「流れに身を任せて生きる」と「無気力 / 怠惰 / 無責任」は違うのに【小説・じゃない側の女 番外編~酸化に負けない側の女 Vol.3】

2018年10月22日
【連載第3回】好む好まざるにかかわらず「じゃない側」からはそう簡単に抜け出せない。すべてのアラフォー女性に送るWEB連載小説の番外編『酸化に負けない側の女(Side理沙)』
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真木にもあたしにも子供がいないから、3人で集まった時、結花が自分から率先してお子たちの話をしてくることはない。が、あえてしないというわけでもない。

ある時、それもこのマスターのバーだっただろうか、真木が結花にひとつ子供に関する質問をした。

「この前テレビでね、“子供は両親を選んで生まれて来る”っていう、感動のストーリーをやってたの。あれどうなの? 結花どう思う?」

「どうって。知らない。そうなの?」

「それを結花に聞いてるのよ」

「考えたこともない。特に興味もない」

「そういうもの? その番組観たうちの会社の子持ちの女子たちは、自分の子供にどうだったか聞いてみたくなった、って言ってたよ」

「聞いてどうするの? その人たち」

「結花の子供たちが、もし覚えてたらどうする?」

「どうもしないわ。ただもし、あえてわざわざ私のことを選んで生まれて来ましたって言われたら……」

「やっぱり感激しちゃう? 泣ける?」

「なかなか見る目があるから、これから先も君たちは大丈夫でしょうって言うかな」

「そっけない!じゃあ逆に、たまたま成り行きです、とか、あえて選んだわけじゃないけどなんとなくです、ってはっきり言われたら、ちょっとがっかりする?」

「でしょうねって思う。だって現実社会だってそうじゃない? 誰もがいつも積極的に何かを選択しているわけではないし、できるとも限らない。それでも生まれたからには、特に積極的に選んだわけじゃない道でも、その道を精一杯歩いていかなくちゃいけないことも多いでしょ?」

ま、それは確かに。その通り。
……と、クールでごもっともな結花のコメントに思わずうなずいてしまう、真木とあたし。

「だからあえて選んでママの元に生まれたわけじゃないんです、たまたまなんですって聞いても全然驚かないわ。そもそも私のポリシーは “流れ着いた先で本気を出せばいい”だもの。だからたまたま私の中から出て来た子供たちも、この世に出て来ちゃった以上は腹決めて、つべこべいわず生きていけばいんじゃない?」

そう言ってニッコリ微笑んだ結花は、あたしと真木を含めた3人の中で、実は見た目に反してダントツトップの男前だと思う。そして、さらに続く結花の熱い思いに、その確信は一層深まる。

「でもね、流れに身を任せて生きてます、って表現を表立って口にすると、『無気力』とか『怠惰』とか『無責任』と勝手に取り違えた解釈して、君はそれでいいと思ってるのか?!なんて噛みついて来る人が結構いるの。そんな浅はかで間違った解釈されて噛みつかれても、迷惑はなはだしいわ。だって私、流れ着いた先では常に『全力』だもの。その場その場でやるべきことをやって、なんとか結果を出し続けていると、たまたまその姿を見てくれていた人や、そこで出会った誰かが、次の新しい場所につれていってくれたりする。それを“流れに身を任せて生きてます”って表現しているだけで、いつも流れ着いた先では全力で本気出してるから、『無気力』だの『怠惰』だのと混同されて、なまじ意志ありそうな口たたく割には、どこいっても全力出しもしないし、結果も出さない人たちとイッショクタにされて、説教されるいわれはないのよね」

立て板に水のごとく流れる結花の言葉を聞くに、心底そう思ってきたことがよくわかる。

そして、その気持ちもまた、よくわかる。

確かに、「自分の意志で道を切り開け!」とか、「目的意識を明確に持ってこそ人生は成功する!」と主張する人々はたくさんいるし、そんな本もたくさん出ている。きっとそれも間違いじゃないだろう。

だけど、高らかな意思表示や目的宣言はせずとも、“流れ着いた先で本気を出せばいい”と、潔くのびやかに生きるあり方だって、この「やまとなでしこ」を見る限り、決してダメ出しされるものではないと、あたしは思う。

そんな麗しくも男前の母の元に生まれて来たお子たちよ、たしかに君たちは見る目がある。そして生まれた時から、なかなかにツイている。

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