仕事と育児に追われる分「それ以外のこと」を激しく欲することがある【小説・じゃない側の女 番外編~現役をおりない側の女 Vol.1】

2018年11月10日
【連載第1回】好む好まざるにかかわらず「じゃない側」からはそう簡単に抜け出せない。すべてのアラフォー女性に送るWEB連載小説の番外編『現役をおりない側の女(Side結花)』
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完全自由なオフ日は、心底楽しい、心躍る。

毎日子供たちの可愛い寝顔に癒されながらも、ああ、もっと仕事したい、ああ、遊びに行きたい、と、普段仕事と育児に追われる分、「それ以外のこと」を激しく欲してしまうことがある。うわーっと発狂したくなるような衝動に駆られることは、正直これまでも何度となくあった。病気なのかな?と思う程、叫びたくなるくらい思うことが。私だけなのだろうか。

「子供は母親が一番好きなんだから、このくらいの年の頃は、仕事より育児に向き合って欲しい」なんてことは決して言わない我が夫。「僕は僕らしく、結花は結花らしく仕事も子育ても、お互いのスタイルでやっていけばいいんだよ」

結婚してからずっと、彼は一貫してそう言い続けている。そう聞くと、よその奥様からしたら、なんて理解ある素敵な旦那様!に見えるかもしれない。そして実際そうだったかもしれない。子供が出来るまでの数年間、私は存分に仕事して、存分に遊んで、好きなものを買って好きなところに行って会いたい人に会い、食べたいものを食べて飲みたいものを飲む生活をし続けて来た。

私が何をしても、決して責めることのない夫。世の中的には一流といわれる企業に勤める夫と、同じように名の知れた企業で働く自立した妻。それはお互い誇らしかったし、それがお互い心地よかったんだと思う。

なのに……子供が生まれた直後にも、彼がその言葉=「僕は僕らしく、結花は結花らしく」を口にした時、自分でも驚くことにほんの少しだけ涙が出た。出産直後でナーバスになっていたせいかもしれない。

とうの昔に色恋の時間を過ぎた男と女だということはもちろんわかっていたし、男としての彼に恋い焦がれていたわけでは全くない。

でもだからこそ、初めての子供が出来たそのタイミングだけが唯一の機会だとほんの少しだけ、期待していた気がする。

「僕のスタイル、君のスタイルで」ではなく、「僕たちのスタイルでいこう」と、言ってくれることを。これからは二人で新しい「家族」を共に作っていこうと言ってくれることを……どこかでほんのちょっぴり期待していたから出てしまった涙だったような気がする。

彼の会社も私の会社も、男女問わず取ろうと思えば育休は取得できる。でも私はそれを彼に求めたりしなかったし、当然ながら彼もそんなつもりさらさらない。

「お互いに」「それぞれが」いいと思うスタイルで、仕事も子育ても出来ることをする。父という立場、母という立場にあるものとしてすべきことは粛々と、当たり前に協力しあう。それが、私たち夫婦の形なのだと思うと、これ以上ない盤石な夫婦の形にも見えるし、特にツガイでいる意味はない“夫婦ごっこ”のように思えることもあって、たまにちょっと可笑しくなる。

「家族」というものを作り始めてからはまだ数年。まだよくわからないだけなのか、これから私が何をどう感じていくのか、何かが変わるのか、変わらないのか、楽しみ半分、心もとなさ半分……。

「やめなさいよ、今更旦那に妙な期待するのは。いつもカッコいいこと言ってるじゃない、私は夫に一方的な期待なんてしないとかなんとか。その言葉どおり、期待するなら自分にしておきなさい」と、クールな私が、甘ったれた私に言い放つ。

そんな私の横で、まだ「家族」どころか「夫婦」も始めていない理沙と、始めてみた「夫婦」を解散した真木。好む好まざるに関わらず、結果ひとりで立つ彼女達は、いつもとにかく軽やかで楽し気で、いろんな感情が即諦念に変わりつつある私のような「屈折した可愛げのなさ」がない。この二人の真っすぐさに触れるたび、考えても仕方ないことは、笑い飛ばしてみてもいいのかな、という気にさせてくれる。

そしてこの軽妙な女友達二人に挟まれて、グラス片手に延々と他愛ない話を聞いていられるこの時間は、不思議なことに、どんな高価なマッサージやエステ、強力なパワースポットに行くよりも、私に元気をチャージしてくれる。

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