マンモグラフィと超音波検査の結果、乳がんの可能性が高いと言われ、詳しい検査が始まった。心の準備もままならず検査は進み、夫に何と言おうか先生に相談するケビ子であった。
乳がん・ニューライフ (第3回はこちらから)
第4回目は検査の結果を夫にどういうテンションで伝えるかに苦心する。
夫になんて言おうか、どういう態度が良いのか。
病院を出てドトールまで歩く間は、やぶれかぶれの自暴自棄。
仕事のストレス、家庭のストレス、誰かのせいにして暴言を吐きたい気持ち。
バカバカバーカアホアホポンタ! そういう独り言を言いながら歩いた。
同時に先生が言うようにステージ1だとしたら、それほど大変じゃないのではないか?
そうだとしたら「全然大丈夫だよ~」としれっと過ごすというのもありだなという気持ち。
当時は無知なため、今では考えられないほどステージに対して簡単な見方をしていた。
また一方で「この体験はネタになるな」という妙なほくほく感も間違いなくあった。
喜怒哀楽がフルスペックで一気にアップデートされたような混乱であった。
夫は日ごろから心配症で世話焼き。
私が具合が悪くなると居ても立っても居られない愛情深い男。
私が風邪で早退すると、夫も1時間後には早退してしまう。そういう男。
夜中にお手洗いに起きると「大丈夫か」と一緒に起きてしまう男。
一方で大きな地震があってもまったく目が覚めない男。
それが我が夫である。
私が夫の立場だったらどうだろう。
どういう態度や報告だったら良いだろうか。
ようやくこの目線が帰って来た。
私が夫だったら、妻にぶっきらぼうに何でもないと言われるとやはり傷つく。
私が夫だったら、ぜーんぜんへっちゃらのへ~! と道化になられても心配が増える。
私が夫だったら、あなたのせいだと暴言を吐かれると自分を責めてしまう。
当たり前だ。
素直に夫に現状を伝え、甘え頼ろう。それで良いのだ。
当たり前の答えを出すのにはほんの30分にも満たないドトールでの時間が必要だった。
その足でスーパーに寄り、卵と牛乳とバターを買って帰宅した。
また近いうちにケーキを焼くための材料。
ケーキを焼くのは私のストレス解消法。
妻が大好きなファミレスを断るほど落ち込んでいると思っているのだろう。
彼なりの遠慮と緊張が伝わる。
その証拠にいつもは知りたがりの男が「どうだった?」と聞いてこない。
スーパーで買ってきた卵をパックから出して冷蔵庫にしまいながら先生のアドバイス通り「がんの疑いがあるからいろいろ検査をすることになった。あなたにも一緒に来て欲しい日があるから空けといてね」とスケジュールを確認した。
「わかった」と答えたきりこの話を自分からはしてこない。
しかし、ずっと落ち込みを隠し切れない態度が見て取れる。
気がつくと黙り、元気がない。
地蔵のようにじっとしてときどき小さくため息をついている。
こんなはずじゃなかった。こんなことが起きていいはずがない。
私が夫を幸せにしたいと決めた結婚なのに、どうして私はこんなことになった。
前向き、ポジティブ
ばかみたい
そんなことどうでもいいのだ。
しっかりしないと。
母ちゃんにはいつ言おうか。
この日、母ちゃんは2週間前に入院した病院をちょうど退院した日と重なった。
明日は退院祝いで実家に顔を見にいく予定にしていた。
これ以上心配かけたくない。
本当に自分がいやになる。
仕事はどうする?
マリソルのアラフォー婚活お悩み相談はどうする?
思考にバイアスかかるよね。やめ時? それでいいの?
いろんなことを考える。
まだ決まってない。検査も終わってない。
疑いがあるから調べているのであって、落ち込むにはまだ早い。
冷静になろう。
夫に甘えよう。
できるだけ一人で考えない、ということに挑戦してみよう。
できるかな。
できるよね。
やらなくちゃね。
つづく
*次回【Vol.5】は2/11公開予定です
治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありません
43歳で結婚、47歳で乳がん。
心配性の夫、奴さん(やっこさん)はなぜか嬉しそうに妻の世話を焼いている。Instagram(@kbandkbandkb)