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アラフォー独身女に対する「既婚の私と未婚のあなた」という無意識の線引き【小説・じゃない側の女~Side1結婚してない側の女 Vol.2】

【連載第2回】植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。(全14回)
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が、女はそうはいかない。全く身に覚えのないことまで含めて「会社」という箱庭の、ことさら飲みの場においては、とにかくネタにされやすい。

・結婚していない女
=してないのか、できないのか微妙なとこだよね。あの人まあまあ歳だよね、なんかあるのかな。不倫でもしてるんじゃない? 身の丈に合わない高望みしちゃってるとか。あ!そういえばあの人、某役員の愛人してるって噂、聞いたことない?

・結婚したけど子供のいない女
=なんで作らないのかね、作らないんじゃなくて、できないのかな。どっちかに問題があるのかな?
 
・離婚しちゃった女
=浮気? 借金? 旦那じゃなくて嫁の問題? なんで別れたの? これから一人でどうするんだろうね、女一人の老後は寂しいよねえ…なんて具合に、いちいちいちいち興味を持たれ、女性よりも断然その手の噂が大好物で息が臭いおじさん達の酒のつまみになるのは常。

それだけじゃない。大抵のことにそこそこの耐性(なのか、あきらめなのかは微妙)を持つと思われている“アラフォー独身女”は、安パイゆえにさまざまな立場からの心ない口撃にもさらされやすい。

例えば。
どれだけ優秀であっても立場的には正社員より不安定と感じている派遣女子さん達や、出産や育児で、以前ほど思うように仕事ができない状況になったとか、そのせいで評価が下がったとか、理不尽な異動や配転をさせられたと思いがちな(それが事実なら問題だけど)育休明けの女性社員さん達など、彼女らそれぞれがなんとなく抱いている納得のいかなさや不満、鬱憤の「うさ晴らし」に使われがち……もとい結果としてたまたま使われやすいのが、“アラフォー独身女”に対する「既婚の私と、未婚のあなた」という無意識の線引きでのちょっとした構いだてだ。

「子供はいるといいよー、楽しいよー。欲しくないの? あぁだから結婚しないのか。一人が好きってこと?」

「夫とか子供のためって思うと頑張れるけど、自分のためだけってなんかむなしくなりません?」

「今日もニュースになってたけど、孤独死とか大丈夫? 何日も誰にも発見されないって怖いよねえ」

「一人暮らしだとインフルになってもうつす心配ないからいいね。うちは旦那がかかると私も必ずうつっちゃうの。薬飲んで異常行動しないか見ててくれる人がいないってことだよね? 窓のカギちゃんと締めて寝なね」

悪意がなくともこれら少なくない頻度とスピードで、ふいに投げつけられる言葉達から受けるダメージは、ボディーブローのように時間差でじわじわ効いてくる。

もちろんアラフォーにもなれば、表面上、無視するでも怒るでもなく、投げられたナイフをにっこり穏やかに無難にかわす技くらい習得している。でも実はしっかりもろに刺さってる。投げられた数分のナイフをズブズブと内臓に突き刺して、少しずつ流血しながら止血もできずに、それでも立ち上がり仕事する。

だって。給料分の働きは果たさないと、食べていけないから。誰に何を言われようが、会社を辞めるわけにはいかないの、誰も食べさせてくれないんだから。
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    植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。

    ■Side1結婚してない側の女(全14回)を読む >

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    谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。

    ■Side2産んでない側の女(全15回)を読む >

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