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今も20年先も愛せる時計、9つの提案【前編】

スタイリスト 伊藤美佐季さんPresents。40代で買った時計をこれからの「自分の美しさの軸」に

40歳前後を境に、若いころに買った時計がもの足りなくなってくる。肌や髪、体形が変わり始めると同時に、若いころには想像しなかった「20年後の自分」を意識し始めるのが40代。次に買う時計はいったい何がいい? レディスウォッチのスペシャリストでもあるスタイリストの伊藤美佐季さんの提案を参考に、そろそろ40代で買いたい「本気時計」を探そう。

※YG=イエローゴールド、RG=ローズ(レッド)ゴールド、PG=ピンクゴールド、WG=ホワイトゴールドを表します


40代で買った時計をこれからの「自分の美しさの軸」にする

未来を想い描くために 惚れ込んだ時計が必要

ただ時間を知るだけならスマホでも十分な時代。しかし、時計をとおして自分を見つめ直したり、未来に想いをはせたりと、時計は、単純に時を告げる以上のものをもたらしてくれます。時計は、その人の本質を表すもの。だから、自分が時計に何を求めるかを考えること=自分のスタイルやあり方について考えることだと思うのです。
  40代は、女性の人生の中で最も美しい時。自分とはどんな人間か、何が好きなのかが固まり、 かつ女としてまだまだ勢いもある。そんな今の自分が惚れ込んだ時計を買うことで、「この時計に似合う自分でいよう」と決心することが、40代で時計を買う一番のメリットだと思います。私自身が経験して思うことは、この先歳を重ねていくと、相応の努力をしなければ、時計の強さや美しさに見合う自分でいることは、むずかしくなっていく。そんな時、例えば「この時計をするならハイヒールをあきらめちゃダメ」とか「すっと伸びた背中で、白シャツに合わせたい」とか、美しさを極めた時計は、これから先、どんな自分でいたいかのモチベーションになってくれると思うのです。
 高い時計をつけるのが、ゴールではありません。大事なのは、その時計に似合うたたずまいの女性になること。ぜひ40代で、今後の美の基軸になるような時計を手に入れてほしいと思います。


■CARTIER

フランス語で「パンサー(豹)」を意味する「パンテール」。カルティエのシンボルでもある「パンテール」の名を冠したこの時計が、初めて発表されたのは1983年。2008年に一度生産終了になりつつも、圧倒的な支持を得て2017年に復活を果たした。伊藤さん自身が愛用するのもこれと同じ「パンテール ドゥ カルティエ」の一番小さいサイズ。「私がこの時計を手に入れたのも 40代でした。実は、同じ形で素材違い(ステンレス×イエローゴールドのコンビ)の時計を30代のころから使っていたのですが、素材が違うと、やはり手にした時の感じも全然違って。本当に美しいなと思える時計って、たくさんは出会えないものだから、同コレクションで素材をアップグレードさせていくのもアリだと思います」。

最初、自分には女っぽすぎるかなと思ったが、手にしたら思いのほかすっとなじんだと言う。「自分が好きなもの=似合うものではないので、実際にしてみると印象が変わることも多々。店員さんや友人など第三者の客観的な意見を聞くのもいいと思います。買って十数年経ちますが、いまだに"きれいな時計だな"と 惚れぼれします。仕事に追われている時、ふとこの時計を見ると、女らしい気持ちが戻ってくる。おしゃれする余裕がない時でも、手もとを見るたびに"そうね、私にはこの時計がいるわね"って思えて、なんだか癒されるような、穏やかな気持ちになれるんです」

今も20年先も愛せる時計、9つの提案1

優雅さと強さとを持ち合わせた究極の美

「これをしていると手首がきれいに見えるんです」と伊藤さん。「薄くてブレスが肌になじむのが気に入っています」。全部で3 サイズ展開、ダイヤモンド入りのものも。「パンテール ドゥ カルティエ」(YG、25×21㎜、クオーツ)¥1,992,000/カルティエ(カルティエ)



■CHANEL

「ボーイフレンドがしている時計を借りてきたような」デザインに、なんとも言えない色気が匂い立つ「ボーイフレンド」。男性的なものを通じて女性の魅力を引き出すスタイルは、マドモアゼル シャネルの精神を受け継いでいる。ラージとミディアム、スモールの3サイズあるが、伊藤さんはラージをピックアップ。「この時計は、メンズウォッチのような大きめのサイズ感が可愛い! 素材はまろやかなベージュゴールドで、女らしさを香らせるのが素敵だと思います」。

この秋から、ストラップがインターチェンジャブルとなり、かつふっくらしたキルティングパターンを施したカーフレザーが登場し、さらにメゾンの精神が色濃く。「艶やかなベージュゴールドの光と、マットなストラップの相性も絶妙。ストラップの種類も豊富にそろいますが、私は断然ブラックが好みです。ストラップで印象がかなり変わるので、必ず自分手にして相性を確かめて」

今も20年先も愛せる時計、9つの提案2

マニッシュだから引き立つマチュアな色香

腕を覆う大ぶりのフェイスが、華奢な腕を引き立てる。「"レディスなのに大ぶり"なこの時計には、メンズの時計をユニセックスで使うのとは違う、レディスならではの色気があると思います」。「ボーイフレンド」(ベージュゴールド、37×28.6㎜、手巻き)¥1,630,000/シャネル



■VANCLEEF & ARPELS

しなやかに腕にフィットするローズゴールドの華やかなブレスレット。手の動きに合わせて小さく揺れるクローバーのチャーム。メゾンが誇る最高の職人が手仕事で作り上げた時計からは、パリらしい優雅さと、崇高な気品が漂う。「さすがトップジュエラーの時計と、ため息が出るような美しさ。特にブレスレット部分は、腕になめらかに寄り添う精緻なつくり、表側がマット、裏側が鏡面仕上げというゴールドの磨き具合による質感の違い、手にした時のなんとも言えない凹凸感の陰影など、どれをとってもジュエリーさながら。この時計をすると、確実に変わってくるのが、所作の美しさ。時計を見る時の、斜め45度に動く目の動きも含めて、実に色っぽい。自分が女であるということを肌で感じさせてくれる時計だと思います」。

いくつになっても「女」を捨てずに、成熟した色香をまといながら生きていきたい、という想いを後押ししてくれるような時計。「こんな時計をしたおばあちゃまになれたらすごく素敵! 実は辛口好みとかモードな人がしても引き立つ時計だと思います」

今も20年先も愛せる時計、9つの提案3

所作までも美しく変える、時を告げる宝石

ブレスレットはもちろん、放射状に彫りを施したマザーオブパールのフェイス、ダイヤモンドのダイヤル、幸福のシンボルであるクローバーのチャームなど、すべてにメゾンのサヴォアフェールが息づく。「腕にした時のなんとも言えない重みも、すごく心地いいんです」。「チャーム クローバー ブレスレット ウォッチ」(RG×ダイヤモンド×ホワイトマザーオブパール、径27㎜、クオーツ)¥3,780,000/ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク(ヴァン クリーフ&アーペル)



■HERMÈS

アンカーチェーンをモチーフにした遊び心のあるデザインや、アリゲーターストラップの色合わせに、エルメスならではの高いセンスが感じられる逸品。「以前、パリに行った時、マダムたちがこぞってつけていたのが、この"ケープコッド"。気負わずに日常の中に溶け込んで、等身大の自分で愛せる時計だと思います。地金だけのものもありますが、これからも長く使うことを考えると、ダイヤつきのモデルをおすすめします。この時計は、ブレスレットと重ねても可愛い。ファッションとしてのウォッチが楽しめるのも、エルメスならではです」

今も20年先も愛せる時計、9つの提案4

手もとのレイヤードにも最適な〝しゃれ感〞が漂う

「グレージュのレザーストラップもしゃれていて、さすがエルメスだなとつくづく。名品時計って、単体で世界が完成してしまうデザインが多いのですが、これは、アクセサリーをレイヤードしても映えるように考えられているような気がします。デイリーはもちろんですが、お着物なんかにも合いそうです」。「ケープコッド」(PG×ダイヤモンド、23×23㎝、クオーツ)¥1,360,000/エルメスジャポン(エルメス)


▼後半はこちら

【Marisol12月号2020年掲載】撮影/長山一樹(S-14) スタイリスト/伊藤美佐季 構成・文/湯澤実和子

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