入院、手術日が決まりいよいよ治療が始まる。予定が決まるとむしろめったにない入院が楽しみに思う気持ちがなくはない。順調に事前準備リストをこなしていく。
乳がん・ニューライフ (第9回はこちらから)
希望した個室に入院できることがわかり、心からほっとした神経質なケビ子。診察時に先生から「ご主人が『大事な妻なんで』って言ってたよー」とからかわれる。
前開きのブラ、ドライシャンプー、Wi-Fiルーター、などなど。
なんせコロナ禍で面会禁止となり、不足があっては困るのだ。
前開きのブラは先生から形が崩れるのを防ぐためにしっかりとおちちをホールドするものが良い、色は黒と言われた。
看護師が「しまむらとか、ユニクロでもあるみたいですよ」とアドバイスをくれ、帰り道でしまむらに行った。
しまむらにあるのはスポーツブラ。なるほどこういう感じねと下見だけして帰宅。更にネットで調べてみた。
テレビで見かける著名な医師監修のブラを見つけた。口コミも良く、心惹かれたが売り切れ。再販希望を登録した。
大手通販サイトの売り上げ一位というブラは試しに買ってみた。口コミも悪くなく、価格も良心的。
更に下着メーカーが出しているブラも買ってみた。口コミは値段が高いことを書いている人が多かった。
さらにユニクロはオンライン限定(当時)で前開きブラを販売していた。口コミは悪いことも多いが、悪く書いている方が買ったサイズをみると自分とは違う。大きなサイズの方からの悪い評価が目立ち、自分と同じサイズの方の口コミを見ると概ね好評だったので安心して購入した。色は黒がないものの紺があった。
結果、医師監修ブラ、通販サイト一位のブラ、下着メーカーのブラ、ユニクロのブラと4種類購入してみて入院中に使うことにした。
全て前開きで色は黒か紺。サイズはアンダーよりもトップのサイズに合わせて購入した。
結果、今もってリピートしながら着用しているのはユニクロのものである。
医師監修のブラはおちちをホールドする機能に長け、形がとてもきれいになる。その分アンダーの締め付けがきつく、入院中は管だらけの体に食い込んで痛かった。それがトラウマとなり使わなくなった。
通販サイト一位のものは数回洗濯して型崩れした。
下着メーカーのものは悪くないが良くもないという特徴のなさ。
ユニクロは素材がエアリズムでさらさらしているうえに前開きのボタンが他社は4つのところ5つあってしっかりと留まるのが気に入り愛用することとなった。
退院してからユニクロのブラを買い足した。
今度はアンダーバストのサイズに合わせて1サイズ小さいものを。
これでしっくりしっかりホールドされた。
ネットフリックスでドラマを見まくるのだと息巻いてWi-Fiルーターを借り、積んでいた本を持込み、個室ならお肌のお手入れもできるわね、とシートマスクや毛抜きやサンプルでもらった化粧品などを持ち込んだ。
シャワーはそれほどできないだろうからドライシャンプーと薄いタオル、シャンプーブラシ、ヘアブラシも持ち込むことにした。洗濯に備え、部屋干し用の道具も忘れずに。
入院当日の朝。
数日はシャワーも浴びられないだろうからと念入りにシャンプーをした。
Ukaのケンザンブラシを二つ使って頭皮をマッサージ。2回シャンプーして頭がすっきり。
着替えて家事をし、9時半に家を出た。
近所の氏神様に挨拶してから病院に行こうと夫から提案され、うれしい気持ちで神社に寄り、病院に着いた。
10時のアポイントだったが少し早く到着した。
受付を済ませ、5万円の預かり金を支払った。
病院によっては10万、20万にもなるらしい預り金。これは現金のみの扱いだそうだ。
領収書をもらって、個室が取れたことを聞いた。心からほっとした。
個室は差額ベッド代がかかる。しかし長いこと働いてきて、誰に遠慮が必要か。
自分の快適のために自由に使えるお金があるというのがこれほどに安心をくれるのかと思い知った。
神経質を自覚しているため、他人の音が気になってしまう。
自分の音が迷惑をかけてないか気になってしまう。
人がいるとナースコール一つ押せる気がしない。
蓋が閉まっているトイレに怖くて入れない。
そういう自分には個室がなんとありがたいことか。
看護師から大まかな手術の流れ、主治医から手術の説明、その後は手術室の担当看護師、リハビリ担当者、麻酔担当者、栄養士、外科の回診ととにかく人がたくさんやってきて1人の時間がなかなか確保できないほどであった。
暇だろうからとポケットWi-Fiを借りてネットフリックスでも見るかと思っていたがまとまった時間が全く取れない。
そして全くドラマを観たい気持ちにならない。
毎日一緒が当たり前の夫。少しの間でも離れて過ごすのが本当に寂しい。
看護師に手術前に心配なことはありますかと聞かれ「夫の夕飯が心配で」と答えたら「わかります、わかります」と爆笑された。
夫は夫で主治医に「大事な妻なんでどうかよろしくお願いします」と真顔でのろけ、我が夫婦がいかに愛し合っているかが表沙汰となった。
夫の存在というのは不思議なもので、縁あってメオトになったものの、今では自分以上に自分の生きるエネルギー源となる存在である。
私のことだから今もって独りだとしたら治療に前向きになるだとか、より良くいきたいだとか、いわゆる生きることへのポジティブさを持っていなかったのではないか。
結婚するまでは長生きは絶対にしたくないと思っていた。
早いところこの世にグッバイと思っていたのが、結婚した途端に夫とあれやこれや楽しく過ごしたいと煩悩が増えた。
長々と書いたが、夫のためにひいてはそれは自分のために健康でありたいと願う。
それこそが愛であろう。昔の人がI love you を御身大切にと訳したように。
つづく
*次回【Vol.11】は5/13公開予定です
治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありません
43歳で結婚、47歳で乳がん。
心配性の夫、奴さん(やっこさん)はなぜか嬉しそうに妻の世話を焼いている。Instagram(@kbandkbandkb)ピンクリボンアドバイザー(初級)資格保有
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