつつもやっぱり多少の悔しさは否めなかった。いや正直言えば悔しさの方が大きかった。でもこの葛藤は、産んだ以上しばらくはきっと続くのだろう。悔しい。が、子供が少し育ったら、またやりたいだけ仕事ができるようになったら、私は絶対最前線に戻るんだ。少しの我慢、ちょっとの間だもの、そう自分に言い聞かせた30代前半、まだやる気とパワーに満ち溢れる自分を励まし奮い立たせた一度目の復帰だった。

旦那とは、人生初の取り組み=子育ての相棒として、それなりにいい協力関係を築いていると思う。けれど男としての魅力はかけらも感じられないまま、父親としての彼への不満だけが増えていき、出産以降、レスは上の子が小学生になる年まで何年も続いた。にも関わらず。

今度は祖母の葬式の夜、またまた出先のホテルで数年ぶりに行きがかり上いたしてしまったら、またもや一発で二人目が出来た。完全予想外・予定外パート2だった。 こっちは祖母から「だから夫婦仲良くやりなさい!」と言われた気がして…今に至る。

私の驚き以上に、会社側にとって私の二人目の妊娠は恐ろしく予想外であり平たくいうと迷惑だったようだ。報告を聞くや上司からはおめでとうの前にはっきり「とっても残念。がっかりした」と告げられた。まだマタハラという用語が公に認知される前だったか、非常にわかりやすく、あからさまな失望をはっきり告げられた。

当時設計部では「女性戦力の再強化」を方針に掲げ、私を設計の第一線で働く子持ち女性モデルにしようと目論んだ上層部が、広報部や人事部とタイアップしたメディアへの露出など、様々な施策を具体的に動かし始めていた時期だった。若い女子たちが「私たちもあんな風に素敵に働きたい!」と思えるような、建設業界で輝く女性のロールモデルを作ろうという会社の思惑を受けた私は、順調なキャリアローテーションの事実を作るため若干謎な異動もしながら、それなりのプレッシャーや重荷を背負いつつも、やるだけやろう!ロールモデルとしてしっかり立ちあがろう!と会社の思惑以上に誰より私自身が一番燃えていたさなか突然の「妊娠」だった。
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    植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

    ■Side1結婚してない側の女(全14回)を読む >

  • 離婚を考え始めた矢先に1人目を妊娠【小説・じゃない側の女~Side3あきらめない側の女 Vol.3】_1_5-2

    谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。

    ■Side2産んでない側の女(全15回)を読む >

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