☆お話をうかがったのは…
埼玉県立大学大学院教授 藤縄 理先生
埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科教授。医学博士。理学療法士。リハビリ学の第一人者。監修した『がんこなコリが一気に消える!肩甲骨はがし』(宝島社)が話題に
■スマホを見る猫背姿勢が 肩甲骨をガチガチにする!
「肩甲骨は、肩の下にある天使の羽のような形の骨。腕を動かす要となり、体のバランスを維持する重要な役割があります」と藤縄理先生。こんな肩甲骨、ガチガチに固まっている人も多いと思うけれど、それにはこんな理由が。
「肩甲骨が硬くなるのはふだんの悪い姿勢が大きな原因。現代人はパソコンやスマホを見て、猫背の前かがみ姿勢でいることが多いですが、この姿勢だと肩甲骨が外に開き、胸の大胸筋や小胸筋、脇の前鋸筋などは縮み、肩甲骨まわりの僧帽筋や肩甲骨挙筋などの筋肉は外側に引っぱられた状態になります。これが続くと筋肉が緊張して血流が悪くなり、どんどん柔軟性がなくなって、外に開いたままガチガチに固まります。こうして起こるのが肩や首・背中のこりや四十肩です。疲労物質がたまりやすくなるので痛みが生じることも」
さらにこんなトラブルも……。
「背中が丸くなって姿勢が悪くなるのはもちろん、胸の筋肉が縮むのでバストが下垂しやすくなりますし、基礎代謝が落ちて脂肪が燃えにくくなり、太りやすくなります。全身の血流低下にもつながり冷えやむくみも起きがちに」
そこで取り入れたいのが、肩甲骨まわりの筋肉を柔軟にする“肩甲骨はがし”。まずは自分の肩甲骨のガチガチレベルをチェックして!
■肩甲骨の動き
肩甲骨と胴体をつなぐのは鎖骨の左右の関節だけ。あとは筋肉が肩甲骨を支えているので、そのぶん、自由に動く。下の図で示した6方向に動き、腕を動かす役割がある。
■肩甲骨が硬いとどうなるの?
1)バストが垂れやすくなる
肩甲骨が外に開いたまま硬くなると、胸の大胸筋や小胸筋は縮んだ状態になり、血流が悪くなってハリを失い、バストが垂れやすくなってしまう。呼吸も浅くなる原因に。
2)肩こりや首こりが起きる
肩甲骨まわりの筋肉が緊張してこわばると血流が悪くなって柔軟性が失われ、肩や首にこりが発生。こわばった筋肉が血管を圧迫して疲労物質がたまると、痛みも生じやすくなる。
3)基礎代謝が落ち、太りやすくなる
肩甲骨まわりの筋肉が硬くなって動きが悪くなると、筋肉が衰え、基礎代謝が低下。そのため脂肪が燃えにくくなって太りやすくなる。背中や二の腕にも贅肉がつきやすく。
4)四十肩になりやすい
肩甲骨が外に開いたまま硬くなった状態で腕を上げると、上腕骨上部の大結節という部分と肩峰(肩先の出っぱった骨)がぶつかり痛みが出る。これが腕を上げると痛みが出る四十肩。
5)冷えやむくみが生じやすい
肩甲骨まわりの筋肉が硬くなると血流が悪くなるため、全身の血流も悪くなって体が冷えやすくなる。脚などの末端も血行不良になるため、むくみも生じやすくなる。
6)姿勢がくずれる
パソコンやスマホを見て猫背の前かがみ姿勢が続くと、肩甲骨が外に開いたまま固まり、常に背中が丸くなってしまい、老けた印象に。全身の姿勢もくずれやすくなる。
■肩甲骨の可動域を広げて肩こりも、丸い背中も改善
肩甲骨まわりの筋肉をほぐし可動域を広げる効果大
「肩甲骨がガチガチに固まると肋骨にへばりついてしまいますが、理学療法ではこれを改善するために、肩甲骨と肋骨のすき間に手を入れてバリッとはがします。これが肩甲骨はがしです」
これを自分でできるよう考案されたのが今回紹介するセルフ肩甲骨はがし。
「肩甲骨はがしは、ストレッチや体操や筋トレを組み合わせたもの。こわばった肩甲骨まわりの筋肉をほぐして可動域を広げ、開いた肩甲骨を中心に寄せられるように戻します。肩こりや四十肩も改善するので、ぜひ習慣に!」
まずは基本の3つのステップから始めて!
【ほぐす Step.1】大胸筋ストレッチ
壁に手を当て、体前面の大胸筋や小胸筋を伸ばすストレッチ。手を当てる場所の高さを変えることで胸の筋肉の上部、中央部、下部を伸ばせる。
【ほぐす Step.2】後ろ腕ストレッチ
腕を背面で引き上げるストレッチ。開いた肩甲骨を中央に寄せ、胸を開く効果が。背中と腕の間が60度くらいになることを目ざして。