よしの女性診療所院長 吉野一枝先生
女性ホルモンが分泌されないことで、脳でパニックが発生
女性ホルモンの分泌量が減ると、 なぜ心身にトラブルが起きるのか、その仕組みをさらに詳しく伺った。
「女性ホルモンは、脳と卵巣の連携プレーによって分泌されていて、通常は脳の視床下部からエストロゲンを出せという指令が出され、これが卵巣に伝わるとエストロゲンが分泌され、排卵や月経が起こります。でも更年期になると脳が指令を出してもエストロゲンが分泌されないため、脳がパニックを起こして通常の何倍もの指令を出します。視床下部には体温や心拍や血流など体のさまざまな機能を司る自律神経の中枢もあるので、このパニック状態の影響が自律神経にも及び、バランスが乱れて、ほてりや肩こり、不安感などさまざまな更年期症状が起こるのです」
エストロゲンには生殖に関する機能だけでなく、心臓や血管をしなやかに保ったり、骨を丈夫に保ったり、悪玉コレステロールを減らしたりと多くの働きがあるので、減少することで体に起きるトラブルは多数。
「女性ホルモンの分泌が減ってくると、まず生理に現れます。生理の出血量が減ってきたり、周期が乱れてきたり、期間が短くなってきたりしたら女性ホルモン低下のサイン。無理なダイエットや、不規則な生活、喫煙、ストレスなどが原因で閉経が早くなることもあり、その場合は更年期症状も早く出やすくなります」
そのほか、女性ホルモンが低下してくると、健康診断の結果にも以下で示したような変化が出やすくなるので覚えておこう。
【 女性ホルモン分泌量の変化 】
女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量は20〜30代がピーク。35歳から緩やかに低下していき、40代からは急激に減少。閉経前後の更年期にはかなり少ない状態になる。女性ホルモンの減少が始まる年代から不調が出やすくなる。
【 更年期に自律神経が乱れる仕組み 】
卵巣機能が良好な若いころは、脳からエストロゲンを出してという指令が出されると、卵巣から正しく分泌される。
卵巣機能が衰えると、脳が何回指令を出しても卵巣からエストロゲンが分泌されず、脳がパニック状態に。それによって自律神経のバランスが乱れ不調が発生。
【 女性ホルモン低下のサイン 】
1.悪玉コレステロール値が上がってきた
コレステロールには悪玉(LDL)と善玉(HDL)があるが、エストロゲンにはLDLを減らし、HDLを増やす作用が。女性ホルモンが減るとLDL値が高くなりやすくなる。
2.中性脂肪値が上がってきた
エストロゲンは脂質代謝全体にかかわり、分泌量が減ると中性脂肪値が上がりやすくなる。ただし中性脂肪値はエストロゲンよりも食事や運動など生活習慣の影響のほうが強い。
3.血糖値が上がってきた
エストロゲンには血糖値を下げるインスリンを効きやすくする作用があり、分泌量が減ると血糖値が上がりやすくなる。家系に糖尿病の人がいる場合は特に要注意。
4.血圧が上がってきた
エストロゲンには血管をしなやかに保つ働きがある。エストロゲンの分泌が減ると、この働きは徐々に低下し、血管が硬くなって柔軟性も低下。そのため血圧が上がりやすく
5.体重が増えてきた
エストロゲンが低下すると代謝が落ちるので、太りやすくやせにくい体に。それにもかかわらず、若いころと同じように食べていると、太って元に戻しにくくなるので注意。
【 簡略更年期指数 】
強:毎日のように出現
中:毎週みられる
弱:症状として強くないがある
自分の症状の度合いに該当するものに◯をつけ合計点を算出。0 〜25なら問題なし、26〜50は食事や運動の見直しを。51〜65は婦人科へ。66〜80は長期の計画的治療を。81〜100は各科の精密検査に基づく長期の計画的治療が必要
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