サンルイ・インターナッショナル代表。客室乗務員時代に、病気の治療を通して植物療法に出会う。フランス国立パリ13大学で植物薬理学を学び、帰国後現職。近著に『潤うからだ』(ワニブックス)
【1】デリケートゾーンのケアはなぜ大切なのか
健康と生命の扉であり 粘膜でできている繊細な膣
「あなたは、自分の膣に自信がありますか?」もし面と向かってこんなことを聞かれたら、ドキッとしてしまうもの。店頭にデリケートゾーンのケアアイテムが各種並ぶようになった今でも、やはり口に出すのは躊躇(ちゅうちょ)してしまう。でも、膣は「女性が女性として健康に幸せに生きていくうえで一番大事な場所」と語るのが、植物療法士の森田敦子さんだ。
「フランスで植物薬理学を学んだことで私は、食欲・性欲・睡眠欲のバランスが整って初めて私たちは不調と向き合うことができるのだ、ということを知りました。帰国後、およそ10年前から膣の大切さを少しずつ語っていましたが、それはひどい逆風でした」。
そんな状況もここ数年で変わってきたが、まだ世界的に見て日本の女性の膣に対する意識は低い、と森田さん。なぜデリケートゾーンのケアが必要なのだろう?
女性として急激な体の変化を迎える時期ならではの配慮が必要、と森田さん。「プレ更年期が始まるこの年代は、イライラや鬱っぽい症状が出たり、体力が落ちて今までのように無理がきかなくなってきたり、物覚えが悪くなったりと、さまざまな不調が訪れます。それは女性ホルモンのプロゲステロンの分泌量が低下することから起きるもの。でも、膣まわりをきちんとケアしていれば膣まわりの老化を遅らせたり、その変化を穏やかなものにすることはできるのです」
では私たちが今から健やかな体を取り戻すためには、どのようなケアを取り入れればよいのでしょうか。
生理、排泄、出産、セックス。 生命のカギを握る 大切なゾーン
顔のお手入れは頑張っている、仕事も家族のケアも頑張っているのに、自分の一番大切なところのケアができていない。そんな私たちマリソル世代に、改めて森田さんからメッセージをもらった。
「有能で責任感の強い女性ほど、おろそかになってしまっているかもしれないのが自分自身のケア。でも一日にほんの1分でも膣まわりに目を向け、ケアをすることで、膣がうるおい、柔らかく温かくなります。それは女性自身を、さらに周囲との関係を柔らかく温かくしてくれます。そのことで仕事仲間や取引先、パートナーや子供との関係も温かくうるおったものになり、すべてが心地よく回っていくきっかけになるはずです。美容や健康だけでなく、幸せへとつながっていくのがデリケートゾーンのケアだということを頭の片隅に置いていただければと思います」
美容ジャーナリスト、エッセイスト。美容やファッションの潮流に社会的な視点を加え、美しくありたいと願うアラフォーの未来を照らす。新刊『されど“男”は愛おしい』(講談社)をはじめ、著書多数
【4】放ったらかしているのは日本人だけ?プライベートゾーンのお手入れ
あなたはもう始めているだろうか。 秘密の場所=プライベートゾーンのお手入れを
初めて説明を受けたときは、ちょっと赤面してしまうほど、抵抗を感じた。でも恐る恐る使ってみたその日から、もうそれは習慣になった。デリケートゾーンともプライベートゾーンとも言われる下腹部のケア。文字通りとてもデリケートで、他の皮膚に比べて40倍も経皮吸収率が高いとされ、ペーハーも2から3、強酸性と言っても良い部分にアルカリ性の石鹸を不用意に使うと刺激が強すぎる。いわゆる常在菌も奪うばかりか、傷を付け、だから痛みや痒みが起きるのだという理屈を聞けば、プライベートゾーン専用の化粧品を使わなければいけないのは火を見るより明らかだ。
しかも顔の肌と同様に、いやそれ以上に老化する。目と同じ粘膜だから、決して乾いてはいけないのに、加齢とともにカピカピに乾き、だから硬くなったり、たるんだり。実はそういうことが想像以上に様々な不快感をもたらしていることがわかってきている。女性ホルモンとも直接的に関わっているところだけに、膣の老化が肩こりや頭痛や鬱のようなものにも影響しているとまで言われるのだ。
じゃあなぜ今まで習慣にならなかったの? 実は、これほどまでに放ったらかしにしてきたのは日本人だけ、と言う説もある。欧米では生理が始まったら、こうしたケアは母親が娘に教える種類のもの。ビデが当たり前のように使われている国では、昔から1つの常識なのだ。
つまり、日本は極めて遅れてる。生理的に必要なことなのに、性的なことと一括りにしてタブー視してしまう傾向が、この国にはあるようだ。だから自分の大切な部位なのに、子供の頃に触れてはいけないと言われたのをずっと守っていたりする。それはおかしいと言うことで、この分野、ここ数年で日本発進のブランドが一気に増えてきている。
例えば、下着のおしゃれ。“下着にこそお金をかける女が美しい”という価値観も、そこから派生したものに違いない。いやみんな頭ではわかっているのだ。見えない所ほど美しく……部屋の片付けができないのも、バッグの中がごちゃごちゃなのも、シーツをマメに変えないのも、自分の美しさを内側から壊していると分かっちゃいるけど、ついついおざなりになってしまうのが“裏地美容”なのだ。
ほとんど死語に近い瀕死の状態にあるけれど、「奥ゆかしい」という言葉がある。言うまでもなく、“上品で控えめなこと”だけれど、もともと「ゆかしい」は、心がそちらに強く惹かれることを指し、“明け透け”ではなく“秘めたる美”があるからこそ「知りたい、見たい」と思わせる。つまり、“見えないところにまで行き届いていそうな人”だからこそ、もっと知りたいと思わせるという意味にとってもいい。まさに日本語にしかない価値観だから、死語にはしたくない。日本古来のエレガンスを表現する言葉として、ちゃんと残すべきなのだ。そういう形容詞と共に、「下着にこそ贅沢する」という美意識も死んでしまうのだから。言葉自体が“お清め”みたいなものなのだし。
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