秋の気配に乗りうっかり夜ご飯に鍋を囲んだところ、汗だくに。まだまだ油断なりません。9月に騙されない。そんなある日、東京都現代美術館で行われている展覧会「MOTアニュアル2022 私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ」を鑑賞しました。10月16日まで。
4者、異なるアプローチで導き出す自身の社会への問い、違和感、心の奥底にあるものを掘り起こす作業が見て取れます。彼らが与えてくれる問いかけに向き合うことで、自分自身がどのように「時代や社会から忘れられた存在」である「わかり合えない他者」と関わりながら生きていくのか、考える機会を鑑賞者に与えます。
私が最も印象に残ったのは展覧会のオープニングをかざる工藤春香のインスタレーション《あなたの見ている風景を私は見ることができない。私の見ている風景をあなたは見ることができない。》。
2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件を題材としたインスタレーションは、なぜこの事件は起きたのか、問題はどこにあったのかを私たちに投げかけます。
容疑者は事件の動機を聞かれ「世の中のためにやった」と発言したことは記憶に新しいですが、この発言に対してSNS上で「(犯人の気持ちが)わかる」「責められない」といった発言が少なくなかったことも一部報道されました。この意識はどこから来たのか。なぜ、「生まれてきてくれるだけで良い」と思えなくなったのか。
会場の中心にはS字型の大きな年表が宙を舞います。片面には旧優生保護法を中心とした障害に関する法律などの歴史を、片面には障害者たち当事者運動に関してまとめた年表があり、表裏一体となっていることを感じられます。
生まれていい命と、生まれてはいけない命があるのか。
生んでいい人と、生んではいけない人がいるのか。
旧優生保護法は改正され、今は母体保護法と名称が変わりました。しかしこの法律にもまだ課題は山積しています。今の社会を生きる私たちすべてにこの歴史への責任があるのだと、感じずにはいられない展示でした。
私の偏った見方に惑わされず、マリソル世代の皆さんそれぞれの視点でみていただきたい、素晴らしい展示でした!
休館日:月(7月18日、9月19日、10月10日は開館)、7月19日、9月20日、10月11日
開館時間:10:00~18:00(展示室入場は閉館30分前まで)※最新情報は公式ウェブサイトにて要確認
会場:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1
電話番号:050-5541-8600
料金:一般 1300円 / 65歳以上・大学生・専門学校生 900円 / 中高生 500円 / 小学生以下無料