数々の検査を経ていよいよ乳がん告知されたケビ子。告知の時には涙も出ず、気持ちが切り替わっているから不思議なもんだ。
乳がん・ニューライフ (第8回はこちらから)
治療について説明を受け、入院・手術日を決める。誕生日、病室で過ごしたくないよね。
いざ告知を受けても大きな心境の変化はなく、やはり不安な状態で検査をこなし、大きなあざと痛みに耐える日々こそが病気と治療を受け入れる絶妙な待機期間になった。
告知は7月5日。
先生はチャーミングな笑顔でこう言った。
「手術は最短だと明後日7日の水曜日いけるよ?七夕。どうする?やっちゃう?」
「やっちゃえ、NYUGAN!」
そうノリで答えるわけにもいかず、さすがにせっかちな私も今日の明後日で手術というのは心の準備も体の準備もお金の準備もできないではないか。
隣で話を聞いていた夫も苦笑いをしていた。
通院の回数や入院を考慮するとケビ子なりの病院選びのポイントをまとめる。
・通いやすい距離にあること。体力のあるうちは交通機関を乗り継いで移動も簡単だが、手術後の体力で家族が同行できない場合も鑑みると自力で難なく移動できる近距離が望ましい。近所だと勝手がわかり時間もつぶせるし、余計な不安も緊張もない。
・総合病院であること。いろいろと検索する中で、最初の違和感を近所の内科などかかりつけ病院に行き、そこでは検査が全部できず、紹介をもらって数か月経ちというのを数か所繰り返して進行したという事例を読んだ。
最初からすべての検査が一か所で行える設備が整っている病院に行くと間違いない。
・検査の初期段階で病院の評判や先生との相性は気にしすぎない。
そうしたソフトの部分は自分も受け身にならず積極的に情報収集してコミュニケーションをとるなど出来ることはしていこう。
とにかくケビ子としては「近くの」「総合病院」推しである。
単純に面倒くさがりという性格も否定しない。
手術日をいつにするか。
「7月23日は誕生日なので病室で過ごしたくないです」とわがままを言い、誕生日翌週となった。
7月28日入院、7月29日手術。
「今回のオリンピックは幸い出場しないので、この日程で大丈夫です」とにわか日本代表アスリートぶって回答したが先生は「あ~東京オリンピックは出場なしね」とジョークを受けてくれた。なかなかの相性である。
7月28日の入院までに準備することをリスト化した。
物品調達もあれば、仕事の段取りもある。中にはがん封じ神社への参拝という文字も躍る。
幸い、今の仕事はそこまでタイムマネジメントが必要なものでもないし、我ながら運が良いことにコロナ禍で長いこと帰国していなかったニューヨーク在住の上司が7月末に帰国すると言うので、仕事上は心配なく休める環境が整った。
入院は個室を希望したものの当日にならないとわからないと言われ、個室の前提で持ち込む荷物を準備した。
少し神経質な性格を自覚しており、せめて手術の前日と手術日、手術翌日は個室で過ごせたらと祈って過ごした。
年女の頃には体の不調が出るものだと聞いたことがあるが、「そういうものだ」に当てはまる型式通りの女でなんだか微妙だ。
めんどくさがりの夫が妻の病気が理由なのか今年は一生懸命誕生日の準備をしてくれた。
素敵なレストランを予約してくれ、デザートプレートまで準備してくれていた。
お皿にHappy Birthdayと書かれたデザートプレートがとにかく好きで、誕生日はこれさえあればご機嫌になる。なんとも特別な気持ちにしてくれる不思議な皿だ。
ご機嫌で食事を終えて帰宅し、テレビでオリンピックの開会式を観た。
誕生日が祝日となり、東京オリンピックが開会式を迎える。
来週の手術と相殺してもハッピーに傾く祝日誕生日である。
オリンピックの開会式にあたってはこれでもかと問題が出た。
大きな本番を前に騒ぐ人がいる。しっかりと準備をする人もいる。
どういうアウトプットだとしても称賛する人がいれば酷評する人がいる。
声が大きい人が力を持っているように感じる時代だが、そういうわけではない。
本質を見失うな、という示唆を貰ったつもりで自分の病気についても準備はしっかりとするが、思い通りにならないことがあったとしても本質を見失うことなく冷静にいようと思えた。
自分の価値観や優先順位が結婚を機に大きく変わった。
今回の病気でさらにシンプルになっていくのを感じている。
いやなことはしない。我慢はしない。無理もしない。
何かあったら病気を理由にわがままを言おう。それでいい。
つづく
*次回【Vol.10】は4/22公開予定です
治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありません
43歳で結婚、47歳で乳がん。
心配性の夫、奴さん(やっこさん)はなぜか嬉しそうに妻の世話を焼いている。Instagram(@kbandkbandkb)
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