No.150 俵

口ぐせは「芸人たるもの」。何かと空回りしております。

職業：美術館職員
My favorites：アート鑑賞、宝塚鑑賞、建築鑑賞、K-POP鑑賞、とにかく鑑賞。

昨今はおしゃれ迷子ですがなんとか生きています。
猫、夫、自分の３つの生命体で一つ屋根の下に生息。酒は飲めないが四文屋にいがち。

身長：168cm

tawara2525

2022年8月3日

ALL TIME BEST 矢沢あい展　いつだって少女漫画はすべての少女たちの味方なのだ

青春時代を共に過ごしたと言って過言ではない矢沢作品。その原画や描き下ろしイラストが一堂に会するだと……？感涙必須の現場に行って参りました。

この天候でお元気な人がいるのか疑問ですが、お元気ですか……。
水と塩を取りましょう、ナメクジの逆をいって生き延びてやる。

さて炎天下、新宿高島屋11階で開催されている「ALL TIME BEST 矢沢あい展」に参じました。
東京は8月8日までですが、このあと大阪、横浜を巡回予定とのこと！

>> ALL TIME BEST 矢沢あい展

ALL TIME BEST 矢沢あい展　東京展　
会期
2022年7月20日(水)～8月8日(月) ※会期中無休
会場
新宿髙島屋 11階特設会場
開館時間
午前10時30分～午後7時（午後7時30分閉場）
※最終日は午後5時30分まで（午後6時閉場）
主催
矢沢あい展実行委員会

平日の午前中に予約を取りましたが、11階だけ異様な熱気がビンビン感じられます。
誰の目線なのかという感想で恐縮ですが、老若男女問わず矢沢あい先生は大人気、ということが証明されたかのようで嬉しくなります。中には外国人の方も。

この展覧会、矢沢あい先生自らが監修したというではありませんか、先生、恐れ入ります！

展示物のメインは原画とイラスト。

特に「Paradise Kiss/ご近所物語/天使なんかじゃない/下弦の月/NANA」の作品がずらりと並びます。
直筆原画やイラスト、その数300点あまり。りぼんなどの掲載誌の付録や矢沢あい先生の出版歴史のコーナーのみ撮影禁止ですが、ほかはほぼ「撮影OK」という太っ腹っぷり。

最初のコーナーでは近年、先生が画業とされているメンズストリートファッションの変遷をたどる解説書『ストリート・トラッド～メンズファッションは温故知新』（佐藤誠二朗・著／集英社）に掲載した挿画が展示されており、初見の自分にはかなり新鮮でした。

現在40代の方は特にドンピシャ世代であろう矢沢あい先生の世界。

「天使なんかじゃない」、通称「天ない」の翠がまぶしくて、まみりんが愛しくて、「高校生活ってこんなに楽しいんだ！」と期待に胸膨らませたものです。

輝いて見える学園生活の中にも、苦しい恋や人間関係、思春期特有の悩みがあり、精一杯に生きる登場人物たち。
（原画はガラスケースで保護されているため反射がみられます、すみません）

「天使なんかじゃない」生徒会それは選ばれし者たちの聖域。
タイプのちがう二人の友情。前髪？もちろん伸ばしたよ

「ご近所物語」の実果子ちゃん、ツトムの二人の家の立地条件を何度夢見たか。
そう無理、もう生まれで無理です。でも想像せずにはいられないのです。

こんな幼馴染がいたら。
私にも、こんな夢があったなら。

「ご近所物語」実果子ちゃんの部屋の内装もひたすら、かわいい。
ファッションて楽しい！と思わせてくれました。

「Paradise Kiss（パラダイス・キス）」では高校生を超越し大人顔負けのファッションセンスと人生観を持った登場人物たちに圧倒されつつも、主人公の紫（ゆかり）に己を重ね合わせひたすら夢見ていました。紫と書いてゆかり。Ｅ…。
ファッションショーのシーンは鳥肌です。

「Paradise Kiss（パラダイス・キス）」そうだね紫、パラダイスに連れて行ってくれたよ
「ご近所」の主人公、実果子ちゃんの妹の実和子ちゃん。かわいくて人間らしくて大好きす

「NANA」の大崎ナナに憧れ、ハチこと小松奈々に共感し、幸子という存在のおかげで初めて同性に震撼。登場人物たちの細やかな描写、今読み返してみても神がかり的な作品だと改めて気づかされます。
えー、私はヤス派です。（派？）

NANA　大好きな「出会い」のシーン
幸子、あんたホラー漫画より恐怖だよ

展覧会の最後には矢沢先生直筆のメッセージ入り原画が。
先生、ありがとうございます。先生の作品のおかげで「胸が高鳴る」ということ知りました。

現実は自己倒錯・自己嫌悪・自意識過剰、と大変に苦しい青春時代でしたが、私だけじゃない、みんなそうなんだと教えてくれたのもまた、矢沢あい先生の作品でした。夢もみせる。でも、置いてきぼりにはしない。迷える少女の読者たちにそっと寄り添ってくれた宝物のような存在が、先生の作品の数々でした。またいつでも、漫画を開けば彼らに会いにいける。それだけで十分な気がしています。

人と一緒じゃなくていいということ、人は傷つきやすいということ。
生きるために必要なことを多感なあの時期に教えてくれて、本当にありがとうございます。