☆お話をうかがったのは…
快眠セラピスト 三橋美穂さん
寝具メーカーを経て2003年に独立。睡眠のスペシャリストとしてテレビや雑誌、講演など多方面で活躍。著書に『驚くほど眠りの質がよくなる睡眠メソッド100』(かんき出版)などがある
【1】今の眠りに満足してる? よい睡眠とは?
ノンレム睡眠&レム睡眠の2つが十分にとれると脳も体も休まる
読者アンケートでは一日の平均睡眠時間は6〜7時間、6時間未満がともに44・8%。忙しい世代だけあって十分な睡眠がとれていない人が多数。さらに睡眠時間に満足しているかについては、66・7%の人が“いいえ”と回答。睡眠の満足度が低いようだが、そもそも質のよい睡眠とはどんなもの?
「よい睡眠がとれているかどうかは、日中にイキイキと過ごせているかで診断できます。午前10時から12時までは脳の覚醒度が最も高い時間帯。この時に疲れや眠気がなければよい睡眠がとれていると考えられます。疲れや眠気があったら睡眠の時間が足りていないか、質が悪いということです」
眠りの質を決める大きな要素が睡眠の種類だとか。
「睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があります。レム睡眠は、体は休んでいても脳は活発に動いている“体の眠り”です。一方、ノンレム睡眠は浅い睡眠から深い睡眠まで4段階あり、この睡眠中は脳も休む“脳の眠り”です。就寝するとノンレムの浅い睡眠から始まって徐々に深くなり、最も深い眠りに入ります。この時傷ついた細胞を修復したり、免疫力を高める成長ホルモンが分泌されます。そしてしだいに眠りが浅くなり、今度はレム睡眠に入ります。この時記憶の整理が行われ精神的ダメージが回復します。睡眠中はこのノンレム睡眠とレム睡眠がセットで70〜110分周期で繰り返されますが、2つの睡眠がどちらも十分にとれていると体と脳の疲労がとれ、よい睡眠と言えます。そのためにも睡眠は7時間前後が理想的な人が多いので、平日でも最低6時間はとりたいところです。また睡眠の質を知る目安になるのが“睡眠効率”。実際に眠っていたであろう時間÷寝床にいた時間× 100で計算し、85%以上なら質のよい睡眠と言えます」
この条件、クリアしている人、少ないのでは? 以下からはマリソル世代に多い睡眠悩みを解決する方法をご紹介。睡眠時間がとれない人も早速実践して質を高めて。
<よい睡眠のバロメーター>
◆日中にイキイキと過ごせる
よい睡眠とは日中にイキイキと過ごせているかどうかがバロメーター。脳の覚醒度が一日で最も高い午前10時〜昼12時の時間帯に眠気や疲れを感じないことも目安。
◆睡眠効率が85%以上
以下の計算式で自分の睡眠効率をチェックしてみて。
【2】夜、寝付きをよくする5つのルール
体内時計の乱れや交感神経優位の状態が寝つきを悪くする
「寝つきが悪くなる原因は、まず、体内時計が乱れていることが考えられます。人間の体には、明るくなったら起きて、暗くなったら眠るという体内時計が備わっています。不規則な生活をしているとこの体内時計が乱れ、夜になっても眠気が訪れにくくなります。
また、夜遅くまでパソコンやスマホを見るなどして脳が活性化していると、自律神経のうちの、体を活動モードにする交感神経が優位になり寝つきが悪くなる原因に。そのほか、日中の活動量が少ないことも眠気が訪れにくくなる要因。以下の方法でこういったことを改善するのが寝つきをよくする近道です」
<その1>体内時計を整える
「人間の体内時計は地球の自転周期の24時間より少し長めなので毎日これをリセットしないと地球のリズムとずれ、時差ぼけのような状態になります。これをリセットする方法が朝起きたら朝日を浴びることと朝食をとること。これにより朝が来たことを体内時計が認識し、リズムが整い、夜に正しく眠気が訪れやすくなります。起床時間と就寝時間を毎日なるべく同じにするのも効果的」
<その2>疲れをためる
日中にしっかり疲れをためることもポイント。「人間の体には、常に健康的な状態を保とうとするしくみがあり、疲れがたまると、このまま起きていては危険なので脳が眠らせようとします。でも、日中にあまり動かずだらだらと過ごしていると、疲れがたまらず夜に眠気が訪れにくくなります。日中は、軽い運動を取り入れるなど、活動的に過ごして疲れをためるようにしましょう」
<その3>体温のメリハリをつける
寝つきをよくするには体温のメリハリをつけるのもよい方法。「体の深部体温は明け方に最も低くなり、目覚める前から上がり始めて、最も高くなるのは午後7 〜9 時ごろ。この後、深部体温が下がり始めた時に眠気が訪れます。この深部体温の下がり具合が急なほど寝つきがよくなり、深い眠りにつけます。ですから寝る1 時間ほど前に入浴をしていったん体温を上げると、その後体温が急降下しやすく、この時に眠気が訪れ、寝つきがスムーズに」
<その4>リラックスする
眠りと深い関係にあるのが自律神経。「自律神経には、活動する時に働く交感神経と、休む時に働く副交感神経があります。日中は活動的に過ごして交感神経を優位にし、夜はリラックスして過ごし副交感神経を優位にすると夜の寝つきがよくなります。ですから夜は体や脳を活性化させるようなことは避け、心地よい香りをかいだり、好きな音楽を聴くなどリラックスして過ごして」
<その5>寝室を快適にする
寝室の環境の悪さも眠りを妨げる原因。
「寝具が合わなかったり、暑すぎたり寒すぎたり、騒音がしたりと不快な環境では寝つきにくくなります。リラックスできる寝具に替えるなど睡眠環境の改善を。暑くて寝苦しい時は寝る1時間前から寝室の冷房を25〜26℃にして冷やし、寝る時は28℃前後にすると涼しくて寝つきやすく、睡眠中も暑すぎず冷えすぎないのでおすすめ」
【3】夜中、ぐっすり眠るための5つのルール
パートナーと一緒に寝ていることや、体の冷えも途中覚醒の原因
「眠気をもたらすメラトニンは、年齢とともに分泌量が減るので、若いころより夜中に目覚めやすくなるのはある程度しょうがないことです。それ以外に考えられる原因は、寝つきが悪い場合とほぼ同じで、体内時計が乱れていたり、交感神経が優位になったままになっているためです。
また、パートナーや子供と一緒に寝ていると、相手の動きでどうしても夜中に目が覚めやすくなります。そのほか体が冷えていることも原因のひとつで、夜中にトイレに起きやすくなります。寝る前に副交感神経を優位にする工夫をし、冷え対策や睡眠環境の見直しをしましょう」
<その1>快眠ストレッチをする
寝る前に"快眠ストレッチ"をするのも効果的。「丸めたタオルを背中に当てて深呼吸や腕回しをするストレッチをすると、胸が開いて呼吸が深くなりリラックス。血流もよくなり筋肉の緊張もほぐれて眠りが深くなります」
<その2>お酒を飲まない
眠りが浅いからと寝酒をするのは逆効果。
「お酒をたくさん飲むと寝つきはよくなりますが、アルコールが分解される睡眠後半になると交感神経の活動が高まって眠りが浅くなってしまいます。質のよい睡眠をとるならお酒を控えましょう。夜にどうしても飲みたいならノンアルコールビールを。ビールの主成分・アミノ酸の一種のGABAは神経を落ち着かせる働きがあります」
<その3>ひとりで寝る
パートナーと一緒に寝ているのも眠りを浅くする要因。
「夫婦でひとつのベッドで寝ていると、お互いの動きがダイレクトに伝わったり、いびきがうるさかったりするなど、どうしても眠りが浅くなります。心身の健康を保つうえでもベッドは分けるのが理想的。子供とも別々に寝るのがベストですが、むずかしければせめて照明を明るいままで寝ず、真っ暗にして寝ましょう」
<その4>冷えを防止する
眠りと深い関係にあるのが自律神経。「自律神経には、活動する時に働く交感神経と、休む時に働く副交感神経があります。日中は活動的に過ごして交感神経を優位にし、夜はリラックスして過ごし副交感神経を優位にすると夜の寝つきがよくなります。ですから夜は体や脳を活性化させるようなことは避け、心地よい香りをかいだり、好きな音楽を聴くなどリラックスして過ごして」
<その5>呼吸法を試してみる
深く眠るためには就寝前に4 : 7 : 8 呼吸法を取り入れるのも有効。
「まず4 秒かけて息を吸ったら、7 秒間息を止め、次に8 秒かけて息を吐きます。これを何回か繰り返しましょう。自然と呼吸が深くなるので副交感神経が優位になるうえ、酸素が全身に行き渡るので疲れもとれやすくなり、眠りが深くなります。夜中に起きてしまって眠れなくなった時に行うのもおすすめです」
【4】朝、すっきり起きるための5つのルール
睡眠不足、体内時計の乱れ、体の冷えなどが目覚めを悪くする
「朝すっきりと起きられないのは、睡眠時間が足りていない可能性が高いのでしっかりと確保するようにしましょう。また、不規則な生活で体内時計が乱れているのも寝起きが悪くなる原因。睡眠不足だからと休日は朝寝坊をする人も多いようですが、そうするとよけいに体内時計が乱れます。なるべく規則正しい生活を心がけてリズムを整えましょう。朝起きたらカーテンを開けて朝日を浴びると、眠気をもたらすメラトニンの分泌が止まるので、これも眠気を吹き飛ばすコツ。また体が冷えていて体温が上がりにくいとエンジンがかかりにくいので冷え対策も大切です」
<その1>耳を引っぱる
なかなか起きられずつらい時に効果的なのが"耳引っぱり"。「両手で左右の耳たぶを持ち、ぐーっと下にゆっくり3秒引っぱってパッと離します。これを4〜5回。次に耳全体をもんだり揺らしたりします。耳には頭部に効くツボが多いので引っぱると脳が刺激されるうえ、耳は薄くて刺激が伝わりやすく、もむと全身の血流がよくなるので目覚めがスムーズになります」
<その2>カーテンを 少し開けて寝る
目覚めが悪いのはカーテンに問題がある場合も。
「眠気をもたらすホルモン"メラトニン"は、目に光が入ると分泌量が減って目が覚めるのですが、遮光カーテンを使っていると、朝になっても光が入らず暗いままなので眠気が覚めにくくなります。遮光タイプでないものに替えるか、遮光カーテンの場合は朝に光が入るように、端を少しだけ開けておくようにしましょう」
<その3>休日の起床時間の差は+2時間まで
「睡眠不足の場合、週末に少し多めに寝てもいいですが、土日が休みなら朝寝坊をするのは土曜日にし、起床時間を平日より2時間以上は遅らせないことがポイント。そして起きたら太陽光を浴びて朝食をとり、体内時計をリセットすること。日曜日はなるべく平日と同じ時間に起床するのが理想的ですが朝寝坊するなら1時間以内に。こうすれば月曜の朝もすっきりと起きやすくなります」
<その4>最低6時間寝る
忙しくて寝る時間がないと言うわりには、寝る前に30分以上もスマホを見ていたりと、だらだらと起きて睡眠不足になっている人は意外と多いもの。「これを防ぐため、就寝時間を決めてアラームをかけるようにしましょう。それを合図にほかのことはせず寝るようにすれば早寝の習慣がつきます。そして平日も最低6時間は寝るようにし、不足分は日中に仮眠をとって補って」
<その5>目覚ましのスヌーズはOFFに
目覚ましのスヌーズ機能は使わないほうがおすすめ。
「アラームを早めの時間に設定し、スヌーズをセットしておくと、結局スヌーズが鳴るたびに止め、ギリギリまで寝ていることに。それなら最初からギリギリの時間にアラームをかけておけば、そのぶん長く眠れるうえ、1回でシャキッと起きられます。また、目覚まし時計を遠くに置くと、止める時必ず起き上がるので◎」