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「病院食と術後の生活」【ケビ子の乳がん・ニューライフ vol.13】

第13回目 「病院食と術後の生活」病室でナポリタンのことばかり考えていました。

術後3時間でリハビリを開始し、数日ぶりのシャンプーが思いのほか大変だったケビ子。

乳がん・ニューライフ (第12回はこちらから)

第13回は病院の食事と入院生活について。

【病院食の1500キロカロリーってなんかシンプルだよね】
入院前に栄養士と面談をした。アレルギー食材の有無と普段の食生活をヒアリングするのが目的のようだ。
ちょうど5月末からダイエットをはじめ、あすけんというアプリを使ってカロリーとPFC(タンパク質、脂質、炭水化物)バランスを意識していたところだったので、いつもの知ったかぶりで偉そうに日ごろの食生活をアピールしていた。


ところがいざ入院生活となり、事前ヒアリングでは回答した記憶がないヨーグルトが禁止食材とされていた。どうやら今回の入院とは全く関係ない検診で同じ病院の婦人科を受診した数年前にたまたまヨーグルトを食べて蕁麻疹が出たことを回答していたためにそれが引き継がれて禁止食材となっていたようだ。ヨーグルトが禁止食材なのかと何度か配膳の際に聞かれたので「いやむしろ好物です」と物乞いし、無事食卓にジョアやらフルーツヨーグルトやらフルーチェが並んだ。


それにしても普段の生活でも1500キロカロリーから1600キロカロリーを意識しているが、病院で出される1500キロカロリーというのは「こんなに質素なの?」と思ってしまうほどの内容である。
味付けは幸い塩味よりも出汁を効かせた味付けで物足りなくはないが、よくもまあこんな小さな魚を切り身にしたね、という煮魚やこれはしゃぶしゃぶ用の肉を焼いたね、といった小さな幸せが毎食のメインとなった。味が良い上にデザート代わりのヨーグルト類もついてくるので写真映えするのか、つい一か月前まで別の病院に入院していた母親に写真を送るとすぐに電話がかかってきて「羨ましい美味しそうだ」となぜか嫉妬された。


廊下の掲示板に献立表が置いてあり、ご自由にお持ちくださいと書いてあったので部屋で読んだところ、よりによって私の手術日にすき焼きが出たこと、そして私が滞在するであろう期間にはずっと食べたいと思っていたナポリタンは出ないことがわかり小さく絶望し天を仰いでかぶりを振った。



「病院食と術後の生活」【ケビ子の乳がん・ニューライフ vol.13】_1_1
【貴重な一人時間だが全然一人になれない】
困ったことに入院してからお通じがない。
お腹が張って食べられないからと食事を残すと栄養士が飛んでくることがわかり、そういうシステムであれば食べるしかないなと毎回食べるようにしたのだが、便秘は続いた。


便秘の薬を貰ってもお便りはない。突然の来室が多く気が張っているのだろう。気が張ってお腹も張って破裂しそうだが、栄養士が飛んできても困る。動かないわりに毎食150グラムのご飯はお腹にどでんと居座っている。それなのに退院したらその足でナポリタンを食べに行きたい。食い意地こそが娑婆に出る原動力である。


入院中は長期の貴重な一人時間だから、と使ってみたかったちょいとお高めの化粧品を揃えて持ってきていた。何なら朝昼晩パックもするつもりで。
ところが、個室が取れたとは言え、ひっきりなしに誰かが来る。確かに一人の時間なのだが、一人ではない。手術日に夫がこっそりと差し入れてくれた大福さえ、食べている最中に来室があり、口の周りが白いのをみられたらどうしようと封を開けられないくらいの忙しさであった。(消灯時間後に食べた)


シャワーがままならないこともあり、結局洗顔して乳液をほんの少しつける程度しか手入れはせず、自宅にいても日焼け止めは欠かさない私でもここ病院では手術前のチェック項目に日焼け止めは塗ってないよね?という項目を見てからはああ、しないほうがいいのだなと認識して万が一に備えて塗らないことにした。
つまりはりきって持ち込んだ化粧品はほぼお守りとなったにすぎず、退院するときに夫に「え、きれいになった」と驚かせることはできないことが確定した。


【好奇心は体力と比例するようだ】
同様の理由で時間を持て余すだろうからとポケットWi-Fiを借りて配信ドラマ三昧じゃ!と意気込んでいたが、これもまとまった時間はあるようでなく、それよりも観る気に全くならず、持ち込んだパソコンはこうして日記を書くくらいの役割しかない。
それでも書くことは時間を忘れ集中できるうえに誰かが部屋に来ても口の周りの粉を気にすることなく中断できるためとても良かった。しかし、大部屋だったらこのパソコンのタイプ音でさえ他の人の迷惑になるのではないかと気になってしまうだろうから、個室でカチカチとタイプし、時折エンターボタンを強めに押して爽快感を味わうことはある種ヒーリングとなった。


ドラマと同じ理由で持ち込んだ本はぱらぱらと読んだ。しかし何を持ち込むかが成否の分かれ道だろう。何を思ったかまとまった一人時間への過度の期待が分厚い戦争物語を選ばせ、普段なら読むスピードを驚かれるくらいの速読ケビ子が牛歩でページを繰るというありさまである。軽い内容の雑誌や時節柄オリンピックの選手特集などそうしたものの方が良かったなと思った次第。かといってネットでニュースを読む気にもならず、私だけかもしれないが好奇心が体力と比例して鳴りを潜めていることを実感している。


麻酔と乳がんがテーマの「花岡青洲の妻」は再度読みたいが、これも恐らく入院中は漢字の多さに入眠導入アイテムとなるくらいのものだろう。
とにもかくにも日常とは気分が全く違うということは明確だ。
あれしよう、これしようはひとまず置いて、休むのだ!


「ぐりぐりを取ったばかりだからね」花岡青洲の妻という小説では乳がんのしこりをぐりぐりと表現していたことを思い出した。



つづく

*次回【Vol.14】は6/24公開予定です
※この記事はケビ子さんの体験に基づいて書かれており、2021年12月現在の情報をもとにしています。
治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありません
カモチ ケビ子
43歳で結婚、47歳で乳がん。
心配性の夫、奴さん(やっこさん)はなぜか嬉しそうに妻の世話を焼いている
Instagram(@kbandkbandkb)ピンクリボンアドバイザー(初級)資格保有

 

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